転生したら死亡エンドしかない悪役令嬢だったので、王子との婚約を全力で回避します

真理亜

第1話

 今日は待ちに待った王宮主催のお茶会の日!


 そして第二王子アレクサンドル様の婚約者選定の場でもある! わたくしと同い年のアレクサンドル様は、金髪碧眼のまさにキラキラ王子様! 


 わたくしと同年代の令嬢達の間では人気No.1なのよ! かくいうわたくしもアレクサンドル様に夢中! だからこのお茶会には一段と気合いを入れて臨むわ!


 もうすぐ王族の方々がいらっしゃる時間ね! わたくしはアレクサンドル様狙いの令嬢達が屯する場の先頭に立ち、周りの令嬢どもを威嚇してやったわ!


 公爵令嬢であるわたくしには誰も逆らえないようね! オーッホホホホ! ざまぁないわね!


 来た! 王族の方々がいらっしゃったわ! 国王様、王妃様に続いてアレクサンドル様が! あぁっ! 今日もなんて麗しいの!


 国王様の挨拶が終わって、いよいよお茶会がスタートする! わたくしはスタートダッシュを掛けて誰よりも早くアレクサンドル様の元へ!


「アレクサンドル様~♪ ご機嫌麗しゅう~♪ ぶへっ!?」


 ...ここでわたくしの意識は途絶えた。


 後で聞いた話だと、アレクサンドル様に群がった令嬢達が将棋倒しになり、一番先頭にいた私は、車に轢かれたヒキガエルのようになって気を失ったらしい。

 

 なにそれ恥ずい。そんな姿をSNSに挙げられたりしたら、全世界の笑い者になっちゃうじゃんか。


 ん? SNSってなんだっけ?



◇◇◇



 目が覚めたら見知らぬ部屋に居た。ここどこ? 私の四畳半の部屋に天蓋付きのベッドなんて置ける訳ないじゃん。


 ってか、やたらめったら広い部屋だし! 家具も良く分かんないけど、きっとあれ絶対高いよ! 見事な彫刻とかされてんだもん!


 ますます訳が分からなくなった私は、取り敢えずベッドから降りて部屋を歩き回って見た。


 ん? 部屋だけじゃなく体にも違和感があるな。なんか全体的に手足が短くなったような?


 部屋にあった姿見を見て驚愕した。二度見した。そして...


「な、なんじゃこりゃあ~!」


 絶叫した。


 松田○作か! という使い古されたツッコミは要らん!


「お嬢様!? どうなさいましたか!?」


 私の叫び声を聞き付けたのか、メイドさんが飛んで来た。可愛ぇぇのぉ~! メイド服に身を包んだ美少女!


 私が野郎だったら堪らんシチュエーションだろうな...って、そんなことを思ってる場合じゃない!


「あ、あぁ、ビックリさせてゴメンなさいね、シンシア。私は大丈夫よ? ちょっと怖い夢を見ただけ」


 ん? シンシア? なんで私は初対面のはずのメイドさんの名前を知ってるんだ? 


 いやでも確かにこの娘の名前はシンシアだ。なぜ分かるのか分かんないけど、分かるんだから仕方ない。


 そして私の名前は...私はもう一度姿見をジッと見詰める。赤い髪にちょっと吊り上がってキツ目の目元。紛うことなき10歳くらいの美少女がそこに映っている。なぜか額に大きな絆創膏を貼って。


 この絵には見覚えがある。


「悪役令嬢のベアトリーチェ...」


 そう、どうやら私は自分が好きだった小説の、あろうことか悪役令嬢に転生したようだった。

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