教室の時計は異世界時計

京極 道真  

第1話 退屈な授業

「あーあ、眠い。」昨日遅くまでゲームしていたせいか。始業式早々、今日は朝から眠い。先生が教室に入ってくる。「おはようございます。今日から皆さん5年生です。来年は最上級生となります。この一年は、とても大切です。皆さん、頭を働かせて良く学び。体を動かして良く遊んでください。では皆さん一年間頑張りましょう。」どの学年にいても、いつもの先生達の決まり文句でホームルームは終了。終了後すぐの一限目の国語。あー最悪に眠い。教科書の呪文のような文章を先生が読んでいる。先生は「ここ、漢字テストに出ますよ。」とか言っている。先生の話は、よーく、聞くとテストの出るところを親切にも教えてくれている。さすが小学校の先生。やさしいのか、おバカなのか、それともテストの点数をとらせたいのか、よくわからない。まあ、天才的な頭脳のメンタリストの僕からしてみれば、先生の言っていることは、当たり前すぎて笑える。それにしても退屈だ。今日は眠い。昨日参戦したオンラインゲーム。チームメートには絶対小学校生だとバレないようにしているが、さすが生身の小5の僕にとっての深夜1時のゲーム参戦はハードだ。”来る”僕の脳内受信機が作動する。「小宮山くん、ちゃんと聞いていますか。ここテスト出ますからね。漢字にしるしをしなさい。」とりあえず「はーい。わかりました先生。」と僕は良い子で答えた。こんな感じで”やっぱり来たー。”先生の注意。僕には予知の能力があるようだ。時々、こんな感じで事前察知することができる。まるで虫のようだ。そう、実は僕は”虫だった”。前回この人間界に来るまでは、”虫”で生きていた。ふわふわ気ままに。虫の生活を楽しんでいた。しかーし、今回は、人間になってしまった。小5の僕。人間の体の使い方もまあー、さすがに10年もこの姿でのつきあいだし、さすがに慣れてきたけど。あーあ、でも今日は眠いな。「バサッ。」教科書が落ちる。先生は、すかさず「遠藤くん、教科書落ちましたよ。」遠藤は返事なし。『遠藤?遠藤か。』僕らはクラス替えがあったばかりだ。4クラスあるが結構、シャッフルされたようだ。遠藤とは初めて同じクラスになる。先生が遠藤の席に行く。教科書を拾い机にのせた。先生は「授業中は寝ないように。」遠藤に注意した。僕の脳内受信機が働く。『遠藤も僕と同じ転生組のようだ。』しかし?彼の前回は『魚?さかな、たぶん鯉だ。』『小宮山、そうだ。あたり。俺は前回、川の鯉だった。』『へ―そうなんだ。』『遠藤、その前に先生に謝ったほうがいいかもな。先生、怒ってるぞ。』『そうだな。』「先生、ごめんなさい。」「遠藤くん、分かればいいんですよ。これから気を付けなさい。」「はい。」先生は教壇へ戻っていく。『ちょっと、待って二人とも転生組?私だけだと思っていたのに。』『君は誰?』コロコロコーロ。消しゴムが落ちて行く。「先生、消しゴム落ちました。拾っていいですか?」「はい。秋山さん、いいですよ。」「ありがとうございます。」秋山さんが席を立って消しゴムを拾った。『私が可愛い秋山よ。二人ともよろしく。』『よろしく。』「あーよろしく。』僕は性格上、疑問に思ったら即、質問するタイプだ。『秋山さん、転生前は何?』『私はガマカエルよ。』『ガマガエル?』クールそうな遠藤が反応した。察知した秋山さんが『遠藤くん、何か?今、笑ったでしょう?』『いや、別に。』『おいおい、二人とも喧嘩するなよな。転生組。僕たち仲間じゃないか。』『ちょっと待って。私も仲間に入れて。』秋山さんがすぐ反応した。『あなた、山川さんでしょう。去年、一緒のクラスの山川れいな。なんで今、転生組、告白するの?なんで、早くに言ってくれなかったのかな。』秋山さんと違って山川さんはおとなしそうな女子だ。僕は『きっとタイミング逃したんじゃんないの。』秋山さんが『そう、そうなの。じゃあ、仕方にわね。』意外にも秋山さんはあっさり受け入れた。そして秋山さんは『それで、山川さんの転生前は?何?』『蜘蛛よ。』『へーえ。蜘蛛ね。』『蜘蛛ね。』僕と遠藤がハモった。再び秋山さんが『なんだか、楽しくなりそうね。』『そうだな。』教室のカーテンが少し揺れた。暖かい春の光と風が教室に入ってくる。風は校庭の桜の花びらをも教室に運び入れた。僕ら4人は目で桜の花びらを追った。花びらは、教室入り口のシンプルな丸い電子時計のガラスに張り付いた。次の瞬間。花びらは、時計の中に吸い込まれていった。”おいで”誰かが呼ぶ。もう一度大きな風が教室に吹き込んだ瞬間。僕らは教室の時計に吸い込まれていった。

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