第2話 時計の中へ
僕ら4人はグルグルと回りながら教室の壁の時計の中へ吸い込まれていった。「バタン。」「バタン。」4人とも地面に転げ落ちた。「痛い。」「痛い。」「痛ったあ。」「誰だ。僕らを呼んだのは。」僕は周りを見回した。僕ら以外人間は、いなかった。景色はどこにでもあるような山の中、いや森?の中だ。真っ先に秋山さんが口を開く。「ねえ、ここはどこ?」山川さんが「少しこわいんですけど。」遠藤が「そうだな。ここがどこか、分からない。」僕は「たぶん大丈夫だ。」秋山さんが口調を強めて、「小宮山くん、どうして大丈夫って言えるのよ。」遠藤も「そうだ、何の確信もないだろう。」僕は「そうだ。まだ確信はない。だが。事実僕らはさっきまで学校の教室にいた。退屈な国語の授業を受けていた。みんな覚えているよな。」秋山さんが「そうよ。その通り。」「で、そのあと僕らは教室の時計の中へ吸い込まれた。」「そうだ。その通りだ。」僕はみんなを見渡して、「そうすると、ここは時計の中の世界。異世界だ。しかしただの異世界じゃない。みんなもよーく見てごらん。なんとなく見覚えがないかい。」山川さんが「ここの森覚えてる。私が前、住んでたところ。」「えっー。ほんとだ。私も知ってる。ここの地面の土、気持ちいいのよね。」秋山さんが喜んだ。遠藤も「僕も覚えてる。僕の川はこっち、こっちに来て」僕らは森を右へと駆け下りた。きれいな川があった。たくさん魚もいる。トンボもカエルも人間界では数が減ってる、妖精界のサンショウウオもいた。すごい。異世界は僕ら4人の故郷だった。秋山さんが「なんか変な感じ。さっきまで人間の小5の子供だったのにね。」「そうだね。」秋山さんが「でもなんですぐ小宮山くんは、ここが前いた世界だと分かったの?」「あーそれ、あの森で僕マーキングしてたんだ。戦いに勝つたびにね。ちっとした勲章のようなもの。それに僕は虫だけど、こう見えて結構強いんだ。大きいところではへびにも勝ってしまったしね。」「えー、それはさすがに嘘でしょう。盛りすぎよ小宮山くん。」と秋山さんが僕の肩をたたきながら言う。山川さんが間に入ってきて。「それほんとだよ。私、見てたもん。私、蜘蛛だから森の小枝にいつも蜘蛛の巣をつくるの。あそこの、あの枝あたりかな。」遠藤と秋山さんがハモって「えー!ほんと」山川さんは話を続けた。「大きな”へびさん”が小さな”青カエルさん”をたべようと追っかけていて、あーもう食べられるって時に”虫さん”がビューンってやってきてへびさんをあの小枝あたりでグルグル飛び回って、そうしたらへびさん枝に絡まって動けなくなったの。それでその虫さんは『僕の勝ちー!これで100勝ー。やったあー。』って喜んでたの。だから、小宮山くんは嘘は言ってないよ。」秋山さんが「そうなんだ。小宮山くん強いんだ。」遠藤も「そうか、あのへびに勝ったんだ。それはすごい。ぼくなんか泳ぎは得意だけど、やっぱりへびだとちょっと引く。戦う前に、逃げるよ。」僕はちっとうれしくなったが、「でもみんな今、僕らは人間だ。僕らの異世界の故郷に帰れたのはうれしいけど、今のリアル生活は人間だ。人間界に戻るぞ。」秋山さんが「そうね。そのとおり、故郷もいいけどね。今は、人間の小学生だもんね。」遠藤も山川さんもうなずいた。「私、帰りたい。」泣きそうな声が僕のポケットから聞こえて来た。胸のポケットの中に「桃山さん。」僕はそーっと取り出して手のひらにのせた。みんなも、「桃山さん?」「桃山さんだ。」「どうして?」「待った。」視線が気になっていた僕は振り向き「誰だ。」石の上に青カエルがいた。みんな石の周りに集まった。山川さんが「きゃー。可愛いカエルさんだ。」「なーんだ。青カエルかよ。妖精だったらよかったのに。」遠藤が言う。石の上で「わしを忘れている!わしが先だ。その子も助けてやるぞ。」青カエルは叫んだ。僕らはえっ?と首をかしげながら青カエルを見た。「久しぶり。”虫よ。”あの時は助けてくれてありがとう。お礼が言えずにいたからな。」僕の脳内が『命の恩人?上から目線のおじいさんみたいな言葉づかい。』「もう少し丁寧な言葉を使った方が良かったかな。」『えっ?脳内を読まれている。』「君は誰?」「わしか?では姿を戻すか。」「バーン。」大きな音と光とともに中から人間?いや違う。神々しいい光。僕は「もしかして神様ですか?」「そう、その通り。わしは、この異世界の神ダルだ。」「神様?でも、ちっと子供じゃないですか?その姿。」神様ダルは子供だった。「見かけは小1ぐらいだが年齢は余裕で1000歳は超えてるからな。神の世界では時間の流れが全く違う。この異世界の時間も、人間界の時間も。」山川さんが緊張して固まった。僕は、思い出した。「あの時の青カエルは神様?話がつながった。僕は強い。僕は天才だ。」いつもの強気の僕がでる。「じゃ、ややこしいんで神様”ため口”でもいいですか。」神様ダルも「いいよ。」「そうだな。小宮山くん。」「でもどうして僕の名前を?」「当然だ。神だからな。」ダルはちらり秋山さんを見た。僕の脳内に”何かが引っかかった”が今はスルーだ。そしてダルは手のひらの桃山さんをじーっと見て呪文を唱えだし「バーン。」桃山さんがもとの体に戻った。ダルは優しい声で「桃山さん。もどったよ。」桃山さんは「ワーん。」と泣き出した。秋山さんが桃山さんの背中に手をおいた。何とか泣きやみ。僕は「桃山さんも転生組?」「えっ、転生組って何?青カエルさんが神様になったり、山川さんが蜘蛛だったり。ここはどこ?」僕ら4人は口をそろえて「桃山さんは、人間だ。」遠藤が「なぜ異世界に?」ダルが「僕が話すよ。桃山さんはあの時、教室で何を考えていたのかな?」桃山さんは少し顔をしかめて「クラスの中に苦手な子がいたの。それが嫌で。」山川さんが「わかる気がする。」と小さい声で言った。秋山さんが「誰?誰なの?」「辰野くん。」去年転校してきた辰野か。僕とはクラスが違ったが。「それで、辰野の何が苦手なの?」「なんだかずーっと見られているようで。こわくて。いつも気づかない間に後ろにいたりするの。」秋山さんがすかさず「それ、ストーカー?」ダルが「違うな。辰野は転生組だ。辰野はドラゴンだ。」僕らはハモって「ドラゴンー。」ドラゴンは、もともとやさしい。特に妖精界のドラゴンは桃園の番人だ。きっとその記憶が残っていて桃山さんを無意識につい、守ってしまったんだと思うよ。」山川さんが「人間界で言うと前世の記憶?って感じ。」その言葉に桃山さんは納得したようで「神様ダル、みんな、ありがとう。でも、私帰りたい。」ダルが「そうだな、ここは生身の人間には空気が魔法量が重すぎる。じゃあ、桃山さん、元気で。」ダルはまた呪文を唱えた。光が放たれ桃山さんは消えた。僕はダルの方を見て「ところでダル。なぜ僕らを呼び寄せたの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます