第5話 接触

「それで二人はいつから仲が良いんだい?」


なぜここにいるのかと尋ねられ、流石に魔王様を襲ったのが四天王かもしれないから調べているとは言えず、ライアが俺の部屋に遊びに来るということにして、その場を去ろうとしたところで、レイは途中まで一緒に行くといってついてきた。

レイは食堂に行く予定だったらしい。


「うーん、俺たちが学校に入ってすぐだったんで、もう5年くらい前になりますね。」


ライアが答える。

学校に入る年齢は特に決まっておらず、同級生が同い年になることは珍しい。しかし俺とライアは同じ年に入学したために同い年の同級生になった。


「そうか。5年も付き合いがあってそこまで仲が良いのはうらやましいな。お互いに友人は大切にするんだよ。私の友人たちは・・・いや何でもないよ」


もういないのだろうな。貴族生まれで学校を卒業した者は、たいてい魔王軍に入る。戦場に身を置くのだ、いつ何があってもおかしくない。


「それじゃあ私はここで。」


食堂に着いたのでレイと別れる。

嘘をついたことがばれると、ややこしくなるのでとりあえず俺の部屋に二人とも入ることにする。


「で、ライアはどう思った?」


「ん?何のこと?」


おいおい、こいつ目的を忘れてないだろうな。さっきは察しが良かったから忘れてたが、こいつはこういうやつだったな。


「レイのことだよ、魔王様を襲ったのがレイかどうかってことだ。」


「うーん、俺はそうは思わなかったけどな。いつもと同じのレイさんだったし。」


「そうか、俺も会話の中からは違和感は感じなかったんだよな、でも気配を消していたのは気になる。誰かを襲おうとしていたのかも」


「そういえば確かに気配を消していたな。でもそうとは限らないんじゃないか?」


「どういう意味だ?」


「例えば誰かから身を守るために隠れていたとか」


「なるほど」


確かにライアの言うとおりだ。その可能性もある。だが誰から身を守ろうとしていたのか。魔王様が襲われたことは、レイは知らないはずだが。


わからないことだらけだ。


とりあえずその日は、解散となった。


ライアは学校の寮に、僕は魔王城の自分の部屋に帰った。

その夜、現状を整理するために一人で考えてみた。

犯人は魔王様に気づかれることなく近づき、魔王を襲った。その際鋭利なもので切り付けたため、武器の特定は不可能。

魔王自身も犯人をはっきりとは見ていないため、犯人の特徴も不明。

そもそも犯人は一人なのか、それとも複数なのかすらも不明。

犯人の目的も不明。


だめだ、まったくといっていいほど手がかりがない。

もし見つかれば、俺の目的に利用できるかもしれないのに。

あきらめて俺はベットに入った。明日のことは明日の俺に任せよう。


その夜眠っていると、気配を感じた。それも窓の外に。

俺は体は動かさずベットに入ったままで警戒し、窓の外にある気配に意識を向けた。気配は一つ、それもかなりの手練れだ。布団の中で寝返りを打つふりをしながら俺は体制を整え、臨戦態勢をとった。


来る。


窓が割れる音がしたと同時に一気に気配の主が入ってきた。

そしてベットで寝ていると思っている俺に剣を突き立てようとしてきたので、間一髪のところでそれを交わし、そいつに蹴りを食らわせながら後ろにとんで距離をとった。

全身を黒いローブで隠しており、顔もフードを深くかぶっていてよく確認できない。


「寝込みを襲うとはずいぶんなことをやってくれたな、正面からじゃ俺が怖いのか?」


挑発してみたが反応はない。

声でも聴ければやつを特定できなくても性別くらいは絞れると思ったんだけどな。


「魔王様を襲ったのもお前か?」


無言でうなずく。


「嘘だな、俺程度に気配を悟られる奴が魔王様に気づかれず攻撃を当てられるわけがねえだろ。」


なにも反応がない。

正面からでは分が悪いと思ったのか、時間がかかったからなのかわからないが、相手が窓から逃げていった。


「逃がすかよ!」


そういって窓に手をかけ追おうとしたが、すでに奴の姿はなかった。

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