第8話

二階にいる、

「天華」

俺は娘を呼び出した。

天華は素直に、降りてきた。

思えばいつも

「どうしていつも制服を着ているんだ」

言いたいことは他にもあったが、娘に疑問をぶつけてみた。


「だって」


「制服、好きなんだもん」


そうか、と俺は言った。

「地下アイドルと、兼業状態になっているモデル、どちらかにするか、もしくは、どちらも辞めなさい」


「いいよ、わかった」


「いいのか?!」

俺は不思議だった。もっと、えー?!なにそれ、せっかく努力して二兎を追いながら、どっちの首も気の幹にぶつけて折れてどちらのお肉もゲット!ご馳走様!!って頑張ってたのに!

とか言われそうだと思っていた。

なのに。

「あんなに努力してたのに、いいのか?どっちを辞めるんだ?」


「……、どっちもかな。クラスでからかわれるし。応援もされるけど。今辞めたら黒歴史かな。いいんだけど」


なら、どうして。

「どうして」

聞いてみる。


「私は、自分でもなぜだかこの時代でこの容姿に生まれてトントン拍子にスカウトいくつか受けて。それでも、私、ちっともほんとは嬉しくなかった」


なぜなら


「パパの娘だから」


生まれ変わったら轢き殺した相手、その転生した人物の娘だった。そして、母は、その人物の実の母の、これまた生まれ変わりで。


何でそれを知ったのか。


「パパとママを選んだの、私なんだよね」


前世では病気だけれど、毎日薬を飲みながら優しく自分を育ててくれた母がいた。父は工場で真摯に働いていてくれた。


「勤労がすごく大事だと思ったの、この話、明日のインタビューで全部、生まれ変わりは伏せて、話すから。今日はもう終わりにしていい?仕事はとりあえずどっちも辞めて、働くとしても普通の、アルバイトするから」


もちろん今までのファンやストーカーに気を付けて自宅に近いところで明るい所、友達と一緒にできるところでもいい。


そんなふうな事を言うので。


俺は。


「わかった。母さんと話し合って今の会話はしたから、母さんにも言っておく。心配だったら天華からも、自分から母さんに連絡しといてくれ。無理矢理俺が辞めさせた、みたいになったらみんながかわいそうだ」


天華は、キョトンとして、つう、と一筋涙を流した。

俺は、一気にパパモードになる

「なんだ?!やりたかったらやりたいことやっていいんだぞ?!でも、ちょっとでも後悔しそうならそれはパパとママが止める!許さない!」


わかった、ありがとう、と天華が静かに泣きながら言う。

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