第6話

 小説の中のベアトリーチェは金に物を言わせて牢番を買収し、まんまと脱獄を果たす。


 そしてやはり金に飽かせて、暗黒街に身を寄せる。そこで自分と同じ背格好の赤毛の女を浚って来て殺し、顔を潰して身元が分からないようにしてから、自分の身代わりとして牢に放り込むように依頼する。


 あっちこっちで恨みを買っていたベアトリーチェが、牢の中でさも何者かに暗殺されたように見せ掛けるためである。


 小説のタイトルでもある『悪役令嬢は二度死ぬ』とはそういう意味で、この後ベアトリーチェは自慢の赤毛を黒く染め、学園に潜入し自らの手でヒロインを殺そうとする。


 この辺りの鬼気迫る様子と躊躇いなく人を殺そうとする狂気故、私の中でベアトリーチェは「悪役令嬢」を通り越して「悪魔令嬢」と認識されていた程だ。


 まぁそれでも最後は、ベアトリーチェがまだ生きていて凶行に及ぼうとしていることがバレて、ヒロインに襲い掛かった所を駆け付けたアレクサンドル王子の剣に倒されて終わるんだけどね。


 ちなみに何故バレたのかというと、ベアトリーチェの指示で脱獄やら暗黒街への手引きやらを手伝わされたシンシアが、最後の最後でベアトリーチェを裏切ったからなんだよね。


 なおこの時、ベアトリーチェの企みに気付いてシンシアを問い詰め白状させたのは、まだ登場していないベアトリーチェの義理の弟ラインハルトなんだけど。


 ただこのラインハルトは、ベアトリーチェがアレクサンドル王子の婚約者になったから、公爵家の跡取りとして遠縁の親戚から養子に迎えられることになっているんだよね。ベアトリーチェって一人娘だから。


 だから私がアレクサンドル王子の婚約者にさえならなければ、ひょっとしたら登場しない可能性もあるキャラなんだよね。


 前世の私は一人っ子だったから弟や妹、兄や姉には縁がなかったんで、今世では弟が出来るかも知れないと思ったら、ちょっと楽しみだったりするんだけどね。どうなることやら。


 ちなみに小説の中のベアトリーチェは、急に現れた義理の弟が気に入らなくて、かなりえげつなく虐めたりしたからラインハルトに嫌われていた。だから最後にベアトリーチェを追い詰めた訳なんだよね。


 小説のストーリーは概ねこんな感じだ。やはり基本となるのはアレクサンドル王子との婚約なんで、これを全力で回避すると共に関係者との人間関係を改善して行く。この路線で行こうと思う。


 方針が決まって安心したのか眠くなって来た。


 おやすみなさい...

 

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