第13話

 エミリアがゲス三人衆とよろしくヤっている頃、イライザは生徒会室でとある令嬢達と会っていた。そして憤っていた。


 その令嬢達が涙ながらに訴えた内容が余りにも酷かったからだ。こんな蛮行が許されていいはずがない。


「そう...辛かったわね...良く勇気を出して告発してくれたわ。本当にありがとう。あなた達の勇気を決して無駄にしないと誓うわ。見ていて頂戴」


「イライザ様ぁ~!」


 その言葉にますます泣き崩れる令嬢達を見ながら、イライザは必ず断罪してやる! と固く心に誓ったのだった。



◇◇◇



 エミリアの焦りは頂点に達していた。あのゲス三人衆に体を許してまで依頼した件が、いつまで経っても遂行された様子がないからだ。もう卒業式まで一週間を切っている。

 

 相変わらずイライザは普通に登校して来てるし、生徒会長としての任務も普段通り完璧に熟している。なにも変わった様子がない。


 しかもゲス三人衆はあの日以来登校していないようだ。もしやエミリアが渡した金で遊び呆けているのでは?


 エミリアは頭を抱えるしかなかった。万策尽きたとはこのことだ。


「おい、エミリア。どうしたんだ!? なにか悩み事か!?」


 そんなエミリアの元にヘンリーが久し振りに現れた。


「ヘンリー様!? 学校サボって今までどこほっつき歩いてたんですか!?」


 イライラしていたエミリアはここぞとばかりに噛み付いた。


「えっ!? あ、あぁ、それはその...な、なんだっていいだろ! お前にゃ関係ない! 俺だって色々と忙しいんだよ!」


 こっちの気も知らないで...どんなに苦労しているのか知りもしないで...開き直ったヘンリーにエミリアは殺意すら覚えた。だがなんとかそれを押し隠す。ヘンリーに聞かなければならないことがあったからだ。


「そんなことよりヘンリー様、あの取り巻き共がどこに居るかご存知ありません? ずっと学園を休んでるんですよ!」


「えっ!? あぁ、アイツらか。なんでも纏まった金が入ったとかで旅行に行くとか言ってたぞ?」


 やっぱりか! エミリアは臍を噛む思いだった。あんなゲス野郎共を信用するんじゃなかった。今更そう思っても全ては後の祭りなのだが。


「それよりもエミリア、イライザを貶める件はどうなってんだ!? なんか進捗はあったのか!? もう卒業式は来週なんたぞ!?」


「そ、それは...」


「出来ないならお前はもう用済みだな。あばよ、結構楽しかったぜ」


 そう言ってヘンリーは立ち去ってしまった。


 後には呆然としたエミリアだけが取り残されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る