第3話 ドラゴンを救え

ダルの周りに僕らは集まった。「理由。理由はこの世界のドラゴンが暴れだして困っているんだ。桃山さんのドラゴン、辰野以外にドラゴンがいるの?」「もちろん、ドラゴンは普通にたくさんいるよ。それに以前は私の言うことを聞く、良いドラゴンばっかりだったのが何者かに操られているようだ。ドラゴンの目の色が怪しい黄色に光。」僕は思い出した。「この異世界僕らのドラゴンは、おとなしく穏やかな性格だ。歩けなくて困ったみんなを背中に乗せて空を飛んでいたよね。確か、ドラゴンの目って緑だったよね。ダル。」「そう、その通りだ。」ダルは続けて「緑目の時は、おとなしく良い子なんだけどな。それに時折、聞いたことのない笛の音が聞こえる。その音色が鳴りだすとドラゴンの目が黄色に変わり暴れだす。小宮山くん、助けてくれ。」「ダルから小宮山くんって呼ばれるのも、ちょっと抵抗あるかも。」秋山さんが「小宮山くんいいじゃない。神様ダルのお願い、きいてあげようよ。」「そうだな。」遠藤も、山川さん、秋山さんもなんだか、やるき満々って感じだ。「ダル、しかたないな、じゃあ、みんなで、ドラゴンを操っている”その何者か”つぶしますか?」「小宮山くん、頼む。」大きな風が吹いた。風に乗り笛の音が僕らを嘲笑うように鳴りだした。「行くぞ。」僕らは音を頼りに風上に歩き出した。僕らは森の奥、風上に登って行った。笛の音が近くなる。「小宮山くん、近いわよ。」「そうだな。みんな、気を付けて。」山川さんが「でもこの音色どこかで聴いたことがあるかも。」遠藤が「これ音楽の授業で使うリコーダコーダーじゃない?」「そうね。」「その通り。」僕は崖の上で大きな影を見つけた。僕は「みんな、気をつけて崖の上に誰かいる。」秋山さんが「子供がリコーダー吹いてる。横にへび、へびじゃない?」遠藤も「そうだ、あのとぐろ、間違いなくへびだ。横の人影は子供で間違いない。」山川さんが「そうね。それにもしかして、あのへびって小宮山くんが前に戦ったへびじゃない?それにあの子。隣の3組の山田イズミさんじゃない?」秋山さんが「そう、あの子、山田さんで間違いない。なんで山田さんがこの世界にいるの?」僕は目を凝らし見た。それにみんなにはナイショだが僕はこの世界では魔法が使える。僕は”魔眼”で崖の様子をうかがった。どうやらへびに操られて山田さんがレコーダーを吹いている。この世界では”人間界の音は異物”として扱われる。そのためこの異世界の生命体の脳内に異物の音を侵入させて脳内をコントロールしているようだ。笛はドラゴンの波長に合うよう音階を調整している。へびの奴、何をしようとしているのか。僕はダルに状況を説明した。ダルは「小宮山くん、あのへびはダークサイドの異世界のものだ。この穏やかで豊かな私たちの異世界を支配しようとしている。あのへびは、手ごい。」山川さんが「ダル、あの人間の子供は?」「あの子か、きっと人間界からさらわれた子供だろう。小学生と異世界との接点、入口は学校の”時計”が一番だから。その時、Happy なことを考えていたら、ここのようなHappy な異世界に飛んで行き。ネガティブなことを考えて時計を見ているとあのへびのようなダークサイドの異世界に連れていかれてしまう。」山川さんが「それって時計を見た子供の心情でHappy 側かネガティブ側に引き込まれて行くってこと?」神様ダルが「その通り。」言い切った。「じゃ、山田さんは時計を見ながら、ネガティブなことを考えてたってこと?」「たぶんね。それか無理やり連れさらわれた可能性もあるかも。そうだな、人間界では昔から”神隠し”という言葉があるよね。あれはほとんど、間違いなく異世界にいってるんだ。運よく人間界に戻ったとしても、ほとんど記憶がなかったり、時間の時系列がちぐはぐなことが多い。時空空間を移動したからだ。だからさっき人間界に戻った三崎さんも何事もなかったように生活していると思うよ。」遠藤が「へーえそうなんだ。それにそうだな。僕らも異世界から転生組だし。」ダルはつづけて「そうさ、異世界も人間界も宇宙空間の次元の違う世界は限りなくある。何かのはずみで一つの点が重なり入口ができる。それは偶然の時もあれば、必然のときもある。だからまわりをよく見ててごらん。入口は、たくさんあるよ。」山川さんが「なんだか難しそう。私はどちらかというと鈍い方だから。」ダルは「見つけ方は簡単だよ。居心地のいいとこを探すんだ。居心地のいい場所に必ず良い異世界の入口はあるから。逆に居心地の悪いところには長くいてはいけないよ。必ずあのへびのようなダークサイド側の異世界の入口があるからね。引き込まれてしまうよ。」山川さんが「なんとなく、分かる気がする。」秋山さんが「ダル、意外と説明上手なのね。私もすごく理解できたわ。」「それは良かった。王様。」僕はすぐさま反応した。「王様?」「ダル。秋山さん、説明してくれ。」遠藤と山川さんも「王様?って何?」ダルが「仕方ない。秋山さん、いや王様。言っちゃいますよ。」「そうね。」「みんな、秋山さんはこの異世界の王様です。僕はこの世界の神様なのですべてお見通しです。秋山さんは前は”ガマガエル”と言っていましたよね。この世界でガマガエルは王様しか変身できません。ここからは王様に話してもらいます。」秋山さんが「みんな、ごめんなさい。私はここの王様。ガマガエルなの。ちょっと人間界を見たくて、神様ダルにお願いして少しの間、小学生になっていたの。まさか自分の異世界の住人と同じクラスになるなんて、びっくり。それにこんな事件に巻き込まれて時計に吸い込まれ元の自分の世界に戻ってくるなんで。ほんとマンガみたい。笑えるでしょう。」僕は秋山さんに「秋山さん、いや王様。なんだか変だけどいいと思うよ。その好奇心。行きたいところには行けるときに、チャンスがあるときに行って正解だと思うよ。行きたくてもタイミングが合わないと、永遠に行けないしね。」秋山さんは「そうだよね。」納得していた。遠藤と山川さんはなんとなくふーんって聞いていた。僕は「ところで山田さん、助けた方がいいんじゃないの?」みんなに言った瞬間、あのへびと山田さんと崖を飛び降り僕らの前にやってきた。へびは「あの時の”虫さんですよね。」へびはとても丁寧な話し方だ。「僕、あれ以来”虫”さんを探していたんですよ。体は小さのに頭が良くて、僕に勝った。力も知恵もある”虫さん”」僕は照れながら「なんだか照れるな。」へびさんは真顔で「小宮山くん、僕を弟子にしてください。」「名前?なんで知っているの?」「僕は”虫”さん、小宮山くんと会うために山田さんを誘拐したのですから。」「えっ、それはまずいよ。」へびさんは、申し訳なさそうに「まずかったですか?」僕は「たぶん。」と答えた。僕は続けて「それにへびさん、山田さんの笛の音でドラゴンたちが暴れて、この世界では困っている人がたくさんいます。笛は控えてください。」「ドラゴンには悪いことをしました。ごめんなさい。」へびさんは山田さんを時計の中へと戻した。山田さんはグルグル回って人間界へ戻っていきまた。それにドラゴンもいつもの緑の穏やかな目に変わった。僕はダルをみて「ダル、これで事件は解決だね。」「ありがとう。」「ダル、僕ら転生組は一度人間界に戻りたいんだけど。」

「そうだな。小宮山くん、みんなありがとう。王様、いや今は秋山さんもありがとう。では四人とも飛ぶよ。準備して。」大きな風が吹いた。僕らはまたグルグル回りだし、上空の時計の中にすいこまれて行った。

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