第8話 開かずの扉

『シェルタ砦_客室』


4人は国賓扱いでは無いが女戦士と女海賊の同伴する者としてシェルタ砦へ入る事が許可された


しかし砦内を自由に単独行動する事は出来ない



「かしらぁ!!あっしはこんな所まで追いかけて来たでやんすよ」


「事情が在ってシャ・バクダまで戻れなかったのだ…ゆるせ」


「心配したでやんすよ」


「向こうの方はどうなって居るのだ?盗賊が居るという事はアサシンは戻って来たのだろう?」


「いろいろあったんでやんす…でもアサシンさんが戻って来たんで心配ないでやんす」


「そうか…しかしまぁ…良くキ・カイまで来れたな?どうやって来たのだ?盗賊」


「あぁ俺達はずっとすれ違いっぱなしよ…船で来たんだがえらい苦労したわヌハハ」


「そっちの2人は誰だ?」


「あぁ面識無ぇか…こっちが情報屋でアサシンの相方だ…それでこっちが商人…俺の相方だな」


「初めまして…アサシンから話は伺っています」…情報屋が挨拶した


「やぁ!!僕も君の事は盗賊から聞いて居るよ…よろしく」…明らかに年下なのに商人は気にしていない


「…こちらこそ」ジロリ


「ところで剣士はどうしたんだ?居ない様だが…」キョロ


「んむ…どこから話した物か…」



私たちの仲間には剣士の他に女エルフと魔女が居るのだ


魔女は光の国シン・リーンの姫…王国の特使としてコチラに来ている訳だ


私と女海賊は姫の従士という肩書で同行させてもらっている


特使で来ている関係で魔女は祝宴であちこちに連れまわされて要るのだ


剣士は勇者という肩書


女エルフはエルフの使者という肩書


今は魔女に同行している


私と女海賊は留守番なのだ



「剣士が勇者の肩書ってどういう事だ?…そういやあいつの目はどうなった?」


「話は複雑なのだが…」



女戦士は剣士が蒼い瞳を取り戻した後の今までのいきさつを話した


キ・カイの国へ来た目的は盗賊達と同じく器を求めて来た様だが


ホムンクルスの完全体がそれにあたると言う所まで情報は無かった様だ



「…なるほど」


「スゴイ話だねぇ…魔女と話をしてみたいよ」


「お前たちがこの国まで来た目的は何だ?私たちを追って来ただけでは無いのだろう?」


「こっちも話は複雑なんだけど目的は一緒…精霊の魂を受け入れる器を探して居るんだよ」


「やはりそうか…どこにあるのか見当は付いているのか?」


「その言い分だとそっちも情報が無いっていう事だね」


「魔女の塔に来た人間が古都キ・カイに器があると言う事を言い残して行ったしか情報が無い」


「それは私達だったの」


「フフフ本当にすれ違ってばかりだったのだな…それでその情報元はアサシンという訳だな?」


「アサシンにホムンクルスが精霊の魂を受け入れる器である可能性を話したのは私なのよ…」


「ホムンクルスとは人口の生命体の事だな?」


「そうよ…」


「なるほど…アサシンが亡くなった塔の魔女にどの程度話を聞いて居たのかは知らんが…ここに調べに来てた訳か」


「前にアサシンと一緒に来た時はアイツだけ一人で何か嗅ぎまわってたな」


「盗賊はそれだけしか知らんのか?」


「器を探しているぐらいしか聞かされて無いのよ」


「やっぱりここの下にある未探索エリアにありそうって考えるのが妥当ね」


「未探索エリア?なんだそれは?」


「シェルタ砦の下層に開かない扉が在ってその奥が未探索エリアって言われてるのよ」


「一般民は立ち入り禁止っていうもんだから近づけねぇんだ…今調べられねぇか?」


「ハハハ私たちはシェルタ砦内は何処に行っても良いと言われているぞ?」


「一回見てみてぇな」


「了解を取って来るので待っていろ」



女戦士は開かずの扉を見学する許可を取って来た


情報屋が考古学者で昔はここの調査員だった事も有り話はスムーズだった様だ




『下層へ降りる階段』


先頭を案内するのは情報屋だった


何度も此処を通った事があるらしく慣れた様子で一行を引率する


その最後尾で女海賊はショボくれた感じで追随する…反省しているフリだ



「お前…イジケてんのか?」


「……」シュン


「構うな」


「金盗んだってどっから盗んだのよ?」


「セントラルに居た時からずっとお前のの金を盗み続けていたらしい…白状させた」


「なぬ?娘達が使ってたんじゃなかったのか?…道理ですぐ無くなる訳だ」


「良いじゃんちょっとくらい…いっぱい有ったんだから」ブツブツ


「又叩かれたいのか?」スラリ


「ちょちょちょ…もうやらないからやめて…尻の青アザ消えなくなる」


「ヌハハまぁ勘弁してやれぇ…んで何に使ったんだ?」


「これ…」


「なんだその石っころ」



そのやり取りを見ていた情報屋は驚きの声を上げる



「え!?えええええええええ!!それはウラン結晶…どうしてそんな物を」


「爆弾の研究さ」


「とっても危ない物よ?」


「知ってるよ…ちゃんと金属の容器に入れてるから大丈夫」


「そんなヤバイ物なのか?」


「古代文明を滅ぼした爆弾の材料なの…この国の錬金術師は喉から手が出るくらい欲しがってる」


「ヌフフ良い事聞いちゃった♪」


「それ一つで船が買えてしまうくらい高価な物なのよ?」


「なぬ!?そんなにちょろまかしてたんか…」


「ハハそれに気付かない盗賊も大概だね」


「中央でかなりバラ撒いたからからなぁ…良く分かんなくなってた」


「女海賊は意外と泥棒向きなんだね?」


「おーし!!今日からお前を鍛えてやる」




『シェルタ砦_下層』


階段で降りて行ったフロアには謎の石がびっしりと並んで居た



「ここに並んでいるのが例のサーバ石?」


「そうよ?…もう調査は終わっているけれど何に使われていたのかは解明されていないの」


「人が居るな…研究者か何かか?」


「多分ね…私も昔はここで研究してたわ」


「これ8000年も経ってるんだよね?」コンコン


「年代は正確に分からないの…触ると怒られるわよ?すぐに崩れてしまうから気を付けて」


「全部同じ物?いっぱいあるけど」


「ここから下の層にも全部同じ物が並んで居るわ」


「へぇ…何千年もこの状態で保存されてるのか…凄いな」


「正面に扉があるな…アレか?」


「そうよ?…開けられそう?」


「見た感じシェルタ砦の入り口の扉と同じだな…なんであっちは開いてんだ?」


「さぁ?」


「なんかいろいろやった痕跡があんな…爆弾でもダメだってか」


「話によると爆弾も魔法も…あらゆる手段を使っても開かなかったらしいわ」


「女海賊!!お前磁石持って無えか?」


「ある…何で知ってんの?」


「お前はそういう物何でも持ってたりするだろ…貸せ」


「ほい!!大事な物だから無くさないで」ポイ


「へいへい…」


「ちょい私も調べるかな…」


「やっぱお前も興味あるか?」


「この扉の金属見た事無いからさ…なんだコレ?」コンコン


「どうやら磁石は引っ付か無えな…叩いた音は軽そうだが何の金属だこりゃ?」コンコン


「この扉を開ける努力はしても良いのかな?」


「良いと思うけれど許可は必要だと思うわ」


「ちぃと努力してみるからよ…許可取ってきてくれねぇか?」


「分かった」


「多分かなり時間掛かるからみんなは剣士達が戻って来るまで上に居て良いぞ」


「私は子供たちにここの食事を持って行ってあげたいわ」


「あぁそうしてくれぃ…ローグも一緒に行ってやってくれ」


「分かりやした!」




『開かずの扉』


その扉は円形の巨大な蓋の様な形をしていた


扉のヒンジにあたる部分はどこにも見当たらない


壁面と扉の接地面は髪の毛一本も入らなく位完璧に密着している


盗賊はシェルタ砦の入り口が同じ構造の扉だったから参考にそれを見に行って居た


タッタッタ



「戻り!!外の扉の構造見て来たぜ?」


「全然開きそうに無いよ…なんか分かった?」


「でかいカラクリ仕掛けだ…お前金属糸持ってたよな?」


「あるよ」


「ちょい貸せ…ほんでな?ここの隙間の奥にシャフトがあるんだ…そこまで入れたいんだが…」


「ええ!?これ模様じゃ無いの?」


「どうやって作ったか知らんがカラクリ部分にアクセス出来ん様に嵌め殺してあんのよ」


「じゃぁそれ外せば良いじゃん」


「だから言ってんだろ…どうやって嵌め殺しになってるか分からんのだ…隙間からなんとかするしか無い」


「そんな隙間に金属糸入れてどうするん?」


「シャフトをどうにか回したい訳よ…金属糸は入るが上手い事くぐらせられんな…」ゴソゴソ


「細い棒とかの方が良くね?」


「ううむ…こんな虫の穴みたいな隙間から上手い事シャフトに巻くのはムリか…どうすっかなぁ…」


「虫なら居るけどね…」


「虫にシャフトまで行って巻いて帰って来いと言うのか?…アホか!!」


「いでよ私の奴隷1号!!」



女海賊のカバンの中からミツバチが一匹現れた


ブーン



「あのな…お前マジでそんな事出来るんか?」


「上手い事やったら女王バチ探してやる…行ってこい!!」


「そのミツバチは言う事聞くんか?」


「手なずけた…最強のミツバチにする予定」


「おいおいマジか…そんなんアリか?」


「上手く行ったら女王バチ探すの手伝って…あ!!戻って来た」



隙間の中に入って行ったミツバチはひょっこり顔を覗かせている


金属糸の先端を持って帰って来た様だ



「お?」キュッ キュ


「どう?引っかかってる?」


「おぉぉぉイケるかも…ほんでな…このシャフトを回すと扉がすこし傾く様になってんだ」キュッ キュ


「回ってる?」


「うむ!回ってる手ごたえはある…ちぃと時間掛かるな」


「んあぁぁぁ私飽きてきた…帰って良い?」


「あぁ良いぞ?こりゃ俺の趣味だ」キュッ キュ ブチ


「だああああああぁぁ切れちまった…金属糸まだあるか?」


「もう無いよ…諦めようよ…ん?」ヒューーーー


「何か聞こえるな…どこだ?」ヒューーーー


「下…ここの下から音がする」


「空気が入って行ってる…のか?」


「もしかしてさぁ…この奥って真空なんじゃね?だから開かなかったんじゃないの?」


「こりゃ空気入りきったら開くな…みんな呼んで来い!!」


「おっけー」タッタッタ


「中が真空…気圧で蓋をしてたってか…それでこのクソごっつい扉か…」


「こりゃ無理矢理開いたら大爆発だな…」



数分後…


皆を呼びに行った筈の女海賊は女戦士と商人を連れて戻って来た



「おう!3人だけか?」


「もう情報屋もローグもどっか行っちゃって行き先分かんないよ」


「あぁ食い物持って家の方に戻ったか…」


「扉空きそう?」


「空気が入ってる音はするがちょろっとづつだからかなり時間掛かるな…」


「情報屋が居ないと話にならんから連れ帰って貰えんか?」


「商人は家までの道を覚えて居ないのか?」


「ゴメン…辿り着ける自信がない」


「んぁぁぁしゃー無えな…どうせ開くまで何時間か掛るから俺が行って来るか…」


「んむ…そうしてくれ…扉が開きそうな件は私が上に連絡しておく」


「分かった…ちっと行って来るわ」



2時間後…


盗賊は家に戻った情報屋を再び開かずの扉まで連れ戻した


その時には既に何人かの調査員とキ・カイの国の役人が扉を囲み人だかりとなって居た



「こりゃ又…俺等近付けなくなっちまったな…」


「仕方ないわ?私達は部外者だけど後方で見られる様にだけ話をしてきてあげる」



その時懐かしい声が聞こえた



「盗賊だね?」


「おおぉぉ!!剣士か!!」


「やっぱりそうだ…久しぶり!!」


「元気だったか?てかしゃべれる様になってんじゃねぇか!!」


「うん…女海賊に教えてもらったのさ」


「目の方はどうよ?」


「おかげで見える様になったよ…女盗賊は?」


「あぁぁ聞いて無いのか…アイツは天国行っちまった」


「え…」


「ちょいちょいちょい…マジ!?…なんで早く言ってくんないのさ!!」女海賊が慌てて話を聞きに来た


「スマン…セントラルに魔物が攻めて来た時に瓦礫の下敷きになっちまってな」


「マジか…」


「しばらく生きてたんだが…今は港町で眠ってる」


「ごめん…助けられなくて」


「…なんかイライラしてきた」


「運が無かったんだ…もう気にしないでやってくれ…落ち着いたら墓まで案内してやる」



2人は女盗賊が亡くなったと聞いてショックを受けた様だ


無理も無い…今度会ったらと…2人共それぞれ約束をしていたのだから



「女盗賊はみんなに見守られて安心して天国に行ったわ…そんなに悲観しないで?」情報屋は2人に気を使った


「済んだ事は悔やんでも仕方無えからもう考えんな」


「…にしても剣士は随分背が伸びたな?」


「そうかな?」


「んん?良く見りゃ女海賊もちっと背が伸びてほっそりしたか?…ちっと並んでみろ」


「あ…うん…」


「おぉ!やっぱ剣士の方がデカくなってる…もう女に間違えられることは無さそうだヌハハ」


「しかし剣士は随分良さそうな格好してるが…」


「あぁ…この装備は魔女が用意してくれたんだ…祝宴で魔女に恥を掻かせられないからね」


「こっちの嬢ちゃんが魔女か?」



盗賊は三角帽子を被った魔女に向き直った


10歳くらいの少女の姿をしている



「そうじゃ…主の事は聞いておるぞよ?」


「嬢ちゃんらしくねぇしゃべり方だな」


「魔女はもう80歳を超えているそうだ…失礼の無いようにな」


「なぬ!?」


「これこれ女戦士や…わざわざ言わんでも良いぞ?」


「マジかよ…でか王女に当たる訳か…俺は恥ずかしくて名乗れん」


「主の悪い話は一切聞いて居らんから安心せい」


「しかし特使がこの姿じゃ話にならんのじゃ無いか?」


「わらわが直接表に出る訳が無かろう…他の魔術師が化けて居るわい」


「王族が影武者を使うのは当然の事だぞ?他言せん様にな?」


「ほんで隣に居るエルフが魔女の塔に居た奴だな?痛かったぜぇ!!お前の矢…」


「ごめんなさい…知らなかったから」


「あんときゃもっと威勢の良いエルフだと思ったんだがな」


「怖かったから…その」


「みんな祝宴で何処かに行ってたんじゃ無かったの?」


「開かずの扉が開きそうだと連絡が有ってのぅ…祝宴はそこでお開きになったのじゃ」


「それで偉い人皆集まってるのか…」


「うむ…退屈な祝宴なぞウンザリして居った所じゃ…抜け出せて良かったわい」


「しかし中々開かんな…奥が相当広いって事だな」


「扉が開いたら中に入ってはダメよ?…立ち入りは調査員だけでやるから私たちは見てるだけ」


「なんだよ開けたのは俺だぞってんだ」


「しょうがないよ…この国の所有物なんだからさ」メパチ!!



商人は盗賊に目で合図を送った



「あぁぁ分かってる分かってる…その後なんだろ?」



その後しばらくして開かずの扉はゆっくりと開いた


ガコン ギーーーー




『未探索エリア』


そこは何千年前の物なのか恐らく当時のまま完全に保存されていた様だ


いくつも謎の機械とガラス容器が並びそれを見た調査員たちは驚きの声を上げる



おぉぉぉ


これは当時のままなのか…


上院が来るまで触手厳禁だ


足元気を付けろ



盗賊達は立ち入りを禁じられていた


扉の外から中を伺う



「…どれがホムンクルスだ?あの石造か?」


「2体あるね…なんだろうあのガラス容器」


「あの石造は精霊の像と同じじゃな…すこし容姿が違う様じゃが…」


「石造になってるって事はさ…もう動いてないって事だよね?…それで良いんだっけ?」


「…やっぱり私の学説が合ってた…その証拠だわ」


「主は何か知っておったのか?情報屋…じゃったか?」


「私はホムンクルスが精霊の起源だと思っていました…その証拠が今発掘されました」


「じゃが石造になっていては器にはならんのぅ…シン・リーンの精霊像と何も変わらぬ」


「調査しないと断定は出来ませんが…おそらく器の機能は失われていると思います」


「ここと同じ様な未探索の部屋は他には無いのかの?」


「今の所…私は知りません」


「宛てが外れたかぁ…振り出しに戻ったね」



魔女の隣に居た女エルフは青ざめた顔でプルプルと震えその部屋に背を向けた



「…女エルフや?どうしたのじゃ?震えておる様じゃが…」


「…いえ…あのガラスの容器を知っています」


「はて?何処かで見た事があるんかいな?」


「夢幻の門の中の記憶が正しければ…魔王島という所にそれと同じガラスの容器があります」ブルブル


「魔王島?アレ?なんか知ってるぞ?」…と女海賊


「…そういえばわらわもかすかに覚えておるのぅ…ガラスの容器なぞ有ったかの?」


「3人知っているというのはただ事じゃないな」


「そこが唯一の手掛かりなら行ってみるしか無ぇな…どこにあんだ?遠いのか?」


「ここは調査員に任せて私たちは上に上がりましょ」




『シェルタ砦_客室』


一行は未探索エリアに入れる訳では無かったから一度客室に戻った


盗賊は丁度南の大陸の地図をいくつも買い込んで居たからそれを広げ


唯一手掛かりの魔王島の場所を探し始める



「これが南の大陸を含んだ周辺の地図だ…」バサ


「夢で見た魔王島が何処にあるかこの地図で示せる?」


「…多分ここら辺」



女エルフは自信無さげに指を指す



「岩礁地帯か…もうちっとピンポイントで分かんねえのか?」


「わたし知ってるよ…えっとねココ!!」ビシ



女海賊は自身マンマンで海の上を指さす



「島も何も書かれて居ないんだが…」


「噓じゃないって」


「んんんん沈岩礁地帯を超えて行くのはちっと危険すぎるな」


「気球で良いんじゃね?ここからなら2日って感じかな」


「お前海の上を気球で飛んで燃料切れになったらどうすんのよ?」


「ちょい考えあるさ…多分行ける」


「多分じゃダメだろ」


「ちょい商人!このウラン結晶売っといて…そのお金で気球にプロペラ付けたいんだ」


「良いのかいこんな珍しい物?」


「私にとってはプロペラの方が重要なんだ…それ持ってるとクッソ重くて邪魔だったのさ」


「確かに重いね」


「錬金術師に売るのならお金に加えて魔石を沢山貰うと良いと思うわ」


「どうして?」


「その大きさなら買い取るだけのお金が無いと思うのよ…だから代わりに魔石を貰うの」


「なるほど…相場が分からないんだけどどれくらいするもんなの?」


「その大きさのダイヤより高価と言えば分かる?」


「う~ん…良く分かんないなぁ…」


「ウラン結晶は魔石のエネルギー充填に使うから欲しい人はいっぱい居るわ…絶対高値が付く筈」


「ちょい待ち!!エネルギー充填って言ったね?…売るの止め!!」


「どうする気だい?」


「そのエネルギー充填ってどうやんの?」


「専用の炉があるの…魔導炉と言う物よ」


「それ買える?」


「錬金術師を探して聞いてみればもしかしたら安く譲ってくれるかもしれないけれど…」


「おけおけ!!私がなんとかするわ」


「ほんで魔王島に気球で行く件はどうすんだ?」


「ちょい2~3日時間頂戴…気球改造するわ」


「そんな簡単に改造出来るんか?」


「気球は狭間ん中じゃん…ゆっくり改造しても2~3日あれば十分なんだって」


「おぉ!!そういう事か…」


「じゃぁ女海賊は気球を改造するとして…僕達はもう少し情報を集めようか」


「そうだな?あるかどうか分からん魔王島に行くよりも良い方法が有るかもしれん」


「ちょい剣士は私と一緒に行動して欲しい…もう祝宴に連れ回さないで!」


「それは良いが礼席に一人欠けてしまうのは失礼になるのう…」


「代わりに私が同行しても良いか?」…女戦士が名乗り出た


「ドレスを着てもらう事になるが良いのか?」


「ぶっ!お姉ぇがドレス?そんなでっかいドレスあんの?」


「……」ギロリ


「あゴメ…口滑った」


「まぁ良い…わらわが着付けを手配させるで心配せんでも良い」



こうして剣士と女海賊は気球の改造


魔女と女エルフ…そして女戦士は国賓として祝宴に行く事となり


残りはその他の情報収集を手分けして行う事になった




『チカガイ居住区_酒場』


盗賊は情報収集の為酒場に来ていた


そこで噂話を聞きながら後で来るという商人を待って居た


ガヤガヤ ガヤガヤ



「居た居た…待った?」


「おう!来たか」


「何か良い話は聞けたかい?」


「景気悪い話ばっかだな…お前は何か情報手に入れたか?」


「まあね?」


「お!?何ヨ?」


「ちょっとした儲け話さ…盗賊とローグで協力してちょっと盗んで欲しい物があるんだ」


「ほう?儲かるんだな?」


「まぁ酒代くらいにはね」


「おうそうよ!!ちっと酒飲むだけでえらい金取られるのよ…で何を盗むんだ?」


「僕達の船を降りた時に動かない鉄器兵が有ったの覚えてる?」


「おぉ!有ったな?」


「どうやら今キ・カイでは魔石が不足して居る様でね…あれは多分エネルギー切れで止まって居るんだよ」


「ほう…それを盗めってか…」


「ここに持って帰る訳に行かないから船に乗せて隠すんだ」


「なるほどな?」


「分解するとエネルギー切れになった魔石…つまり宝石が手に入るのと…鉄器兵の武器が手に入る」


「おぉ!!アレが持ってるクロスボウが欲しかったのよ」


「僕は鉄器兵がどうやって動いて居るのか知りたいのさ」


「なんで又鉄器兵なんか調べる訳よ?」


「情報屋が言うには遠隔操作されていると言うけどさ…どうもそんな風に見えないからさ」


「ふむ…確かにそうだな?」


「ホムンクルスと同じ原理だとしたら器になれる可能性が有るかもしれないと思ってね」


「おっし!乗った!!てか中身どうなってんのか俺も気になるわ」


「だよね?」


「見た感じ色んな武器が仕込まれて居そうだから武器は俺が貰うな?」


「うん…」





『チカガイ居住区_家』


商人は盗賊とローグが鉄器兵を盗みに行ってる間


家の前に停めてある荷車を使って物売りをしていた


売り物は娘と子供達が防寒用で使って居た毛皮だ



「どう?売れてる?」情報屋が心配そうに尋ねる


「うん!思った通り高く売れるよ」


「良かった…これでもう少しお金が入って来るわね」


「動物素材がこんなに高く売れるなんてね?」


「船にもっと沢山積んであった筈…」


「とりあえず今ある分だけ売れば良いじゃないかな…衣類はこれで買い直せるだろうし」


「盗賊とローグは何処に行ったのか知らない?」


「あーちょっとね…まぁ隠しててもしょうがないから言って置こうか」


「もしかして泥棒に行ったの?」


「まぁ…そうだよ…船を降りる時に動かない鉄器兵が有ったよね」


「そんな物を盗んだら大変な事になってしまうじゃない」


「実はね…この国は商船が入って来なくなって魔石が不足してるんだ…それで動かなくなる鉄器兵が続出してる」


「え!?そうだったのね…」


「だから地上で放置されてる鉄器兵は他の人も部品取りで狙ってるらしい…ジャンク屋で売れるみたい」


「じゃぁ他の誰かに盗られる前にどうにかした方が良いという事ね?」


「まあね?」


「魔石が不足して居るかぁ…私も2つ持って居るのだけれど…」


「それはしばらく持っておいた方が良いじゃないかな?もっと高騰すると思うよ」


「なんか心配になって来たわ…」


「んん?どうして?」


「鉄器兵の事もあるけれど…この国の色々な物は魔石が無いと動かない物が多いから…」


「なるほどね…僕も魔石がどうやって作られてたか今まで知らなかったんだけど…産地はセントラルなんだってね?」


「そうよ?セントラルの貴族達が牛耳って居るの」


「ウラン結晶だっけ?それもセントラルからだよね?何処でどうしてるのか知らない?」


「私がセントラルの盗賊ギルド支部で調べて居たのはその情報なのよ…結局分からなかった」


「そうか…どうやら貴族が完全に押さえてるんだね…それが収入源なんだ」


「キ・カイの錬金術師達が欲しがる理由が分かったかしら?」


「そんな物を女海賊が持って居るなんて凄いな…」



数時間後…


荷物を抱えて盗賊とローグが帰って来た



「いよー!!土産だぜえぇ!!」ドサ ガラガラ


「お帰り…どうしたのその荷物…」


「地上の市街地に落ちてんのよ…勿体ないから拾って来た」


「あっしも持って来やしたぜ?」


「おぉ!!なんか色々有るね武器に雑貨…あ!!食べ物も有るじゃ無いか」


「捨てるにゃ勿体無いだろ?」


「レイスがウヨウヨ居て他の人にゃ取りに行けんのですよ」


「儲けたね?…それで例の物はどうだった?」


「楽勝だ!クロスボウとボルト100本くらいゲットしたぜ?」


「宝石は?」


「おお!そうだった…こりゃトルマリンだな?結構でかい」


「僕も見に行きたいな」


「てか見てもあんま面白く無いぞ?鉄器兵の中身は空っぽなのよ」


「ええ!?どういう事?」


「どういう仕組みで動いてるか分からんが頭部以外は殆ど空っぽだ…俺もビビったわ」


「ますますどうして動いて居るのか気になるじゃ無いか…」


「そういや剣を持っててな?材質がコバルト合金だったか?」


「そーっすね…錆びない剣でやんすよ」


「これが又重くてよ…俺の好みには合わんから船に置いて来た…後で女戦士にでも使わせれば良い」


「持って帰って来れば良かったのに」


「アホか!鉄器兵の武器だと分かるようなもん持ち歩ける訳無いだろう」


「ハハ…そうだね」


「まぁこれでしばらく酒には困らんな…商人お前ここで物売りやってんだな?」


「そうだよ」


「じゃぁ適当に売り払っといてくれぇ…俺は酒飲んでからもっかい地上出て落ちてる物拾って来るわ」


「あっしも行って良いっすかね?」


「略奪はダメだぞ?落ちてる奴だけな?」


「分かって居やすよ…あっしらは地上のレイス退治で治安を良くしてるんす」


「ヌハハそうだ!!ほんじゃ行くぞ!!」



こうして盗賊達は女海賊が気球を改造している間に情報を集めつつ


子供達が100日過ごせるだけの物資を集めて行った

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