第5話
シンシアを下がらせてから私は、死亡エンド回避のために改めて現在の状況把握を行うことにした。
アレクサンドル王子の婚約者を決めるお茶会で、肝心のアレクサンドル王子と絡むことなく終わった。つまり既に小説のストーリーからは外れている。
このままアレクサンドル王子の婚約者になることなく進めば、少なくとも死亡エンドを迎えることはなくなる。それは確実だと思う。
小説のストーリーから外れたことで今後、予想外の出来事が起きる可能性はあるが、いざとなったら領地にでも引き籠ってしまえば良い。
傷物になった令嬢というレッテルが貼られればそれも可能だろう。とにかくアレクサンドル王子との接触を極力避ける。これが肝となる。
小説の中のベアトリーチェはとにかくアレクサンドル王子が大好きで、事ある毎にアレクサンドル王子に絡んでいた。
まんまと婚約者の座を射止めた後は、ストーカーの如く毎日のようにアレクサンドル王子に付き纏っていた。そりゃ嫌われて当然だわ。
嫉妬深く、アレクサンドル王子にちょっとでも近付いた女には、権力を笠に着て容赦なく牙を向く。アレクサンドル王子はますますストレスを感じるようになる。
傲慢な性格にはますます拍車が掛かり、使用人達はいつベアトリーチェの逆鱗に触れるのかと戦々恐々としながら過ごす日々。
あっちもこっちもストレスフルな状態にしておきながら、当のベアトリーチェはそんなこと微塵も気付かず、自分は皆に愛されて敬われる立場なんだと信じて疑わない。
うん、こうして見るとベアトリーチェって本当に傍迷惑な存在だわ。そりゃアレクサンドル王子もヒロインに靡く訳だわな。当然の帰結だ。アレクサンドル王子に罪はないよ。
そして王立学園に入学した後、アレクサンドル王子がヒロインと絡むようになると、そらもう嫉妬に駆られてヒロインをこれでもかっていうくらい虐め抜く訳だ。
定番である『教科書破り』から始まって『噴水流し』からの『階段落とし』という三段コンボ。それでも挫けない健気なヒロインに対し、最後は破落戸を雇って害そうとした。
ベアトリーチェの狡猾な所は、これら全てを自分の手を汚さず取り巻きどもに命じてやらせていたこと。
三段コンボ以外にも、公衆の面前でヒロインのことを「泥棒猫」「淫売」「売女」などと散々罵ったり、廊下ですれ違う度に足を引っ掛けて転ばしたり、女子トイレの一室に閉じ込めて頭から水を掛けたりといった数々の虐めに関しても、全て取り巻きどもにやらせて、自分は高みの見物とばかりに洒落込んでいた。
まぁそれでも最後には、アレクサンドル王子の手によって悪事は全て暴かれ、ベアトリーチェは投獄されることになるんだけど、通常ならここで「めでたしめでたし」ってなる所が、この話はまだ続きがあるんだよね。
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