第5幕 少年時代

俺は小山さんと別れた後、署に向かった。


アラン・スミシー……。

一体何者なんだ?

あの事件の真似事なんて何がしたいんだ?


あの事件当時の俺は、高校3年生。

有名な話だったからよく覚えてる。

丁度大学の受験シーズンだったけど、クラス中この話で持ちきりだった。


いや、クラスだけじゃなかったな。

学校全体だ。

それに、小中時代の奴らと久々に会ったらまず話題に上がったのが、その殺人事件だった。


みんなとは仲良くしてたけど、その時はあまりいい気分じゃなかった。

見立て殺人だったからか、謎解き合戦が行われた。

人の内臓が抜き取られたり、骨を粉々にされたり、バラバラにされてるのにも関わらず、みんな和気藹々わきあいあいとしていた。


テレビのニュースや配信でもそうだった。

司会やゲスト達、考察系と呼ばれる配信者が面白おかしく謎を解こうとする。

あるお笑い芸人は『脳が無くなってオーノー』っていうネタを披露していた。

炎上するどころか、流行りのワードになって俺は恐ろしかった。

俺にそのネタの面白さがわからなかった。

逆に怒りを覚えてしまった程だった。

たとえ、殺された側がろくでもない奴らだったとしても、殺されてることには変わりがないからな。


他に、人を貶すときにノータリンと言葉を使う人が多くなった。

脳味噌足りないという意味を持った差別用語が、流行ってしまったのだ。

いじめとかじゃなくて、誰かをいじるときによく使われてた。

俺も軽くやめろよぐらいは言ったけど、聞き入れられなかった。

俺も馬鹿だから言われことあったな。

馬鹿とはいえ、いい気はしなかった。


多くのミュージシャンは、2番目の事件でベートーヴェンの運命が流れていたことから、それを元にした曲を演奏していた。

それが意外に流行ったんだ。

確かにどれも曲調は良かったと思うけど……。

事件が起こったからそれを曲にするなんて正気か?って思った。

俺が好きなラッパーもそれをネタにしてたから、少しショックだった。


3番目は金庫、4番目は数学者が元にされたことから、数字を使ったパズルゲームが多くなった。

ボードゲームでもテレビゲームでもその時期から新しいゲームがとても増えた。

特に人気だったのが、テトリスを応用したテトリス23っていうゲームが人気だった。

落ちてくるブロックの形とかは一緒だけど、ブロック1つ1つに1から10の数があって、1列揃える時は必ず、合計を23にすることで消すゲームだ。

かなり難易度の高いゲームだけど、ゲーマー達や数学に強い奴は特にハマってた。

俺もやってみたけど、数字は苦手だ。

多分当時の小学生より出来なかった自信がある。

今のゲームは昔と違って、テレビの画面じゃなく、その場で画面が出てきて出来るようになったから、VRゴーグルも必要無くなったな。

どちらにしろあまりゲームはやらないけど。


それと事件後にできた宗教、23に導きを求める会。

危ない宗教団体って言われてるけど、特に問題も起こしてないし、何かを信じる人を批判するつもりもない。

ただ、4番目の事件で23という数字が使われていたから少し引っかかりはするけど。



5番目の事件現場であるA Balloon Show。

あそこは心霊スポットでもあり、親が子を守りたいっていう気持ちをお祈りする場となった。

元を辿れば、子を守ろうとした親が元凶となった事件だからだ。

噂だと髑髏の模様の羽を生やした夫婦の霊が出ると言われている。

その夫婦が蝿の王、ベルゼブブ夫婦と呼ばれているからだろう。


うちの両親はどちらかというと、放任主義で俺の好きにやればいいっていう感じだった。

家族仲も良いほうだと思う。

だからこそ、当時容疑者として疑われていた小田友和さんが可哀想だった。

その人の家も表向きは家族仲は良かったらしい。

でも自分以外の家族が狂っていたなんて……。

俺だったら耐えられない。

小山さん曰く、事件後行方不明らしいけど、今どうしているんだろうか?


それとも既にもう……。


そう考えているうちに署に着いたが、そこは想像絶する光景が目に映った。


署の前が………。

なんなんだこれは?

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The story is set in this country Auguste @pogo0918

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