第11話
「フゥ...なんとか上手く行った...」
イライザは生徒会室でホッと息を吐いた。いくらお達しを出したとはいえ、興味本位でエミリオの元に近付く生徒が居たらどうしようと気が気ではなかったのだ。
エミリアの企ては予知夢で予めしっかり確認していた。自作自演で自分を被害者に仕立て上げようとする魂胆だ。
学園中にエミリアの奇行と悪評が広まっている中、エミリアがどんなに訴えても真に受ける者は居ないとは思うが、それでも万が一ということもある。
危険な芽は早目に摘んでおくに限る。
「さて、悉く企みが失敗したエミリアが次に取る手は...」
イライザは予知夢で見た光景を思い出しながら生徒会室を出た。
「確かあの角の辺りね」
校舎の三階にある生徒会室を出て、玄関に向かうための階段を下りて一階に辿り着いた。そして玄関に向かう最初の曲がり角。
予知夢通りならあそこでエミリアが待ち構えていてわざとぶつかって来るはず。そしてこう叫ぶ。
『痛ったぁ! ひ、酷い! 突き飛ばすなんて酷いわぁ! わ、私がなにをしたっていうのよぉ~!』
更にその場で泣き崩れる。真偽はともかく、こうやってイライザを悪人に仕立て上げようとする腹だ。だからイライザは回れ右して別の道を進んで行った。
◇◇◇
一方、イライザの予想通り曲がり角の隅で待ち構えていたエミリアは、一向にやって来ないイライザにイライラしていた。
「どうなってんのよ...なんでやって来ないの? このままじゃ下校時間になっちゃうじゃない...」
その日は結局、エミリアは待ちぼうけを食らっただけで徒労に終わってしまった。
「なんでこうなるのよ~!」
エミリアの叫びだけが放課後の校舎に空しく響き渡っていた。
「お~い! まだ誰か残っているのか~? もうとっくに下校時間過ぎたぞ~! さっさと帰れよ~!」
「ヤバッ!」
見回りの教師に見付かりそうになり、慌てて帰ったエミリアだった。
◇◇◇
その後も悉くエミリアの待ち伏せは不発に終わった。イライザの姿さえ確認できない日々が続いた。
エミリアのイライラは頂点に達しようとしていた。一度などはもうバレてもいいやと破れかぶれで、生徒会室を出てすぐの所で待ち伏せたりもしていたものだが、なんとその日イライザは学園を休んでいたりした。
これはもうイライザも転生者だと思って間違いないんでは? エミリアはそう結論付けた。じゃないと説明が付かないことばかりだからだ。
「そうなると...もう最後の手段しかないわね...」
そう言ってエミリアは怪しく嗤ったのだった。
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