第9話 地図にない島
『チカガイ居住区_家』
後日…気球の改造が済んだ女海賊と剣士はチカガイ居住区の家を2人で訪ねて来た
シェルタ砦に戻っても魔女達は不在だったからだ
「有った有ったここだ!!おーい商人!!」
商人は家の前で露店を開き物売りをしていた
「お!?いらっしゃい!!何か買って行く?」
「何言ってんのさ!!そんなガラクタ要らないよ…気球の改造終わったんだけどどうする?」
「あぁ…盗賊とローグは出かけててさ」
「ほんじゃ戻ったら気球まで来てって言っといて」
「うん…ええと…皆行くの?」
「魔女達はどっか行って居ないからさ…とりあえず私と剣士しか動けないさ」
「そうか…どうしようかな…子供達の配給を貰いに行く人は一人残らなきゃいけない」
「人選はそっちに任せるよ…てか鍵開けが必要になりそうだから盗賊は来て貰わないと困る」
「だろうね?盗賊が戻ったらちょっと相談してみるよ」
「おけおけ…じゃ剣士!?私達気球にもどってチョイ寝よっか?」
「君はお腹空いてないの?ずっと食べて居無いよね?」
「芋しか無いじゃん!そんなん食べたくない…さっさと戻ってヤッて寝るよ」
「君が良いって言うなら良いけどさ…」
「んん?ヤル?」
「あぁ何でもない!こっちの話」
「君達2人はもしかして…」
「勘繰らないで貰って良い?」
「ハハそうか…仲が良いのは良い事だ」
「ほら剣士行くよ!!」グイ
剣士は完全に女海賊の尻に敷かれて居たが
世話しない女海賊と落ち着きのある剣士はなかなかお似合いのカップルだった
『気球』
シン・リーンの軍船に乗せてある気球は狭間の中だった事も有り
その中で休憩していた女海賊と剣士の2人は十分寝る事が出来た
「遅っそいなぁ!!盗賊達何やってんだよ!!」
「もう直ぐ来るよ?球皮を温めておいた方が良い」
「マジ?おっし!!魔導炉動かすわ」
新しく設置した魔導炉はウラン結晶から魔石にエネルギーを補給する
火の魔石と風の魔石で温められた空気が球皮に入る仕組みだ
これで木材を気球に乗せる必要がなくなり長時間の飛行が可能になった
シュゴーーーーー
「よう!!遅くなったな?」
気球に来たのは盗賊と情報屋の2人だけだった
「あれ?2人だけ?」
「そうだ…商人とローグには残って貰う事にした…ちっと金稼がんと家を追い出されちまうのよ」
「んん?商人が物売りして稼いでんの?」
「うむ…ローグが物資調達して商人が売ってんのよ…食料買うのに結構金が掛かってな」
「配給だけじゃ足りない感じ?」
「チカガイ居住区に住んで居て避難民扱いでは無くなったから配給が貰えなくなったのよ」
「あらら…ほんじゃ厳しいね」
「まぁチカガイ居住区なら金さえあれば何とか買えるんだ…クソ高いけどな?」
「この気球も殆ど食料乗って無いけど良い?」
「ちっとくらいは持参してる…俺らの食い物は気にすんな」
「じゃぁ4人か…随分軽くなったけどまぁ良っか…飛ばすから乗って!」
「おう!!」
女海賊は2人が気球に乗り込んだら固定していたロープを外した
フワフワ…
「ほーーーこれが魔導炉って奴か…」ジロジロ
「これで燃料切れの心配無いさ」
「いくらで買い取ったの?」
「アハ…拾った!」
「ぐはぁ!!そら盗んだって言うんだろが!!」
「あなた達は本当に…」情報屋は呆れ顔だ…
「まぁ良いじゃん?どうせ使って無かったんだし」
「盗んだと言えば…このクロスボウを見て見ろ」ガチャ
「おぉ!!メッチャ良いじゃん!!」
「鉄器兵の重クロスボウだ…2連装式で相当良いもんだぞ?」
「ヤバ…私も欲しくなって来た」
「今度商人に相談してみろ…ジャンク屋に色々売ってるらしい」
「私ももう金無いんだよなぁ…」
「今から行く所にお宝でも有れば良いんだがな?」
「そだね…おっし!!ちっと本気出すかぁ」
『上空』
気球は燃料の心配が要らなくなってかなり高高度を飛ぶ
もう地上は見えないから何も目標物が無い
「こらアサシンの気球とは全然違う高さ飛んでんな…そら早えぇわ」
「見直した?惚れる?もっと言って」
「こんな高高度でなんで方向見失わないのよ?」
「私の奴隷2号の妖精が方向指示してるから」
「俺ぁ妖精が見えねぇんだ…どこに居るんだ?」
「わたしのおっぱいに挟まってる」
「お前なんか色々反則だな」
「奴隷3号!!風魔法!!」
「…風魔法!!」ピュゥゥ
「ぶっ…剣士…お前女海賊の奴隷になったんか?」
「なんか夢の中で奴隷契約してしまっていたらしい…いろいろ約束されてた」
「何か文句あんの?あんたさぁ!!浮気しておいてまだ言い訳すんの?」
「浮気?話が読めねぇんだが…お前ら出来ちまってんのか?」
「ハハ…まぁ…こんな感じだよ」
「出来ちまった物はしょーがねーが…まぁアレだ仲良くやれや」
「ウフフなんかお似合いね」
「ほらほらぁ…剣士聞いた!?」
「ハハ…ハ…はぁ~ぁ…」
「ところでお前等目的地に夢で行った事あんだよな?やっぱ夢幻はみんな同じ夢見てんのか?」
「それ私も気になるなぁ…不思議なお話」
「夢の中で一緒にそこ行ったのは剣士覚えて無いのさ…でも私が渡した短刀の事は覚えてたみたい」
「この短刀だけは最後まで持ってたんだ」スチャ
「それが証拠だって…それ一本で2人生き抜いてあんたにあげたのさ」
「う~ん…思い出せないなぁ…」
「俺ぁ夢を全然思い出せないんだけどよ…なんでだ?」
「何かのきっかけかな?縁のある人との出会いとか…」
「それだよソレソレ!!分かってんじゃん剣士!!」
「お前等は縁あったんか?」
「あったも何も私は剣士の赤ちゃん生んだんだよ!!剣士は浮気して居なくなったけど」
「マジか…でも夢なんだろ?」
「こんな感じで脅されて女海賊の言いなりになってる…」
「脅されてるって何さ!!勝手に忘れたのアンタなんだって!!」
「まぁまぁ落ち着け…悪い事は言わん…言いなりになっときゃお前は玉の輿に乗れる」
「玉の輿?」
「一応ドワーフの国の姫な訳ヨ…一生こんな出会いは無いぞ?」
「ムフ…ムフフフフ…」
お似合いと言われて女海賊は終始上機嫌だった
隠し持っていたハチミツと果物を3人に振る舞い
自分は何も食べなくても文句の一つも出ない
逆に何も口にしない女海賊の事を剣士が心配する…いつの間に相思相愛になっていた
『地図に無い島』
狭間の中を飛び2日程経ったところで目的地周辺に辿り着いた
女海賊が言うには周辺に時空の歪みが有り風の流れが均一では無いらしい
「やっぱり他にでかい島は見当たらねぇ…アレだな…もう少し近づけるか?」
「…やってるんだけどさぁ…風が巻いてて上手く近づけないのさ…んむむむ」ドタドタ
風向きが安定しない為操舵に忙しい
「高度下げて海スレスレで寄ってけ…船と同じ要領だ」
「おっけ!やってみる」
気球は風の影響を避ける為高度を下げる
「海の中…岩礁かと思ったら沈没船っだたのね」
「こりゃ船で来なくて正解だ…沈没してエライ事になってたわ」
「このまま突っ込んで海岸に降ろすよ?」
海面スレスレを飛びその島の砂浜に着地した
フワフワ ザザザザ…
「おっし!到着!!」
「よし…ちっと探索するか!!俺が先頭行く…剣士は最後に付いて来い」
「分かった」
「ちょ!!気球どっか行かない様にロープ張るから手伝えよ!!」ゴソゴソ
「あ…ゴメン」
「ったく直ぐ私を置いてこうとすんだから…」
「ほんでよぅ…どの辺に行けば良いとか覚えて無ぇのか?」
「細かい事は覚えてないよ…どうだったっけなぁ…なんか真ん中に建物あった気がするなぁ」
「まぁしゃぁねぇ…向こうの森行ってみっか」
「ねぇあそこの砂浜に小さな船があるわ?」
「めっちゃ古いね…沈んだ沈没船のやつかな?」
「てこたぁ誰かいる可能性もあるな」
「いやいや古すぎだってアレは…一応見ていく?」
「そうだな…行くぞ!」
『小さい小舟』
その船は陸に上げられて何年もたって居たせいか木材が縮み隙間だらけになっていた
「こりゃ放置されて10年近く経ってんな…もう船には使えん」
「10年だったらまだ誰か生きているかもね?」
「誰か生きてりゃ船をこんな状態で放置せんぞ?」
「あぁそっか…あ!!発見!!ここ貝塚になってる」
「やっぱり誰か住んでいた様ね」
「こういう無人島じゃ水無しだと生きて行けん…どっかに水源が有る筈だ」
「やっぱ森の方かな?」
「剣士!何か匂わんか?」
「んん?果物の匂いはするね…」クンクン
「お?」
「女海賊に何か食べさせないといけない…ずっと何も食べて居ないんだ」
「アンタ私の事が心配なの?」
「君が倒れたら僕も困るんだよ」
「あぁヤバイ…今のでお腹いっぱいになった」
「アホか!!食い物有るんなら獲って行くぞ…剣士案内しろ!」
「うん…」
女海賊は女エルフにスタイルで負けない様に食事を自分で制限していた
その甲斐有ってか今では見劣りしないまで良くなって来て居るが
剣士にはそれが心配だったのだ
『森の中の小屋』
少し森に入った所で誰かが使っていたであろう小屋を発見する
その小屋も使われなくなって何年も経って居た様だ
「もうボロボロだね…何かある?」
「ダメだぁ日記らしい物があるんだがもう読めねぇ」
「…この絵はこの島の地図じゃないの?」
「その様だが何か分かるか?」
「んんー狩場書いてるくらいかぁ…なんも無いねこの島」
「こんな所で無人島生活はさぞ大変だったろうな」
「この感じは一人だね…」
「水をどう調達したのか謎だな…こんだけ生きてたって事はどっかに水がある」
「ちっとここ拠点にしてもうちょい探索しよっか」
「だな?剣士!!一人で果物獲りに行けるか?」
「うん!!近いから採って来るよ」シュタタ
「頼む!」
「ねぇ?レイスが現れないのはどうして?今まで一回も見て居無いわ?」
「あーーソレね…私と剣士が持ってる退魔のペンダントのお陰だよ」
「え?どういう事?」
「あんた達魔方陣使ってたみたいだけどさ…私等魔女の婆ちゃんに作って貰ったペンダント使ってんだよ」
「同じ効果が有ると言う事なのね?」
「良く分かんないけどレイスはこのペンダントには近付かないのさ」
「納得したわ…あなたと剣士から離れなければレイスには襲われない」
「そうそう…てかレイス以外はあんま効果無いから一応気を付けといてね」
数分して剣士は果物を沢山抱えて戻って来た
「女海賊!!チェリーを見つけたよ…食べて?」ドサ
「おぉぉぉ!!なんか珍しい物見つけて来たじゃん!!」
「沢山有るから一杯食べて良いよ」
「うんま!!」モグモグ
「俺も貰うな?」パク モグ
「もう一回採って来るから全部食べちゃって良いよ」
3人は剣士が採って来るチェリーでお腹を膨らまし少し休憩した
「この小屋を使って居た人は私と同じ考古学者だったようね…」
「んん?何で分かるんだ?」
「残って居る道具よ…測量器具とか遺跡を傷付けないで調べる道具とか…」
「あ!!森の中に変な形の石があったな」
「休憩が済んだら案内してもらえる?」
「直ぐそこだよ」
「日記がもう読めないのが残念ね」
「書物は直ぐにダメになるんだな?」
「保存の仕方ね…風雨に晒されてしまってはいけないのよ」
「おっし!!お腹いっぱいになったぞ!!行こっか!!」
『遺跡』
小屋から100メートルも離れて居ない森の中に倒壊した石の建造物が有った
植物に浸食されて原型は分からない
「…この変わった形をした石は間違い無く遺跡ね…何か埋まって居る可能性がありそう」
「可能性ってどういう事?…そのまんま遺跡じゃ無いの?」
「古代遺跡の上に新たに何か建てる事は良くあるのよ…ここで倒れてる石の建造物はそういう類の物」
「埋まってるって?」
「こういう大きな石は後から積み上げた比較的新しい遺跡…調査すると地下が発掘されたりするの」
「なにか分かるか?」
「恐らく2000年くらい前の神殿か何かだと思うわ…何処かに地下へ降りる入り口が有るかもしれない」
「こりゃ探索が大変そうだな…」
「なんか水が溜まってる池みたいな奴があんだけど」
「ほう…水はここで汲んでた訳か…」
「これ雨水だよね?」
「だな?」
「他に地下へ降りる階段とか無いかしら?」
「見当たんねぇな…こりゃ探すとなると相当時間掛かるぞ?」
「あ!!骨見っけ!!」
「んん?白骨か…どうやら住んでた奴はここでくたばったらしい」
「何か持ってない?」
「鞄に色々入ってんな…なんだこりゃ?」
「測量の道具ね…やっぱりここで遺跡の調査と測量をしていたんだわ」
「ちっと2手に分かれて探索すっか…俺と女海賊…ほんで剣士と情報屋に分かれよう」
「おっけ!!」
「そこの水場に集合で良いな?1時間後が目安だ」
「分かったわ…」
「じゃ女海賊!俺らは向こう行くぞ!!」
女海賊は直ぐに探索に飽きたのか水場に戻って水浴びを始めた
ジャブジャブ
「うっわ…くっそ冷てえ」ゴシゴシ
「お前何やってんのよ…お前がそこで水浴びしたら飲めんくなるだろうが」
「何見てんのさアッチ行け!!てか焚火起こしといて」
「まさかお前裸になってそん中入るつもりじゃ無いだろうな?」
「だったら何?しばらく水浴びして無かったから丁度良いじゃん」
「マジかよ…」
「直ぐ済むから焚火起こしてその辺調べといて!」
「ケッ!!まぁ良いや…お前どんだけ汚れてたのよ…髪の毛の色変わってんじゃ無えか」
「うっせぇなコッチ見んなって!!」ジャブジャブ
数分後…女海賊は震えながら裸のまま水場から出て来て焚火に暖まり始めた
ガチガチ ブルブル
「ぅぅぅぅぅさぶ…」
「お前なぁ…服ぐらい着てからうろつけや」
「いちいちうっさいんだって…見なきゃ良いじゃん…こんなんなるから水浴び嫌いなのさ…」ガチガチ
「俺はアッチの方調べてくっからサッサと服着とけ」
「言われなくても分かってんよ!」ゴソゴソ
1時間後…
周辺の探索を終えて剣士と情報屋が水場に戻って来た
女海賊は水浴びをして焚火で温まっただけで大した発見はしていない
「あら?水浴びをしたのね?随分綺麗になったわね?フフ」
「よう!どうだ?何か見つけたか?」
「いいえ…この水場の辺りが遺跡の中心だったと思われるくらいね」
「そうか…俺はこの辺り見回ったが何も怪しい物無いな」
「どうしてあそこだけ水が溜まって居るのでしょうね?」
「確かに…なんであそこにだけ水が溜まるんだ?他にも溜まりそうな場所はあるじゃねぇか」
「ん?なんかメチャ深いよ?足付かないから」
「水が湧くにしちゃ何かおかしい…大した山が有る訳でも無え」
「水の底の方がさ…なんか鉄板みたいなのが敷いてあんのさ…水が流れて行かない位気密性の良い扉になってない?」
「なぬ!?水中に扉が有るってか?」
「水を抜けば良さそうだけどね…てかあの量を全部抜くの厳しくね?」
「ちと潜ってみるか…お前水の中でションベンしたりして無いだろうな?」
「ちょびっと漏れたカモ…ナハハがんばって!!」
『水溜まり』
その場所は確かに地下へ降りて行く通路に水が溜まって居る様にも見える
足元は階段状になっていてその先まで水が溜まって居るのだ
「…ぶはぁ!!」ハァハァ
「どう?」
「3メートルぐらい下でやっぱ扉になってる…何かひっかける物とロープが欲しいな」
「ロープは気球に戻ったら有るけどさ…引っかける物って何が欲しいのさ」
「その扉にゃ取っ手も何も無い訳だ…掴まえられんのよ」
「ほんなんロープだけ有っても意味無いな…隙間に何か入れてこじ開けるとか出来ない?」
「そもそも何か入る様な隙間も見当たらん」
「地道に汲み出すしか無いか…」
「剣士!魔法か何か無いのか?」
「え…水抜く魔法なんか…氷結魔法?」
「それじゃ意味無ぇな」
「ピーンと来たぞ!!剣士!!あんた成長魔法使えるよね?女エルフが使ってたんだけど」
「成長魔法?…あぁそれは回復魔法と同じだよ」
「私さっき食ったチェリーの種持ってるんだ…これをさぁ扉の隙間に突っ込んで成長魔法出来ない?」
「なんでそんなもん持ち歩いてんのよ…」
「こういうのを剣士が食うんだって」
「まぁ良い…ちっと試してみるか…種よこせ」
「ほい…」ポイ パス
「隙間に突っ込んでくるわ」ザブン!!
「君…僕の為に種を残しておいてくれたの?」
「そだよ?アンタ好きでしょ?」
「やっぱり君は一番僕の事を分かってくれてるね」
「何言ってんのさ!!」バチコーーーン!!
「うわぁ!!」
ボチャーーン!!
「あ…ごめ」
「…ぶはぁ!!剣士…お前も来たか!!魔法頼む」
「来たと言うか…落とされたんだけど…」
「3メートル潜った先だ…行けるか?」
「行ってみる…」ザブン!!
剣士が水中に消えて少ししてから水溜まりの水位が一気に引いた
チェリーの種が成長して閉じてあった扉が少し開いたのだ
その隙間から水は下の方へ落ちて行った
「よっし!!隙間から全部水抜けたな…むん!!」ギギギギ
通路を塞いで居たのは上開きの跳ね上げ扉だった
開かずの扉と同じ材質の金属だ
「すごい!!地下への階段!!」
「あの白骨の人…水の中に入り口があるなんて気付かなかったんだね」
「こんなん気付いても普通は開けられんぞ…水圧で閉じてんだからな」
「下の方真っ暗だね…剣士?照明魔法お願い」
「照明魔法!!」ピカー
「おっし行くか…」
『地下へ続く階段』
その壁面は磁石の引っ付かない金属…
継ぎ目も無くどうやって作ったのか分からない…
「結構深いね?…これって古代遺跡でビンゴ?」
「ビンゴ…絶対この先に何かある」
「この階段の構造はシェルタ砦と同じだな」
「そうね…間違いなく同年代よ」
「こりゃお宝楽しみだな…古代のお宝俺らだけで独り占めできんぞ?」
「わたしもさっきから足が震えてるの…とても楽しみ」
「また扉あるよ!!前の奴と同じ」
「開かずの扉だな?任せろ…」
「んあ!?任せろは私のセリフだ!!」
「あぁ悪りぃ出しゃばった」
「いでよ私の奴隷1号!!」
「…」ブーン
「俺もそのミツバチ欲しいわ…」
「これで女王バチ2匹分の貸し」
「へいへい…」
「おっけ!!金属糸通したからあとは盗賊お願い」
「俺の出番か…どれどれ」キュッ キュ
一度開けた事の有る扉の解錠は簡単だ
盗賊はもう金属糸を切る事も無くすんなりとそれをやる
「よし…これで半日待機だ」ヒューーーー
「これなんでさぁ…わざわざ真空にしてるんだろね?」
「私もそれを考えてた…意図的に何千年も保存するようにしてるとしか思えない…」
「だよね?やっぱホムンクルスを生き返らせるとか何か意図があるっぽいよね?」
「もっと他にも残されている可能性も高いと思うわ」
「てかよ?この古代文明はなんで滅んだんだ?」
「伝説では神々の戦いとなっているけれど滅んだ原因は確かじゃないの」
「こないだ言ってた超スゲー爆弾て事?」
「少なくともキ・カイではそう言われてるわね」
「他にもあんのか?」
「ウイルス説」
「ほう…初めて聞いたな」
「私はこのウイルス説の方が正しい様な気がしてるの…この説も少数派よ」
「ウイルスねぇ…アサシンが昔さぁ人間の憎悪はウイルスの様に伝染するって言ってたさ」
「それよ…ウイルスの様に憎悪が伝染する…そのウイルスの元が魔王」
「思い出した!!そういえばさぁ…死んだ魔女の婆ちゃんが言ってたさ」
「うん?」
「ドラゴンのねぐらにある命の泉に魔王が魔槍を刺して水を汚してるって…」
「それは初めて聞くわ」
「それってウイルスの原因かもね」
「てか半日もここで待ってるのもアレだな…上に戻って何か探してくっか」
「ダメダメ!多分今狭間の外に出ちゃってるから時間差食らうよ?」
「ぬぁぁぁ…何もやる事無いぞ」
「寝たら?」
「そんな簡単に寝れんわ…てかずぶ濡れで寒い訳よ」
「てか剣士もビタビタだね…燃やす物何も無いなぁ…」キョロ
「あ…魔石を2つ持って居るわ?これ使い方分かる?」
「お?分かるかも…見せて」
「ルビーとトルマリンね…」
「行ける行ける!!ルビーの方は火の魔石さ…そいつに応力掛けると火が出るんだよ」
「どうやって使うの?」
「簡単さ…金属糸で軽く縛ってやれば炎が出るから…」グイグイ ギュゥ
メラメラ
魔石から小さな炎が立ち上がり始めた
「おぉ!こりゃ良い!!」
「これで濡れた装備乾かしとくと良いさ…剣士も装備脱いで乾かして」
「うん…」
4人は魔石の炎で温まりながら扉が開くのを待った
『古代遺跡』
数時間後…吸い込んで居た空気が一杯になったのかゆっくりと開かずの扉が開いた
ガコン ギギギギギー
「お!?開いた様だな?」
「…スゴイ」
情報屋は絶句した
シェルタ砦の未探索エリアよりもずっと良い保存状態で古代の遺物が並んで居たからだ
そこに例のガラス容器も沢山並んでおり中身がまだ残って居たのだ
「なんだこりゃ…容器ん中に色々入ってんな…」
「うわぁぁぁぁ気持ちわる…これ脳みそ?」
「ホムンクルスの部品だわ…どこかに完全体は無い?」
「向こうにある…あれだよ」
「おぉぉ…これ生きてんのか?」
そこに有ったのはガラス容器の中に満たされた液体に浮かぶ生身の女性だ
「完全体は一体だけね?…そこに横たわってるのは?」
「シートをどけるぞ?」バサッ
「…石になってんね」ペチペチ
「もしかすると動かし方が分からない場合又石になってしまうかも知れない…」
「なぬ?まさかガラス容器ごと持って行くわけじゃあるまいな?」
「てか動かし方知ってる人なんか居んの?」
「…少し私に時間頂戴…調査したい」
「あぁ俺もなんか良い物無いか探してくる」
「ねぇ盗賊!!私さぁ‥このガラス容器の中の液体を後で持って帰りたい」
「ナヌ!?」
「気球の中に樽あったじゃん?持ってきてよ」
「マジか…自分で持って来いや!!」
「樽は重いじゃん?消える石あげるからさぁ…」
「…ちぃ…先にそれヨコセ!!」
「ほい!!」ポイ
「お宝は山分けだかんな?わかってんだろうな?」
「ハイハイいってら~」ノシ
盗賊は気球に乗せてあった空の樽を運び
女海賊は古代遺跡の中にあった謎の機械を集めていた
情報屋はこの遺跡に据え付けられている謎の機械類が動かない理由を探して居た
「盗賊!!ちょいこっち来て…コレすごくね?」ピカー
「なんだそりゃ?照明魔法でも入ってんのか?」
「分かんない…詠唱無しで光るのさ」
「お!!待て…その光をこの機械に当てて見ろ」
「どしたん?動く?」
「見ろ…ここに数字が出る…なんだこれ?」
「ちょちょちょ…」カチャカチャ
女海賊はその機械に興味を示した
数字と四則演算の記号が記されたボタン
女海賊は物理の計算が得意だったのだ
「数字が変わるな…なんか計算してんのか?」
「うぉ!!マジ?…めっちゃ早い」カチャカチャ
「…これよ…全部持って帰るか」
「当たり前じゃん何言ってんのさ!!」
「何に使うか分からん物ばっかだが…」
「持って帰って研究すんだって」
「とりあえず樽の中に全部突っ込んでくれ…一回気球まで持ってく」
「おけおけ」ガチャガチャ
剣士は謎の機械に興味は無かった
ガラス容器の中に居る生身の女性に魂を感じないのが不思議で見入って居る
剣士にはそれが人形の様に見えていた
「ちょいあんたぁ!!さっきから何ジロジロ見てんのさ!!」
「え…いや…良く出来てるなって」
「これはホムンクルス!!お人形さん!!あんたは見ちゃダメ!!」
「いや…そんなつもりじゃ無いんだけど」
「そんなに他の女の体が見たいの!?」
「女海賊!!お前うるせーぞ!!人形でも裸の女なら少しくらい見るだろうが」
「ムッカ!!」
「…もう良いわ~調査は終わりにする」
「お!?なんか分かったか?」
「書物が一つも無くってね…でもガラス容器の開け方は分かったわ」
「割らんで済みそうなんだな?…どうすんだ?」
「樽を持って来て?」
「おう…よっこらせっと…ほんで?」ドスン
「このバルブを開けると…ほらこっちの容器に移るから好きなだけ樽に入れて持って帰っていいわ」
「おぅ…ドロドロだな何だこりゃ?」
「私もあとで性状を調べたい…それから剣士?」
「何?」
「ガラス容器から液体が無くなったら中からホムンクルスを出したいの」
「どうやって?…あ…容器も同時に下に下がって行くのか」
「液体の浮力が無くなったらホムンクルスが倒れてしまうから支えて?」
「あぁ分かった…」
「それからあなたの毛皮を被せて背負って運んでくれる?傷つけないでね?」
「うん」
「良いわよ」
「よいしょ…あ…やわらかい」ヨッコラ
ホムンクルスはぐったりとして動く気配は無い
「本当ね…錬金術で作るホムンクルスと全然違う」プニプニ
情報屋はホムンクルスの肌を触り不思議そうに首を傾げる
「冷たいから生きてる感じがしないよ…」
「そうね…なんだろう?死体の様にも思えないわ?」
「これさぁ?動かなかったらやっぱ石になっちゃうかな?」
「…かも知れない…でもガラス容器から出さないと何も分からないから」
「もう持って行けるもの無ぇし戻るか!!」
「てかその液体全部樽に入れて持って帰るよ」
「お前も持つの手伝え!アホが」
剣士はホムンクルスを背負って運び
盗賊と女海賊はそれぞれ樽を一つづつ背負った
こんな地図にも書かれていない名もなき島で
精霊の器が目覚めようとして居る…
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