第12話

 その日、エミリアは使われていない旧校舎の一室に居た。


「なんだよ? こんな所に呼び出して?」


 エミリアはヘンリーの取り巻きである例のクズ三人衆を呼び出していた。


「あんた達を雇いたいのよ」


 そう言ってエミリアは金貨袋を見せ付けた。


「雇う!? お前が俺達を!? なんで!? どういった目的で!?」


「イライザを襲って純潔を散らして欲しいのよ」


「なんだって!? 正気か!? ヘンリー殿下の婚約者だぞ!? そんなことしたら殿下に殺されちまうじゃねぇか!?」


「大丈夫よ。これは殿下も容認してることなんだから」


「本当なのかよ!?」


「えぇ、そうよ。殿下はあの口煩い女が大嫌いなの。さっさと婚約破棄したいんだけど、あの女は中々隙を見せないから殿下も手を拱いているのよ。そこで私が一任されたって訳。あの女と殿下の仲を裂くためにね。だからなにやったってなんのお咎めも無しってことよ。結婚する前に純潔を散らされてしまえば、平気な顔して殿下の婚約者を気取って居られないでしょう?」


 この世界、貴族女性は結婚するまで純潔を守るべしという考えが深く根付いている。転生者であり前世が風俗嬢だったエミリアからしてみれば、そんな考えは古臭い時代の名残でしかない。


 だがこの世界で生きる貴族女性達にとってはその価値観こそが全てであり、仮に純潔を無理矢理散らされてしまった場合、自決してしまう貴族女性も多いと聞く。


 今のままではイライザを断頭台に送ることは到底無理だ。だったら自分から断頭台に上がって貰おう。純潔を散らされたイライザが自決してくれれば、それだけでエミリアの目的は達せられる。


 あくまでも自分のことしか考えていないエミリアであった。


「へっ! なるほどな。話は分かったぜ。しかし良くもまぁこんなゲスい考えが思い浮かぶもんだよなぁ。同じ女としてちっとは気の毒だとか思わねぇのかよ?」


「あんたらに言われたくないわよ。それでどうすんの? ヤるの? ヤんないの? あんたらがヤんないんなら他の人に頼むまでだけど?」


「へへへっ! ヤってもいいぜ。ただし金だけじゃなぁ~」


「それどういう意味よ?」


「分かってんだろ? ヒヒヒッ! なぁ、久し振りにいいだろ?」


「あぁ、そういうこと...」


 エミリアはゲスい嗤いを浮かべながら近付いて来る三人に向かって、


「ヤらせてあげてもいいけど...あんたら、若さと勢いに任せて強引過ぎるのよ。痛いだけでちっとも気持ち良くないんだから。少しは女を優しく扱いなさいよね?」


「へいへい、了解了解」


 相変わらずゲスい嗤いを浮かべながら、三人はエミリアを押し倒したのだった。

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