ミッション
わたしには両親がいない。というかいるんだけど、話すと長くなっちゃうから簡単に言うと引き取られた感じ。運良く立派な家庭の親に育てられて幼少期は悪い記憶はない。まあ、このお陰で20歳くらいまでは、人生何の苦労もなく生きてきた。本当に感謝してる。わたしを引き取ってくれた時、父母はもう結構歳をとっていたけど、それでもこの2人の子供になりたいと小さいながらに思っていた記憶がある。
本当の親は、今どこにいるか生きているかさえも分からない。どうでもいい。どうでもいいというよりか、興味がない。そう思うようになってしまったのは、それでもわたしを迎えにきてくれるのではないかと心の何処かで思ってしまっていて、でも結局そんなことはなくて、人間所詮そうゆうものなんだと分かってしまったからだ。
「第二ミッションは私も行くから」
再び喫茶店で旦那の調査会議を開いていた。
「大丈夫、大丈夫」
わたしはオムライスを一口食べ、来ないでという意味で言ったつもりだったんだけど、なんだか逆に張り切ってしまって、そんなに元気なら1人で行けよ、と思ったけどとりあえずかおりが立てる計画に耳を傾けていた。
「それでね、そこ二階建てなんでしょ、この写真で見ると、ここにベランダがあるの」
わたしがボロボロになりながら撮った山小屋の写真、役に立ってるじゃないか。
「このベランダから中に入って証拠を探る、中に入ってもらうのはみきちゃんなんだけどいいかな?」
嫌だと言っていいものだろうかと思ったけど、かおりは至って真剣だった。
確かに、あの梯子で登って屋根からこのベランダに降りれば中に入れるかもしれない。でも、中に誰かいたら鉢合わせる可能性があってかなりリスキーだ。
「わたしは、今回は見張り役をするから。みきちゃんには小屋の様子を写真でとってきてほしい」
「誰かと鉢合わせたどうする?オバケのフリでもしようか」
ちょっとした笑いでも入れないと、わたし達が座っている席だけお葬式状態だ。
「もし誰かと鉢合わせたらキャンプをしようと思って山まで来たけど、足を挫いてしまって丁度小屋があったから休ましてもらったということにしよう」
なんとも安易な考えだ。窓から入った説明はどうするのと言ったけど、それはその時のこと。この計画を本当に実行するつもりの顔をしている。
「鍵が掛かってたら窓を割らないといけないね、どうしたもんか」
隣で食べていたチョコレートパフェがどうしても食べたくなり、頼んでいいか聞いたらもう何でもお好きにどうぞ!と言われたので、特大のチョコレートパフェを頼んでやった。
「だったら煙突があったんだけど、二人ならここから入れるかもしれないよ、かおり体力ある?」
「体力には自信がないけど、そっちのほうがリスクは低い。みきちゃんさすがだね、今から筋トレしたら間に合うかな?」
「絶対間に合わないでしょ(笑)でもやらないよりまし?じゃあ、かおりはその日はロープ係と見張り宜しく」
「了解〜ますます本格的になってきたね。筋肉痛だけにはならないように当日まで気合いれとくわ。まーさかこんなことしてるなんて、学生時代のわたし達に教えてあげたいよね」
頼んだチョコレートパフェがあまりにも大きすぎて二人して笑ってしまった。じゃあまた後日と別れ、帰り道あの古本屋に寄ってみたけど定休日で、結局あの本の題名はいまだに思い出せなくて、茜色した空がなんとも幻想的で、涙が出そうになった。
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