第4話 出会ってしまった2人
俺は、今、人生で初めて感じる緊張を覚えていた。
そう、今から俺は人生で初めて女子と2人で会うことになっているのだ。
緊張のせいかずっとそわそわしてしまい、髪型がおかしくないかスマホの内カメラを起動して確認しては、ポケットにしまってを繰り返している。
……そう言えば、俊樹たちに今日は行けないって言ってなかったな。
俺はふと思い出して、メッセージアプリを起動し――、
『今日は用事があるから集会行かないわ』
モテない男子集会と名付けられたグループチャットにメッセージを送った。
メッセージを送って数十秒が経ったときだった。
俺のスマホが聞いたことのない速度で『ピロン!』と通知を狂った鳥のように鳴らし始めた。
俺は、驚きながらメッセージアプリを確認した――。
「うわ……」
メッセージアプリを開くなり、俺は、思わず口を開いていた。
『俊樹がスタンプを送信しました』
『健がスタンプを送信しました』
これらのような通知が2人合わせて150件届いていた。
いわゆるスタ爆というやつだ。
……なんて勘のいいやつらなんだ……。
2人には奏さんとこれから会うことをまだ話していないはずなのに、2人は、完全に俺が奏さん絡みでモテない男子集会を欠席すると決めつけてスタ爆をしてきている。
俺は、未だに届き続ける通知を
しかし、その瞬間にもまだ通知の数は膨れ上がっていく。
俺は、とりあえず鬱陶しい通知音から解放されただけよしとした。
鬱陶しい通知音から解放されて俺がふう、と息をつくと――、
「あの! 海里くん……だよね……?」
女の子に声をかけられた。
俺がその声に顔を上げると――、
俺の前にとんでもない美少女が立っていた。
……えっと、もしかしなくてもこの子が奏さん……?
俺は、目の前に立つ美少女を見て、動揺しながらも――、
「は、はい……! 北野海里です……! ――奏さん……だよね……?」
どうにか返事を絞り出した。
そんな風にがちがちに緊張している俺とは対照的に――、
「うん! 西野奏です……! 初めまして! ――って、言うのも今までDMで結構話してたからなんか変な感じだね……!」
奏さんは、ふふっと俺に微笑みながら言った。
――美少女の笑顔の破壊力高すぎませんか……?
微笑みかけてくる奏さんを見て、心臓の鼓動がさらに早まった。
「そ、そうだね! なんか変な感じだね……。あはは……」
もう俺は、緊張でうまく言葉が出てこなくなってしまい、あははと苦笑いをすることしかできなくなってしまっていた。
「海里くん、なんか緊張してる……?」
様子が明らかにおかしい俺を見て、奏さんが首をかしげながら聞いてきた。
「あ、えっと、うん……。あんまり、女の子と話したことないから緊張しちゃって……」
俺は、苦笑いをしながら言った。
「そっか……! 実は、私も男の子とあんまり話さないから結構緊張してる……。お互い様だね……!」
奏さんは、さらに優しく微笑んできた。
――奏さん優しいな……。
明らかに緊張している俺をフォローしてくれているのが伝わってくる。
そんな風にフォローしてくれる奏さんが俺には、天使のように見えた。
「やっぱり、こういうの緊張するよね……! それより、お昼に何か食べたいものとかある? 俺、普段は、友達とファミレスとかラーメン屋しか行かないから女子が行きたいような場所がわからなくて……」
俺がそう言うと――、
「え! ラーメン屋さん行きたい! 普段、友達とかと一緒に行けないから!」
奏さんは、目を輝かせながら言った。
――気を遣わせたりしてないよな……?
俺は、一瞬、そう思ったが、目を輝かせる奏さんを見て、杞憂だと判断した。
「それでいいなら行こうか……!」
「うん! ラーメン食べるの久しぶりだから楽しみ~!」
スキップをしながら奏さんが歩き始めた。
俺は、スキップをしながら歩き始めて先に進んでしまった奏さんを慌てて追いかけた。
俊樹と健にチョロすぎだとか色々言われそうだが、もう、この時には、俺は完全に奏さんのことを好きになってしまっていた。
いわゆる一目惚れというやつだった――。
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