懐かしい地元
「まず、いつが犯行の日がいつなのかだよね、旦那さんから上手く聞き出せないかな」
「それが出来たらこんな苦労してないよ〜あ、でも来月有給取らないといけないって言ってた。結婚式の二次会だって」
「それ、怪しいね。チェックチェック。どんな些細なことでもいいし、何かあったら情報共有していこう」
100均で買った小さいメモ帳を取り出し日付を記入した。
「それで今度、同窓会の二次会として集まれないかな、何か聞き出せるかもしれない」
「めちゃくちゃいい案だね、怪しまれないし、自然に近づける」
「うん、みきちゃんはいつでも大丈夫だよね。シンタロウと幸太郎と知恵に声かけるから、日にちと時間分かったら連絡入れるね」
短期間で何度もかおりと会っていると、何でも言い合える仲になっていた。友達っていいものなのかも。
「でも私の家お金に困ってるわけじゃないのに、何でそんなことするんだろう、もしかしてわたしには言えない借金?」
うなだれるかおりを見て、つくづく独り身で良かったと思った。
「旦那さん、いい人そうだし誘いに断れなかっただけじゃない。まだ実行したわけじゃないから今ならまだ間に合うよ大丈夫」
俯いて涙をポロポロ流すかおりに、置いてあったティッシュを差し出す。
「みきちゃん、優しいのになんで彼氏いないの。わたしが男なら確実に好きになってる」
「わたしには恋愛なんて必要ないんだよ、それよりも今はこの犯行を阻止することだけに生きる」
重い〜と腕を叩かれたけど、本当にそうなんだよとは言えず残っていた麦茶を一気に飲み干し今日は帰ることにした。
「じゃあ、また連絡入れるね、気をつけてね」
玄関には沢山の写真が飾ってあり、どれも幸せそうで少しだけ羨ましくなった。
帰り道、今日は久しぶりに地元をぶらぶらしてみることにした。家に帰りたくなくてよく時間を潰した公園は、マンションになっていた。
ここは幸太郎の実家だ。柴犬のモモちゃんまだいるかな、さすがにいないか。
わたしと幸太郎は幼稚園から高校までずっと同じで、もしかして運命の相手じゃないのとか思っていたけど、高校に入ってすぐ、バレー部の子と付きあったと聞いたときには、少しでも運命の相手だと思ったことを後悔した。卒業してからお互い別々の道に進んで、全く連絡も取らなくなってしまったけど、今は結婚して幸せなら、自分のことのように嬉しい。結婚するときに一言でも連絡入れてくれれば、ご祝儀包んだのに。通り過ぎようとした時、見覚えのある車が停まっていた。
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