侵入

第二ミッション当日、登山スタイルでカモフラージュし、レンタカー屋に車を取りに行ったら確実に不審者扱いされた。まあいい、とりあえずかおりから連絡が入るのを待とう。


「みきちゃん、ごめん、作戦失敗。子供熱出しちゃって、こんな重要な日にホントごめん」


また連絡すると切られ、どうしようと考えたけど、とりあえずあの山小屋が気になるから行ってみることにした。この辺りの山は、登山する人からしたら結構難所みたいで、あまり来ないらしい。遭難して亡くなった人もいるとネット情報であった。ここで死ぬのだけは勘弁だ。誰にも見つからないで後日事件になって発見されるのだけは、なんだか腑に落ちない。

同じ場所に車を停め、今は誰も居なさそうなので、堂々と玄関の方から攻めてみようか。もちろん鍵は閉まっていた。裏口に回ると小さな窓があった。

トイレだろうか。まさか開いてたりしてと思い、窓ガラスに手をやるとまんまと開いた。子供なら入れるだろうが、わたしでもはいれるだろうか。まずリュックを先に中に入れた。辺りを見回しジャンプして飛び乗り無理やり身体を押し入れ中に入った。軽く手を擦りむいてしまったが今回は準備万全、絆創膏を持ってきている。外観からして考えられないくらい綺麗に掃除されたトイレだった。


一階は、リビングがあってテレビと3人がけくらいのソファー、キッチン、トイレの横には小さいお風呂、あと暖炉。中を覗くと煤だらけで、よくもまあここから侵入しようと考えたもんだ。降りてきたら熊と間違われるかもしれない。今のところ何も不審に思うものはない。次は二階か、と階段を上がろうとしたら車の扉が閉まる音がしたので、やばいと思い急いで二階の部屋の一室に身を潜めた。


誰かと電話をしている様子だ。時間は13時。内容は分からなかった。少し静かになったので、少しだけドアを開けて覗くと、ソファーに座っている男の後ろ姿が見えた。煙が見えたので、タバコでも吸っているのだろうか。また、男が電話をし始めた。急に怖くなってきた。今すぐここから立ち去りたい。とりあえず、出口を探そうと辺りを見回したら、屋根裏発見。音を立てずゆっくりその階段を出して上へと上がった。ところどころ隙間から外の光が漏れているけれど、真っ暗だ。とにかくここで、奴が立ち去るのを待とう。子宮あたりがソワソワしてる、大丈夫。


この屋根裏は掃除されていないから、使われていないと予想、とりあえず横にでもなるか。そういえば、グミをリュックに入れていたんだった。ラッキー。


気づいたら寝てしまっていて、時計を見ると16時だった。下の様子を確認しに行くと物音はしなくなっていたので、男は出ていったみたいだ。任務を果たすべく各部屋の写真を撮って、持ってきたリュックの中身は屋根裏に置いていくことにした。


早速今日の収穫を報告するべく、かおりに電話をした。


「一人で行くなんて危険すぎるよ!でも何事もなくて良かった。何か怪しいと思うようなことあった?」


一つ言うならばこんな山奥に男女が集まることですね、なんて言えなかったけど、今のところ何もないと伝えた。ちなみにわたしは警察番組が大好きだった。毎回欠かさず見ていたし、特に薬物系の回だと瞬きを忘れるくらい、興奮したもんだ。


「もしかしたら、薬物?」


かおりは、まさか〜うちの旦那に限ってそれはないと思うって言ったけど、そうゆう人が毎回警察に捕まっているとわたしは知っている。


「あ、旦那のスーツとか調べたりしたんだけど、なーんにも出てこないの。ホントなにやってるんだろうね」


次は土曜日、前日から身を潜める作戦で行く事にした。さすがに見えない場所でも、車を止めておいたら怪しまれる可能性があるので、今回はかおりの車で迎えに来てもらって行くことにした。

その日、わたしを捨てた両親の夢を見た。山小屋の中に2人がいて、こちらを見て笑っていた。そっちに行こうと思ったけど、体が前に進まなくて起きた時には、泣いていた。最近ほんとに涙脆くなったなと笑ってしまった。














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