第9話
親ガチャ。最近テレビでも聞くようになった。Twitterてはもっと前から。
子ガチャもあるのかな。
天華は
雑誌のインタビューを受けていた。インタビュアーは女性だった。
このお仕事に就いたきっかけというか、どんな世界だと思ってた?
マネージャーの言う通りに言おうと思っていたけれど、辞めることは伝えてあるし、修正もしてくれるみたいだから好きに答えよう。
私は今、十七歳。宮下天華の人生を生きているんだから。
「短いスカートとか、衣装とかお金がかけられないアイドルの世界って聞いてました。友達と見に行ったことがあるんです。そこで、せっかくだから、今をしっかり頑張っている子とチェキとかいうのも撮ってもらおうって。心の中では本当に応援したんです。その日だけ。でも、なんだろう、チェキ、ちっちゃい写真を撮る相手の子が私を見て、ちょっと苦い顔をしました」
インタビュアーが笑う。どうせ好きにまとめるから手早く聞いて手早く終わらせようと思っていたが、なんとなく引き延ばしてみる気になったようで。
天華ちゃんが可愛いから、ビミョーな心境になっちゃったかな。
「どうでしょう、でも、本当に、売っているCDとかイメージカラーに合わせてメンバーに合わせて作られた衣装を見て、この子達どんな気持ちかは本当のところはわからないけれど、やりたくてやってる、と信じたかったです。私もやりたくてやってます」
これからは、やってましたになるけれど。インタビュアーがもう最後の質問をする。
どうしてこのお仕事を頑張れる、とか、動力源!活動源みたいなものはある?
「それはもちろんファンのみなさんの気持ち一択です!……どんなものでも、私、『気持ち』が好きなんです。原動力とも活動力とも言い換えられるけれど、……。
ほんとはね、ほんとは、家族と、自分自身のためにいっちばん気持ちつぎ込んで活動してるかもしれません。体型維持のための父の料理、私がバテないように応援してくれる母。どうして、いつから、うちは、そんなカタチになったかなー、って思ったら。私がこのお仕事始まる前と後で忙しさは段違いで」
この辺りでインタビュアーが仕事を切り上げたさそうだ。巻きで言おう。
「この家族あってこその、私はアイドルやれてる、『みんな』の『天華』なんだって、そういう関係性と海みたいな地球を覆うそういう体積。わたし、大きいな、っていう全能感をみんなと共有できるんです。別に武道館行ったわけでもないのに規模が地球ですが、みんなの『動き』に私がいる。
それが
究極のアイドルかなって
感動って、そういうことかなって
人の心を動かす、それが感動
深くなくても深くても、浅くても!
あ、長くなっちゃうんであとはお任せします!
頑張れるのは、仕事だからです!
だって、わたし、学生以外にできることがあるなんて味わいたいに決まってた!ってくらいに!」
なんにでもなりたかった。
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