第6話
とんでもない設定だった。
全てが。
俺は、慣れない手つきと明晰な頭脳を今となっては両立させて。
妻に、パソコンで連絡を取る。
リモート会議であり、夫婦会議だ。
『あら、あなた』
「すべてを、知った」
『嗚呼、なんてこと!』
「教えてくれ、ぜんぶまるっと何が起きてる?!いや、起きている、おかあさん?ん?ママ?なんだか、せつない」
というか本当なのか?すべてが。
『貴方のことが母さんずっと気がかりだった。
って言いたいけれど。
あなた。
今の使命は地下アイドルでモデルまでこなしちゃう、反則の宮下天華の父よ。しっかりして。私も、夫婦なのは複雑だった時があるけれど、子供の幸せが目の前で二重に見られるのはラッキーだわ。もうすぐ帰るから。そしたら地下アイドルか、モデルか。天華に道を決めさせましょう』
処理オーバーだった。
「え?どういうこと?天華は君の地下アイドル応援の会社で頑張りつつ、その天性のルックスからモデルも嗜んでいるのでは?」
『さあ。勝手にこんなことになってるわ。もう、芸能の神が天華を引き摺り込んでるみたいに』
えー。
事務所みたいなの兼業したりとか?想像がつかない。何か悪いことが起きている?でも撮影とかサイリウム持って応援とかしているのは、俺。
ついでに、保護者の判子とか。割り印とかよくわからずみてたのも、俺。あれ、以前の、俺、応援しすぎててファンじゃないか。
『天華は、魔性よ。なんせ、人生二周目の私たちの中で一番苛烈な人生だから』
だから、わたしは謎の地下アイドル関係の会社に転職したのよ、と。
「うちの家計、どうなってるの?立ち行かないのでは?」
『そこは私が独身時代に貯めた死ぬ気の二千万で今は成り立ってるわ』
椅子から飛び退きたかった。
今の所わね、と妻。
「えーと、まま?」
『なにかしら?』
「この話、どうなるの?」
『私としては天華にどちらも損害のない形で辞めさせたいわ。私本業の方の海外出張の合間になぜか天華はアイドルデビューしているし。貴方は、なぜかしら、ファンになっていて一向に目覚めないし、もう心底、』
どうにかして。
辞めさせよう。
手に負えない。
天華はまだ高校生。
そして、どうやら苛烈な人生二周目。
説得してみせる。
契約とかたぶん、大変なこととかになるのか?
それとも去る者は追わずなのか。
とにかく。
明日のインタビューの撮影の後が、勝負といこう。
「家族だもんな」
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