第2話
取り敢えず情報を整理しよう。
私の家は母子家庭で貧乏だったから、私を大学に入れることが出来なかった。高卒で就職した会社は所謂ブラック企業で、私は朝から晩まで安月給で働かされた。ほとんど休みも取れなかった。
最後に覚えているのは、残業でヘトヘトになってフトンに倒れ込んだ所まで。きっとそのまま私は過労死したんだろう。
母ちゃん、親不孝な娘でゴメン...
「...様...ベアトリーチェお嬢様!?」
「えっ!? あ、あぁ、ゴメン、シンシア。なに?」
「...あ、あの...大丈夫なんですか!? 頭を打っておかしくなったとか...」
「アハハッ! や、やだなぁ! 私はなんともないよ? ほらこの通り元気元気! ゴメンね、心配掛けて」
「...やっぱり変です。お嬢様は他人に謝ったりなどしない。まして私なんかに何度も何度も...有り得ません...旦那様と奥様にご連絡しますね? お医者様に診てもらわないと...」
「わぁあああっ! 待って待って! 本当に大丈夫だから! お願いだから大袈裟にしないで!」
出て行こうとするシンシアを呼び止めながら、私はベアトリーチェの記憶を探る。
うわぁ...これは酷い...シンシアがこうなっちゃう訳だよ...気に入らないことがあるとすぐ癇癪を起こして物を投げ付ける。紅茶の温度が温いって言っては紅茶を頭からぶっ掛ける。その他殴ったり蹴ったりは日常茶飯事って...ベアトリーチェ、なにやらかしてんの!? お前はどこの暴君だよ!?
...シンシア、良く耐えて来れたな...普通ならこんな傍若無人なお嬢様の所なんてさっさと辞めるだろ? SNSに挙げられたりしたら大炎上間違いなし。訴えられたら間違いなく多額の慰謝料請求されるだろ。
いやだからSNSは無いってば!
「コホン...と、とにかくなんでもないから気にしないで? あぁ、そうだ! 喉が渇いちゃったからお茶入れてくれない?」
「...ハァ...分かりました...」
物凄く不信感たっぷりってな顔で下がって行ったな。まぁ今はこれでいいや。シンシアとの関係は追々改善して行くことにしよう。
さて、この世界が私の好きだった小説『悪役令嬢は二度死ぬ』の世界だってことは、今のシンシアとの会話でも間違いないと思われる。
小説の中でベアトリーチェはとにかく傲慢な令嬢で、使用人に対し虫ケラのような扱いをしたから、最後の最後で使用人に裏切られるのよね。
小説を読んでいた時は「ざまぁ!」って思ってたもんだけど、いざ自分がその立場になったら冗談じゃない! そんな運命迎えて堪るもんか!
この小説はタイトル通り、悪役令嬢は死亡エンドを迎える訳だけども、私はその運命とやらに断固抗って見せる!
絶対に死亡エンドを回避するんだ!
そのためにまずやることは...
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