第4話 あの生徒
「雨崎先生、おはようございます」
今は、違う先生だ。
でも、みんなは桜先生がいい。
今の先生じゃなくて、
元の桜先生を返してほしい。
助けてほしかった。
「また満員、」
「なんで月曜と水曜と金曜は満員なのっ⁉」
「はあ、やだなあ」
不評にならない理由が分からなすぎる。
雨崎先生なんか、新人じゃん、
もっといいクラス担当してよ、
かわいそうだよ、
こんな地獄みたいなクラス、
飽きちゃったよ、
学級目標なんだっけ、
諦めないで取り組もうだっけ、
なんだっけ、忘れたな。
「桜先生っ、そこ、ホームです、っ!」
「待っ、っ!」
「只今、人身事故が発生致しました」
「お客様はそのままお待ち下さい。」
「誰か、っ、助けて、っ!」
今日死んで、明日死んで、
明後日死んで、明明後日死んで。
死ぬ人が出たときは、
いつも誰かが悲しむ。
喜ぶ人は絶対にいない。
これだけは、断言できる。
はずなのに、あの生徒。
あの人だけは、嘲笑っていた。
頭を下げていたあの日。
あの時。
私たちは結局なにもできない。
それが現実に、なんて、
辛かった。
誹謗中傷が、酷かった。
だから、話しかけた。
あの人に。
「どうして誹謗中傷するの」って。
帰ってきた答えは、
「じゃあ誹謗中傷ってどこからどこまでなの?」
「じゃあお前だって悪口言ってんじゃん」
「は、私は誰にも言ってない」
「だって、陰口でしょ、知ってるよ」
「ねえ、陰口ならOKなの?」
「家族だったらOKなの?」
「お前、いっつも心の中で思ってるだろ、」
「なんでそんなことするんだって。」
「それが分かんないなら口出ししないで。」
「私だって言いたくて言ってるわけじゃないんだけど!!」
「いいよね、お前たちは!!」
「辛さを知らずに生活できるんだから!!」
「アイツが自殺したのは私のせいじゃない!!」
「お前たちだよ!!」
「絶対にお前たちだ!!」
「なにもしてないよ、手伝ってあげてただけ!」
「それが辛かったんだよ、分かれよ!」
「私だって辛かったんだぞ!!」
「じゃあ最初からやんなきゃよかったじゃん!!」
「無駄なことしないでよ!!」
「言っとくけど!!」
「私がこれをしなきゃお前たちはもうとっくに死んでるからな!!」
「よかったな、平和に生活できて!!」
「うちは借金だらけなんだよ!!」
「学校行くのもギリギリのラインなんだよ!!」
「お前たちは高校行くかも知れないけど、」
「私は行けないんだよ!!」
「お金がないんだよ!!」
「脅されてんだよ!!」
「……助けてよ、」
「助けて……よ、っ!」
掠れた声で言った。
「お前ももうすぐ死ぬから、っ!」
「絶対……絶対、っ、後悔する、っ!」
なにを言っているの、この子。
後悔はもうしてる。
桜先生を助けられればよかったって。
なのに、これ以上の後悔を、
するときが来るなんて。
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