第10話 彼女が初めて見せた弱さ

「歩けるか?」

「多分」


ゆっくり立ち上がる。

痛みはあるが我慢できないほどではない。


「さっきは悪かった」


サラさんは頭を下げた。


「え? どうして?」

「怖がらせただろう?」

「そ、それは……その……まあ、はい」


本当は嬉しかったけど恥ずかしくて言えなかった。


「私は逃げるべきじゃなかったんだ」

「いえ、仕方ないですよ。だって、あんなに大きいんですもん」

「……」

「え?」

「私はまだまだ未熟だ」

「そんなことないですよ」

「いや、もっと強くならないとな」


伏し目がちに自分のことを責めるサラさん。

その様子が何だかかわいい。


「サラさん、ドラゴンの方がさっきのジャイアントワームより絶対強いですよね……」

「うう……」

「もしかして、虫が苦手……?」


黙り込むサラさん。

図星みたいだ。


「可愛い」


つい言葉に出てしまった。

それを聞いたサラさんは顔を赤くした。


「ば、馬鹿を言うな! 可愛くなんてあるわけないだろう?」

「そんなことない! サラさんが初めて見せてくれた弱さ……かわいい!」

「う、うるさい!」


照れるサラさんを見てるとますます愛おしくなる。

それからしばらくの間、2人で笑い合っていた。

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