かおり
今時の人はLINEじゃなくてDMでやり取りするんだろうか。ここ最近まで死んでいたわたしのfacebookが元気になっているようにも見える。お前も頑張れよと言われているような気がしてしんどい。今日も効くのか分からない薬を飲んで、横になる、いつもの日常。死にたいのになんで薬を飲むのかと聞かれたらおしまいだけど。
そういえば、かおりからDMが届いていたんだっけ。
DM;こないだはどうもありがとう!みきちゃんとどうしてももう一度話がしたくて、来週の水曜日会えないかなと思って。子供は幼稚園だから、2人っきりでどう?
正直めんどくさいが、そういえば2人でよく放課後に遊んでいたっけ。今でも覚えているのは、毎回何故か人気者になる教育実習生に一目惚れしたわたしを、かおりが協力してくれていたこと。
こっそり先生のアイスクリーム屋のバイト先まで見に行ったらめちゃくちゃ綺麗な女性がいて、それが彼女だと知った時は、3日間涙を流したもんだ。なんでもないことが楽しかった。そんな青春わたしにもあったなと懐かしんでいると断るのが申し訳なくなったので、大丈夫とだけ返事をしておいた。色々考えたらお腹が痛くなってきて、一日中トイレとベットの往復。
「ごめんね、急に連絡とっちゃって。同窓会の時ゆっくり話せなかったから」
「そうだね、、こ、こどもいるんだね。びっくりした、、しかも2人すごい、、羨ましい」
昼過ぎ駅前の喫茶店。営業終わりだろうかサラリーマンがオムライスを食べている。
興味はないけど、とりあえず触りはこんな感じか。思った以上に緊張していて吃ってしまった、恥ずかしい。頼んだオレンジジュースで喉を潤す。
何か言いたそうにしているけど、こちらからどう話をふればいいのか分からない。
「実は旦那の話で相談したい事があって」
多分わたしには相談しない方がいいと心の底から思ったけど、よっぽど誰にも話せなかったのか、話し出したら止まらなくて、最近旦那が帰ってくるのが遅いだの、休みも休日出勤とかでいないだの、というただの愚痴だった。
「あぁ、そうなんだ。それは、大変だね」
後ろにいたカップルが手を繋いでイチャイチャし始めたからそっちが気になって適当に返事をしていたら、はしゃいでいるかおりがいた。時すでに遅し。
わたしは旦那を一日尾行するという話になってしまっていた。
「じゃあこの日旦那休みなんだけど、休日出勤で出かけるから宜しくお願いします」
報酬は一万円。まあこれは当然だけど、喫茶店代も出してくれた。オムライスも頼めば良かった。車はレンタカーを借りるということで、その日は別れた。
こうゆう話を聞くと、結婚なんてするもんじゃないって思う。別に、報酬なんていらないと言おうと思ったけど払った方が心置きなく使えるかなと思って敢えて言わなかった。
そんなことより、ミッションができてしまった。つい最近まで何の気力もなかったのに。
まあいい、やるからには本気を出そうじゃないか、西川探偵事務所。あの世へ行った時の土産話になるねなんて考えながら、当然その日のミッションまで全然眠れず、最悪のコンディションで言われたレンタカーまで車を取りに行った。
久しぶりに運転をする。昔仕事していた頃は、バリバリの営業マンだったから都内でも平気で乗りこなせてたけど、かれこれ6年は運転をしていないから、大丈夫だろうか。
顔、車種、会社、全て勉強済み。かおりの家の前で待機していると、スーツ姿で出てくる男性が出てきた。子供達が、バイバーイと手を振ってお見送りをしている。
さて、出動。チラッと横をみるとかおりがこちらを見ていた。頑張ってくれよと言わんばかりの顔でプレッシャーを感じた。ハンドルを握る手が汗ばんでくる。車は会社の方向に向かっていた。なんだ、本当に仕事じゃないか。
とりあえずかおりに連絡。旦那は無事会社に到着っと。
わたしは会社が見える近くのスーパーの駐車場で待機していた。悪いから、カレーパンと牛乳を買った。
1時間も経たないうちに、旦那が会社から出てきたので、慌てて後を追った。
だけど、家とは違う道を走っていることに気づいた。頼むからまっすぐ家に帰れよと叫びたくなるのを我慢しながら、ついた先は綺麗なマンションから少し離れた路肩に停まった。10時45分。バレないように、離れたところでハザードたいて停車。そしてカレーパンを食べる。
このマンションの近くに今車停めてる、誰か待ってる感じ。かおりに写真付きで連絡。苦しくなってきた。早く終わらせて帰りたい。何してるんだろうと考えてるのも束の間、かおりの旦那の黒いファミリーカーに乗り込んだのは、知恵だった。SNSオバケ。なんで?と思って車が走り出したからわたしも後を追った。
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