第4話 俺以外にいる
「・・魔王様が襲われた?」
誰に?なぜ?
「魔王様は無事なのか?」
俺が思考を巡らせている間に、ライアが尋ねる。
「幸い不意を突かれただけですので、重傷には至っておらず、現在は自室でお休みになっております。」
「そうか。とにかく魔王様のところに行くぞククル。」
「ああ、」
「魔王様、ご無事ですか!?」
部屋に入ると同時にライアが叫ぶかのように、声をかけた。
「おお、ライアか余は大丈夫じゃ、それよりもこれから着替えるから席を外してくれんかの」
「し、失礼しました。」
俺とライアは部屋の外に出る。
「お前、魔王様と結構親しいんだな。」
「そうか?まあ俺の親魔王様の執事やってるし、昔からよくしてもらってたしな。母親代わりみたいなもんだよ」
「・・はぁ!?お前の親あの執事の人なの!?」
「そうだよ、言ってなかったっけ?」
まじかよ。
初対面の時に妙になれなれしいと思ったけど、執事から俺のことを聞いていたからだったのか。
それにこいつの頑丈さも親譲りということなら納得できる。賢さは譲り受けなかったみたいだが。
「お前なぁ、そういうことは早く言・・」
「もう入ってよいぞ」
扉の向こうから魔王様の声が聞こえたので、話もそこそこに部屋に入る。
「それで魔王様、お怪我の方は、」
「大丈夫じゃ、それよりも問題は襲った相手じゃ」
「確かに」
「どういうことだククル?」
「いいか、今回の事件で問題なのは二つある。一つは、襲ったやつは魔王様に気づかれず不意打ちを与えることが出来る手練れであること。もう一つは魔王様がこの城内で襲われたということだ。」
「つまり犯人は内部の魔族、それもかなり強い魔族ということか」
ライアのくせに勘がいいな。こういう察しの良さは遺伝しているかもな。
「魔王様に傷をつけることが出来るやつだ。最低でも四天王クラスだと思う。」
「やはりククルもそう思うか。身内は疑いたくはないがの・・」
「こればかりは後回しにできません。早急に対処しましょう。」
そう言いつつ俺は驚いていた。
まさか魔王軍をどうにかしようとしているのが俺以外にいるということに。そいつの目的が魔王軍の崩壊なのか、魔王の殺害なのか、それ以外なに目的があるのかわからないが、これは俺にとってチャンスかもしれない・・・。
「ククルよこの件、お前に頼みたいのだがよいか?」
「俺ですか?ですが四天王よりも弱い俺では、返り討ちでは?」
「あくまで探ってほしいだけじゃ、特定さえしてくれればあとは余がそやつと話をつける。それにおぬしなら・・いや、とにかく頼む」
「承知いたしました。」
「もしよければ、ライアもククルを手伝ってやってくれ。」
「もちろんです。」
そうして俺たちは、魔王様を襲った犯人を捜すことになった。
が、手がかりが全く見つからない。
いくら位の高い生まれであっても、ガキ二人ではなかなか情報は集まらなかった。
魔王様も襲われて以来、警戒を強めているようで、犯人による再犯はない。
途方に暮れながら魔王城の廊下をライアと歩いていた。
「おや、ライア君とククル君ではありませんか。」
後ろから声をかけられ振り返ると、そこにいたのは四天王の一人、レイだった。
「レイさん!お久しぶりです。」
ライアがレイに駆け寄っていく。レイは昔から俺もよくしてもらっていた。年の離れたお兄さんといった感じの人で、誰にでも優しく落ち着いている。
昔から困ったときは、よく相談に乗ってもらっていた。
が、今回は違う。
レイは気配を完全に消していた。なぜなのかは知らないが、もし声をかけられなければ俺たちは例に気づかなかった。その気があれば俺たちを殺せたということだ。
なんにせよレイの思惑を探る必要がある。
俺は最大限の警戒を悟られないよう、レイに近づいた。
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