第7話 古都キ・カイ

『古都キ・カイ』


ここは地下にある古代遺跡の上に新たに町が作られた南の大陸の玄関口だった


本来ならセントラルと同じ様に商船が行き来する貿易港だ


しかし闇に落ちた今…その様相は激変し地上にある町は廃墟と化している



「やっぱりこっちの方もレイスが出てた様だな?ちと様子見てから船寄せるか」


「前アサシンと一緒にここに来たんだよね?随分変わってる?」


「あん時はもっと町の外に人が歩いてたんだよ…今は全然居ねぇだろ?」


「鉄器兵が立ちんぼになって居るわね」


「だな…ありゃ壊れてるんか?」


「操作している人が居ないだけだと思うのだけれど…」


「あれを見ろ…シン・リーンの軍船だ…気球も乗ってる」


「やっと剣士達に追いついたね」


「軍船にゃ人が乗ってる様だな…アレの横に付けるか?ひょっとしたら剣士達も乗ってるかもしれん」


「そうだね…上手い事会えると良いね」


「あそこが慌てて居ないって事は大した危険も無い様だ…早いとこ下船してちゃんとした水が飲みてぇ」


「そうね…川の水は生臭くて飲みたく無いわ?」


「じゃ…寄せるぜ?」



そこは軍港だった


一般の商船が停船出来る場所では無いのだが誰から静止される訳でも無く


シン・リーンの軍船の真横に停船させる事が出来た



「こんな所に入って良かったのかな?」


「さぁな?てか他にも船が沢山停船してんだろ…動いてる気配は無さそうだが…」


「どうなってるんだろうね?気味悪いね…」


「何にも警戒されていない様だが…こりゃ勝手に下船しても良いってか?」


「シン・リーンの軍船からは警戒されてるね」


「そらそうだわな…この闇で船乗ってる奴はそら怪しいと思うわ…どうする?」


「んーーー困ったね…勝手に下船して捕まるのも嫌だしなぁ…」


「そこは私が交渉してみる」


「キ・カイの地下降りる所まで結構距離があんだよ…子供達どうすっかだなぁ…」


「荷車に魔方陣張って行くしかないね」


「しゃーねぇ俺が荷車で往復して後で追いかけるわ…情報屋!!お前地下の地理分かってんだろ?」


「うん…降りて直ぐの所で待って要れば良い?」


「状況が分かんねぇから落ち合えなかった場合の集合をだな…」


「中央ホームと言われている場所分かる?」


「あぁ分かった…降りて直ぐの所で待てない状況だったら中央ホームで集合…いいな?」


「随分慎重なんだね?」


「めちゃくちゃ入り組んでんだよ」


「へぇ…楽しみだな」


「んじゃ…みんな荷車で下船準備だ!!」




『荷車』


娘達4人と子供達を全員乗せたら荷車はもう満載だ


最低限の荷物だけ持ってその他の物は後で盗賊が運ぶ


ゴトゴト ゴトゴト



「重いからローグと商人も一緒に引っ張ってくれ」


「じゃぁ僕は後ろから押すよ」


「おう!!」


「何か変だね?下船しても誰にも止められないなんて」


「だな?やっぱ地上の町は完全に放棄してる様だな…こりゃ盗賊ギルドもアテに出来ん」


「あそこ見て下せぇ!!死体が積んであるでやんす」


「んん?生きた死体か?」


「いやいや結構傷だらけで多分死んでいやすぜ?」


「レイス以外に何か居るって事だな」


「はぁぁ…見たく無いわ」


「お前は家族とか居ないのか?」


「もう居ないから心配しなくて良いわ」


「そうか…」


「それにしても死体が変でやんすねぇ…半分石になっておりやんす」


「それは気にしなくて良いわ…この国では普通だから」


「どういう事でやんすか?」


「不良品のホムンクルスを使った義手とかはそういう風になってしまうの」


「頭まで石になってる人も居るんすが…」


「そういう人も中には居るのよ」


「頭を交換するなんて事が出来るの?」


「国が無償でやってる実験と言えば分かる?」


「あぁ…なるほど…病気を持ってる人とかに無償でやってあげるんだ」


「そういう事…多分不治の病を持って居る人の延命処置よ」


「体の良い人体実験か…」


「それにしても本当に誰も居ないね」


「全部地下に避難してるんだろ」


「そんなに広いのかい?」


「俺ぁ全部は知らねぇ…だが相当広いぞ…いや広いが狭い」


「ハハどっちなのさ」


「とにかくゴチャゴチャなんだ…まぁ行ってみりゃ分かる…さぁ着いたぞ」


「入り口にも誰も居ないわ…」


「ローグ!!皆を守ってやってくれぇ…さぁ全員降りてそこの階段下ってけ!!」



ワーイ ドタドタ



「じゃぁ情報屋!!後は頼んだ!!30分で戻る」



盗賊は荷車を引き船に荷物を取りに戻った




『地下へ降りる階段』


情報屋を先頭に子供達を引き連れ長い階段を降りて行く


人が出入りする為なのか明かりが随所に設けられ安心感が出て来た



「みんな迷子にならない様に気を付けて付いてきてね」


「はーい」


「やっぱりここで検問か…」



下まで降りると広間になって居て数人の兵隊と鉄器兵がそこを守って居た



「止まれ!!お前たちは何処から避難してきたのだ?」


「これ身分証です…北の大陸から逃れて来ました」


「なにぃ!!こんなに子供達を連れて来たと言うのか?」


「はい…長旅で疲れているのでどうか中へ入れて下さい」


「ふむ…確かに身分証は本物の様だな…考古学者か…しかし良く逃れて来られたな?」


「船を魔方陣で守って来たのです」


「なるほど…北ではそういう技が一般的だと言う訳か」


「通して貰ってよろしいですか?」


「避難民はチカテツ街道に収容する事になっているが…それで良いな?」


「何番目ですか?」


「ここは初めてでは無いのだな?話が早い…8番チカテツ街道だ…行き方は分かるな?」


「大丈夫です…食料の配給は有るのでしょうか?」


「1日1回の配給しか無い…貰いそびれないように気を付けろ」


「ありがとうごさいます…通って良いですか?」


「通路横の部屋は兵隊の詰め所になって居るからそこには入らない様に!…真っ直ぐ奥まで行け」


「みんな付いてきて」テクテク



多くの避難民が来ているのか検問の調べは簡単な物だった


事情を詳しく聞かれるでもなく中に入って良い許可が出た



「ねぇチカテツ街道って何?」


「ここはね…古代遺跡の中に作った都市なの…古代ではチカテツと呼ばれていた場所に街があるのよ」


「へぇ…変な名前」


「他にもデパチカ居住区…チカガイ貴族居住区…中央ホーム…カイサツ門…いっぱいあるわ」



通路を奥に進むに連れて人が多くなって来た


ガヤガヤ ガヤガヤ



「子供達!!手を繋いで迷わない様に付いてきてね」


「盗賊との待ち合わせ場所は?」


「もう通り過ぎちゃったから中央ホームに行きましょ」


「人が多いでやんすねぇ」


「色んな人が居るね…ヘンテコな装飾した人とか」


「アレは装飾じゃなくて機械の部品よ」


「すごいな…この街は世界が闇に落ちても賑やかなんだ」


「全然賑やかなんかじゃないわ…いつもの半分という所かしら」


「なるほど盗賊の言う狭いって言うのは広間が何処にも無いからだ」


「そうね…何処に行ってもこういう通路に人が沢山居る」


「露店も結構出てるね」


「落ち着いたら買い物もできるかも知れないわね…さぁここが中央ホーム」




『中央ホーム』


そこは通路がいくつも集合した広い区画だ


レールの上に荷物運搬用のトロッコがいくつも置かれ物資の積み下ろしをする場所の様だ


その周辺に露店がいくつも並び買い物客でごった返していた


ガヤガヤ ガヤガヤ



「おぉ見つけた!!待ったか?」


「気にしないで?」


「荷車を良く此処まで持って来れたね?あの長い階段降りたの?」


「そうよ…兵隊にクソ文句言われたわ」


「何を持って来たんだい?」


「ローグがどっかから調達して来た武器やら角やら…これ売って金作らんとな」


「そういう事なら僕が売ってくるよ…一応商人だし」


「そら助かる…ところで他のみんなはどうした?…あぁあそこにいるか」


「中央ホームを出ない範囲で露店を見て回ってるの」


「まぁこういうのは久しぶりだろうからやらせておくか」


「ここに居ると世界の危機が分からなくなるわね」


「そうでも無さそうだぜ?食い物が全く売ってねぇ…みんな腹減らしてるだろ」


「あら?気が付かなかった」


「人間は腹減りだすとよそから盗むようになる…これじゃそのうち暴動起きるな」


「配給が1日1回だって聞いた?」


「あぁ聞いた…どうせアテに出来ん…ちっと飯の調達は考えて置かんとイカン」


「船に乗ってる食料は?」


「アレは本当にヤバイ時用だ…無駄遣い出来ん」


「そう…私達はチカテツ街道の8番に行けって言われたんだけど…」


「お前デパチカ居住区にどっかアテ無いのか?チカテツ街道はセントラルの下水みたいなもんだろ」


「もう10年も昔だから今どうなってるのか…」


「しょうがねぇなチカテツ街道行くしかねぇか…8番っちゃどこに繋がってんだ?」


「8番の奥は立ち入り禁止だった筈…だから向こうに行ったこと無いわ…」


「くぁぁぁアテになん無ぇな…まぁ行ってみっか!!」


「ちょっと待って!1時間くらい時間が欲しい…物資を捌いてしまいたい」


「おぉそうだな…俺もその辺の露店見て回るわ」



盗賊達は食料と樽を調達するのにほとんどのお金を使い果たして居た


だからローグが入手してきた物資は貴重な収入源となった


商人はそれらの適正価格を殆ど知らなかったが


持ち前の洞察力で高く買い取ってくれそうな人を探し上手く売り捌いた



「おーー全部売れたか!!いくらになった?」


「金貨30枚くらいになったよ…角と牙がすごい高値で売れた」


「おぉぉぉスゲェな!!」


「多分錬金術の材料にするのよ…今は入手出来ないから高騰しているのね」


「このお金はどうする?一応持ち主は君だったよね?」


「10枚づつ分けて持ちましょうか?」


「良いのかい?」


「私には要らない物だったし…あなた達も食料を買うのにお金使ったでしょう?」


「そら助かる!!」


「じゃぁ10枚づつ!!ハイ!!」ジャラリ


「おっし!!ほんじゃ荷車に子供達乗せて8番まで行くか!!」




『8番チカテツ街道』


そこはトロッコが移動する為のレールが敷かれずっと奥の方まで続いて居る


その両脇に避難民が所狭しと寝そべって居た



「ヌハハこりゃ最高の難民キャンプだな!足の踏み場も無ぇ」


「安全だと思えば安いさハハ」


「もうちっと奥まで行きゃ広く使えそうだが…どうする?」


「あまり中央ホームから遠いと不便になってしまうわ?」


「まぁこの辺で良いか…」



盗賊は荷車を置けるスペースを見つけそこに簡単なキャンプを作った


荷車は荷台とその下の床を使って横になれるから狭くても子供達を寝かせる事が出来る


更に布を被せればテントの様にも使えた



「これ荷車持って来て良かったね!!なんかワクワクするな…」


「だろ?これで結構なスペース占有出来る…俺らが横になる場所は無いがな…」


「なんか…ここは明かりが少ないからネズミになった様な気分だわ?」


「まぁそう言うな…とりあえず安全なんだからな?」


「でもさ…これ奥の方までずっと繋がってるから相当な人数を避難させられそうだね」


「確かに…てか奥の方は立ち入り禁止だったんじゃ無えか?」


「もうここは立ち入り禁止区画の筈よ…はみ出してしまって居るのね」


「何処に繋がってるんだろうな?」


「私の予想だけど他の遺跡に繋がっているのだと思うわ…鉄器兵が守って居るから」


「ほう…軍隊は向こうに行ってる訳か」


「あなた…好奇心で向こうに行ってはダメよ?」


「わーってる!しばらくは大人しくしておくつもりだ」



配給を貰いに行って居たローグが両手に食料を抱え戻って来た



「居た居たぁぁ!!配給貰って来たっすよ~一人一個づつの芋でやんす~」


「おぉローグ!!良いキャンプになっただろ!?」


「そーっすねぇ…盗賊さんも芋ありやすぜ?」


「今は要らん…子供達の分で残しておいてくれ」


「早く食わんと盗まれそうでやんす」


「荷車に隠しとけ…ほんでローグ!俺はちっと情報仕入れて来たい…子供達の面倒みててやってくれぇ…」


「任せるでやんす」


「情報屋!!デパチカ居住区まで付き合え…商人も来い!剣士達を探したいんだ」


「いいよ?でもアテあるの?」


「無いが…女海賊好みの店回ったらバッタリ会うかもってな…」


「ハハハ良い案だね…僕ももう少し露店を見回りたかったんだ」


「あいつは虫とか謎の機械が大好きでな?…分かりやすいだろ?」


「あぁぁぁ…カバンの中にいつも虫隠してそうだね」


「間違いねぇ…それから謎の金属とか変な物に興味を持つんだ…しかも恥ずかしげもなく装着する」


「フフフそんな事言って良いの?今頃クシャミしてるわよ?」


「あっしの彼女もお忘れなく…」


「女戦士は何が好きなのか知ってるか?」


「望遠鏡っすね…あとは顕微鏡とか虫メガネとかっす」


「ヌハハ…二人とも同じじゃねぇか」


「いえ一つ違うっす…あっしの彼女は隠れて装着するっす」


「隠れて?お前なんでそれ知ってのよ…」


「あっしも隠れて見てるんす」



この男も大概何かおかしい…


3人は顔を見合わせ苦笑いをした



「さ、さぁ行こうかハハ」




『デパチカ居住区』


そこはレールが有る他の街道とは違い


通路の両脇に店舗がいくつも並び居住エリアとして使われている場所だ


その中には宿屋や酒場…武器屋などの店も立ち並び


キ・カイの地下に住居を構える人の殆どはこの区画で生活している


その規模は地下何層にもわたり迷路のように入り組んでいる


ガヤガヤ ガヤガヤ



「じゃぁここで分かれるぞ?俺は情報収集…情報屋は住める所探してくれ…商人は女海賊な?」


「迷っちゃいそうだなぁ…」


「まぁあんま遠くまでは行かんで良いぞ」


「ねぇ…住める場所って…お金が必要な場合はどうするの?」


「金は気にするな俺が何とかする…今必要なら金貨10枚なら渡せるぞ?」


「何とかするってどういう事?」


「聞くな…何とかすると言ったら何とかする」


「キ・カイはセントラルと違って鉄器兵が衛兵の代わりに動いて居るから忘れないで」


「わーってる!!」


「大丈夫かしら…」


「ほんじゃ集合はこの場所に大体8時間後…いいな?」



そう言って3人はそれぞれ分かれた


盗賊はまず地図が欲しかった


それは南の大陸を記した物とキ・カイの地下を記した物だ


何処に行けば泥棒で稼げるか知りたかったのだ



(さぁて…まずは地図だな)


(何処に売ってんだか分かんねぇな…まぁ歩いてみっか)



キョロキョロしながら店舗の様子を探って居たら誰かが急にぶつかって来た


完全に警戒を忘れていた…


ドン!



「ぬぁ!!気を付けろぃ…」


「あ!ヤバ…」



白いウサギのぬいぐるみを被り


ガチャガチャと謎の道具を抱えた女…



「おま!!女海賊…」


「……」ピューーーー



盗賊の顔を見るなり女海賊は逃げだした


その逃げ足は盗賊でも追い付けないほど早い



「おい!!待て!!何で逃げんだよ!!」ダダ



人込みを掻き分け逃げる白いうさぎ


盗賊もそれに追いすがるがどうやって撒いたのかあっという間に見失った



「ちぃ…あいつ何処行きやがった!!」キョロ


「くっそ!!メチャクチャ逃げ足早えぇな…」


「あんにゃろう…次見つけたら容赦しねぇ」



8時間後…


盗賊は女海賊の行方を気にしながらも地図の入手や噂の聞き込みをしながら


キ・カイが今どういう状況に有るのかある程度把握し待ち合わせ場所に戻った



「くっそあの野郎…」ブツブツ


「やぁ!!早いね…どうしたの?」


「どうしたもこうしたも無ぇ!!女海賊見つけたんだけどよぅ…」


「本当に?何処?」


「俺の顔見て逃げやがった」


「え?何で?」


「知るか!!」


「他に何か情報ある?」


「アイツ探して時間食った…大した旨い情報は聞けてねぇ」


「何か盗まれてない?」


「ナヌ!!?ぬあああああああああああああああ…無い!!」


「あらら…何盗まれちゃった?」


「消える石だ!!あいつそれ使って逃げたんか」


「ハハハ一本取られたね」


「くぁぁ俺の計画台無しだクソがぁ!!チカガイ貴族居住区行こうと思ってたんだ…地図買った意味無え!!」


「どうして逃げたんだろうね?…でも鮮やかにやられたねハハ」


「そっちは何か良い物あったんか!?」


「あんまり欲しい物が無くてね…ただシン・リーンの魔術師達の行先が分かったよ」


「おぉ!成果ありだな」


「どうも国賓扱いでシェルタ砦に要るらしい」


「そら何処にあるか知らねぇな…あいつら国賓で俺ら下水かよ…ケッ」


「でも此処に女海賊が居たって言う事は多分近い所に有るんだろうね」



2人で話をしている所に情報屋も合流してきた



「居た居た…住む場所見つかったわ」


「おぉそりゃ良かった」


「狭いけれど娘と子供達だけなら大丈夫そうよ」


「金の方はどうよ?」


「宿屋より少し安くて金貨10枚で1ヶ月はなんとかなりそうね」


「食い物無しで金貨10枚か…高けぇな…」


「何もかも高騰しているのよ…衛生的にはチカテツ街道よりずっとマシだわ?」


「まぁしゃぁ無え…後は食料だな」


「それで…どうするの?もう子供達を移動させる?」


「うむ…ここで待っててくれぇ…俺は荷車に乗せてみんな連れて来る」


「分かったわ…私も少しここで休憩しておく」


「おう!!」



盗賊は一旦チカテツ街道に戻りローグと一緒に荷車を引き子供達を移動させた




『デパチカ居住区_家』


ここは避難民が押し込められているチカテツ街道とは違って割と綺麗な水が使える


チカテツ街道では下水で流れている様な汚れた水しか使えなかったのだ


子供たちを急いで移動させた理由だった



「こりゃまた狭いな…」


「壁も水場もあるから随分良いわ?」


「大人4人は外で話した方が良さそうだな…娘と子供たちは家の掃除しといてくれ」


「あと水場でみんなの汚れを落としておいて貰えると助かるわ…衣類の洗濯も」


「お腹すいたぁぁ」


「後で食い物持ってくるから今はガマンしろ」


「まだ芋が余ってるんでこれでガマンするでやんすー」


「娘達に僕の金貨を預けておくよ…これで生活に必要な物買い揃えておいて」ジャラリ


「うおぉぉぉぉぉ!!」ドタドタ


「ぬぁぁやっぱ狭いな…俺ら外に出るぞ」スタスタ



大人4人は家の外で座り込み話をする



「俺らはこの荷車で横になる事になりそうだな?」


「なんかみっともないわね…」


「まぁそれらしく小綺麗にするから我慢してくれ」


「…でだ?シェルタ砦って知ってるか?」


「チカガイ貴族居住区の向こう側にある区画よ?…一般の人は立ち入り禁止」


「俺らが行って入れそうか?」


「入り口が一か所だし無理ね」


「そこはこの国の拠点になってるの?」


「拠点の一つと言えば良いのかしら…未探索の古代遺跡があるのよ」


「知ってるって事は行った事あるんだ?」


「シェルタ砦のもう一層下に大きな部屋があってそこにサーバ石という物が沢山あるの…その調査に行った事がある」


「未探索ってどういう事?」


「さらにその奥に扉があるんだけどどうやっても開かないのよ…そこが未探索」


「ハハーン…ホムンクルスはソコか…」


「…かもしれない…でもそこに行くためには国の許可が必要よ?」


「剣士達が国賓でシェルタ砦に居るっていう事は狙いはその未探索な所の可能性が高いよね」


「どうやっても開かない扉をどう開けるつもりなんだ?」


「さぁね?…盗賊なら開けられたりしない?」


「やってみんと分からんがどうやっても開かないなら開かないんだろ」


「そこは剣士達にやらせておくとして…情報屋は他に何かホムンクルスの手掛かり知らないの?」


「知ってたらもう教えてるわ」


「国が管理してるってこたぁ俺等がに開けても国に持って行かれるわな」


「そうだね…まぁ持って行かれた物を盗みなおせば済む話だけどね」


「ヌハハそらそうだ」


「なんか手詰まりだねぇ…ひとまず剣士達に合流するのが先かなー」


「あんま騒ぎ起こしたく無いんだが…やっちまうか?」


「何か案ある?」


「女海賊の気球を盗む…そしたらあいつら出てくんだろ」


「アハハ…面白いね」


「やり方は簡単だ…正面から堂々と仲間の振りして気球まで行って飛んじまえばこっちの物だ」


「そんな上手くいくかな?相手は魔術師だしなぁ…」


「闇の中わざわざ気球まで行ってどうにかしようとする奴は仲間以外に居ないだろう」


「それもそうか…行けるかもしれないね」


「ただ一つ問題があんだ…狭間の中と外の時間差だ」


「あぁ忘れてた…それ深刻だね…どれだけ違うのか見当が付かないね」


「ねぇ…そんな危ない事しなくてもシェルタ砦の兵隊に気球が盗まれたって言えば済む事じゃないの?」


「ヌハハそらそうだ…俺等アホな議論してるわ」


「あなた達の発想は泥棒からスタートするからダメなのよ」


「悪りぃ悪ぃ…俺は盗み返したいのが先行しちまった…情報屋の案で行こう」




『シェルタ砦』


盗賊は途中で網とロープを買い入れた


気球の無事を確認しに来る女海賊を網で捕獲する作戦だ


入り口が一つしか無いから必ず通るであろう通路に罠を張る



「網の準備は良いな?」


「まかせてくれやんす」


「いいよ」



盗賊とローグ…商人の三人は隠れて網を張る



「情報屋!!行け!!」



情報屋は慌てた振りをしながらシェルタ砦を守る兵隊へ駆け寄った



「待て!!ここは立ち入り禁止だ」


「はぁはぁ…はぁ」


「どうしたんだ?そんなに慌てて」


「シン・リーンの軍船に乗せてる気球が海に落ちて沈みそうなんです…はぁはぁ」


「なに!?何故それをわざわざここまで報告に来るのだ?」


「誰も気球の動かし方を知らないので国賓で来ている女戦士か女海賊に気球が沈みそうだって連絡してください」


「分かった…確認を取る…お前はそこで待っていろ」


「はい!!邪魔にならない様にしています」



情報屋は怪しまれない様にその場で待機した


他の兵隊も情報屋が怪しい行動を取らないか見張っている


そして数分経ったところで女戦士と女海賊の2人が慌てた様子で出て来た


情報屋とは面識が無かったからそのまま素通りする



「お姉ぇ!!道分かる?」タッタッタ


「お前の方が詳しいのでは無いのか?」


「入り口まで行った事無いよぉ…どうすっかな…」


「ええい少し待っていろ…ん?」



女戦士は異常に気付いたが時すでに遅し…



「今だ!!」バサ


「アイサーー!!」バサ


「むぎゃ…ちょちょちょちょ」バタバタ


「押さえろ…手を使わせるな!!」


「がってん!!」グイ


「ちょっとあんたらぁぁ!!いでいで…」



盗賊とローグはこの手の人身拉致は手慣れていた


そこに商人が仁王立ちする



「やぁ!!又会ったね…元気だった?」


「ちょ…離せ!!あ…やべ」


「やべ…じゃねぇだろ!!」


「…盗賊!!ローグまで…どうしてここが」…女戦士は驚いた


「どうしてじゃねぇよ!!女海賊から何も聞いて無ぇのか?」


「どういう事だ?女海賊!!盗賊たちが居るのを知っていたのか?」


「私の事捕まえに来たんだよね?…悪かったよ金盗んで…返すから!!」


「金だと?なんだそりゃ…」


「あれ?金じゃないっぽい?…てか放して欲しいんだけど」バタバタ


「…それで…気球の件はどうなっているのだ?」


「ありゃ冗談だ」



このドタバタ劇を見て兵隊はただ見ているだけでは無かった


周囲を取り囲みこのやり取りを見ていたが国賓で来ている者に手を出される訳にも行かず何も出来なかったのだ



「あのー…どうしましょう?」…兵隊はバツが悪そうに女戦士へ問いかける


「あぁぁ騒がせてしまった…私たちの仲間なのだ…立ち入り許可を取って貰いたいのだが…」


「あ…はい」


「その前にこの網に掛かっているバカに仕置きをしたいのだが…」


「はぁ…」…兵隊は困惑している


「ちょちょ待って…お姉ぇ!!網に掛かってんの私なんだよ…助けてよ」


「お前はやっぱり叩かれないと分からない様だ」スラリ


「ごめんもう嘘つかないから許してぇぇぇ」



バチーン  いだぁぁぁい!!



こうして盗賊達は別々に行動していた女海賊達と無事に合流した

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