ep.04

(彼女の痴態を裁き終わったところで、アナタはホットミルクを2人分作って自分の部屋に持ってきた。彼女と一緒に飲んでいる)


「こくっこくっこくっ——っはぁ」


「ん、おいし。ありがとね、ホットミルクまで作ってくれて。おかげで体の芯からぽっかぽか」


「……キミって意外と気が気が利くね。随分と助かっちゃった」


「それで私の服は……」


「そう、しばらくかかるんだね。あはは、それもそっか、そうだよね、あはは」


「はぁ……」


「…………」


「……ねぇ、何か話してよ」


「き、気まずいんだよぉ。もう勘弁してよぉ」


「そもそもキミの部屋にいるのがおかしいんだってぇ。今までまともに話したこともないのにさぁ」


「それに……それに今、私は下着を着てないし……」


「なっ、も、もうっ、急に噴き出して汚いなぁっ」


「それに、その反応……今さら気付いたってこと?! ほんとにぃ?」


「しんじらんっない! そういうとこが駄目だと思うよ、キミは!」


「……うぅ、なんだか目つきがエロい目になった……」


「変態、この変態!」


「あはは、いつもの仕返しー。しょげちゃって、可愛いんだ」


「……ちらっ」


「あは、こっち見た。やっぱ、キミもオトコノコなんだね~」


「なっ……! 露出狂は流石に心外なんだけど?!  私はキミの臭いが好きなだけで、そんな生粋の変態じゃないもん!」


「キミの体操服を嗅いだり、キミのベッドに勝手に寝転がったのは、うん、まぁ、そうだね……うん」


「べ、別に良いでしょっ。減るもんじゃないんだし!」


「へ? い、いやキミが私の臭いを嗅ぐのはちょっと……」


「当たり前じゃん! お、男の子が女子の臭いを嗅ぐとか、そういうのはちょっと……」


「へ、いや、ちょっと待ってなんで無言で近づいてくるのっ? ほ、ほんとに、ほんとに私の臭いを嗅ぐ気?!」


「ちょ、ちょっと待って……な、なんで無言で近づいて来てるのっ? え、本気じゃないよねっ、ねっっ?」


「ひぇ、ひぃぇっ」


「ま、待って……まだ心の準備が――っ!」


「~~~~っ」


「…………」


「……あ、あれ?」


「なっ、なに、爆笑してるのよぅっ! こ、こっちは本気でっ、本気にしたんだからねっ」


「む~~~~」


「これは、ちゃんとお詫びをしてくれないと許すわけにはいかないなぁ」


「ほら、ここ座って……そう、私の隣」


「うわって顔しないで、うわって顔をぉ。罰なんだから、悪い子は私の言うことだけを聞いてれば良いのっ」


「……ん、よろしい。って、なんで微妙に距離開けてるの? ちゃんとくっついてくれないと臭いを嗅ぎにくいよ」


「ふへへ、そうそうこれくらいの位置で……、キミもだんだんと分かってきたねぇ」


「それじゃあ、とりあえず定番の胸の臭いから……」


「すぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ」


「すん、すん? むぅ……お風呂上がりだから、少しキミの臭いが薄いというか……端的に言えば物足りないというか」


「耳の裏は? 洗っちゃった?」


「洗っちゃったか。この素直さんめぇ」


「ふんだ、別に良いし。薄くなっても……すんすん……ボディーソープの匂いの中で微かに残ってる……すんすん……微かな臭いを楽しむ手だってあるから」


「すんすん、でも、この匂いどこかで書いたことがあるような……?」


「あ、そっか。キミんちのシャワーを借りたんだから、私も同じボディーソープの匂いなんだ」


「えへへ……ちょっと恥ずかしいかも」


「同棲してるカップルみたいで……」


「…………」


「なんだか自分で言ってて恥ずかしくなってきた」


「少し暑くなってきたから、ちょっとジャージのジッパー下ろそ」


「どうしたの? 突然慌てだして……?」


「え、見えそう……って、なにが――~~~~っ」


「み、見たっ? どこまで見えたっ?」


「……そ、そう見えはしなかったんだね」


「でも、見ようとはしたんだ。ふぅ~ん」


「キミのえっち……」


「自分から誘惑する分には良いんだけど、そうじゃなかったら恥ずかしいだけだよぉ」


「そ、それにキミだって顔真っ赤にしてるんだから、実は結構恥ずかしかったんじゃないのっ?」


「ふ、ふぅん……恥ずかしがるくらいには私に気があるんだ、そうなんだ。ふぅん」


「いやいや、別に何か他意があるわけじゃないよ? ホントダヨ?」


「ただ、そうなんだなぁって、そう思っただけ」


「…………」


「ごめん、やっぱり今のウソ。他意はある大有りだよ」


「ねぇ、どうしてキミはそんなに私に優しくしてくれるの?」


「だって、おかしいもん。普通さ、自分の体操服を嗅いでる不審者との取引なんて応じないよ」


「普通だったら何も言わずに距離を取るか、悪口流すよ」


「おまけにムシの良すぎる取引条件にも乗ってくれるし……」


「私は節操なく臭いを嗅ぐし……」


「自覚はあったよ、勿論あったよ。まぁ、我慢できなかったから嗅いじゃってるんだけどさ」


「でも、そうやってさ、弱みというか嫌われるようなことし続けてるのに、なんでここまでしてくれるの?」


「わざわざ私を部屋なんかに上げちゃってさ。私だったら絶対しないよ」


「だから、なんでなのかな~、なんて思ったりして」


「…………」


「だ、だんまりはやめてっててばぁ」


「別に他意はない? ほんとに? そういう割には、私と目を合わせてくれないけど」


「私は、ね……その、他意があってくれたらなぁ、なんて思ったりするんだけど」


「…………」


「…………」


「私はっ、私はねっ、キミのこと好きだよ?」


「臭いが、だけじゃなくて、その……オトコノコとして」


「ちなみに、臭いが好きな人との相性は遺伝子レベルが良いって話もあるけど」


「つまり、私とキミの相性は遺伝子レベルで良いってことなんだけどっ」


「どうかな? 私じゃダメ、かな?」


「キミの臭いが好きで、体操服の臭いを嗅いだり、ベッドの臭いを嗅いだりするオンナノコでも、好きになってくれますか?」

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