第5話 (笑) 大峰視点
奴らが逃走してから一時間は経った。最後に撃った【
個人的には女のが遊べるし生かすならそっちのほうが良かったんだが、依頼者の希望だからな。しかたねえ。
「ねえ、大峰」
隣の女がスマホをいじりながら俺を呼んだ。
「ホントにあいつがそーなの?《ギフト》使わせて確認でもしたほうが良かったんじゃね?」
この気だるそうなギャル女は
「いや、そーおもって最初に手加減して腹斬ったんじゃねえか」
「でも確認できなかったじゃん」
「あ?じゃあ他にやりようあったか?」
「んなもん、ふつーに拷問して《ギフト》使わせればよかったんじゃね?あたまつかえよなーリーダーさまあ」
「......お前、殺されてえの?」
相変わらず苛つく女だな。いい機会だ......殺っちまうか?
武器に魔力を集中。こいつの首を落とすなら、魔力充填30%くらいで良いか。
「待て。気持ちは分かるが、仕事中だぞ大峰。やめろ」
「......!」
俺を静止するこの男の名は
「しかし大峰。奴らを逃したのは明確なミスだな。ここはまだ入口とはいえ、広大な魔界の一部。見つけるのにかなり苦労するぞ」
「いいんだよ」
「は?なにがいいんだよ、リーダーさまあ?何日戻ってくんのまつきだよ?ここでキャンプして待つつもりかぁ?魔獣に殺されて戻ってこねえかもしんねえんだぞ?」
「そーなりゃ仕方ねえよ。もともと捕獲命令なんて出されてねえからな」
「どういう事だ?大峰」
「俺があの人から下された依頼は【魔女の魂】を案内人に移すことと、魔界に放置することだからな」
「はあ?いらねーのぉ?貴重な貴重な【魔女の魂】だぞぉ?」
「回収は後ですんだと。つーわけでおれらは帰るぞ。こんだけ待って奴が現れねえってことは、もう森の中に迷い込んでるんだろ」
「そうか。相変わらずあの方の意図はわからんな」
「まあ、いつものことだろ。ほら、行くぞ司菜々喜。立て」
「はいはーい、っと」
「つーか司菜々喜。帰ったら女三つ調達してくんね?」
「またかよ。前やったヤツはどしたん?」
「いや、死んじまったけど」
「いや、「けど」じゃねえよ......」
「仕方ねえだろ。お前もわかるだろ?興奮してきたら殺りたくなるの」
一人目は首絞めてたらいつの間にか逝ってて、二人目は突然俺の女面しだしたから面倒くてダンジョンで殺った。三人目はかなり俺好みだったから、じっくり遊んで......あー、そーだ。帰ったら三人目処理しねえとな。面倒くせえ。
バラバラにした三人目の後処理を考え、内心ため息をついていると、司菜々喜が口を開いた。
「んまー、確かにリーダーさまの言うこともわかるかなあ」
「お、だろ?」
「イケメンが自慢の顔を酸でグズグズにされたときの反応とかあ、ネイルしたての爪を剥がしたときの女の泣き顔とか。なんてーか、鼠に蛇をけしかけた動画を観てる時みたいに楽しいんよね」
「お、おお、だろ」
鼠に蛇?なんだコイツ、気持ち悪いな......引くわ〜。でもまあ、綺麗な女の絶叫はそそる。命の散る間際っつーのかな。あれが芸術ってやつなのかもしれない。
俺もクリエイターだからな。いつか闇サイトでお披露目したいぜ......これまで撮ってきた彼女らの芸術的歌声を。
「大峰」
「ん?」
木田源が指を指す。そこには俺が持ち込んだ自動AIカメラがふよふよと浮いていた。
「お、帰ってきたか。どれどれ」
そこに映されていたのは、先程の男の絶望し崩れ落ちる姿と、俺の【
(......この女。すげー可愛かったなあ。勿体ねえ)
『――......あっ、あああー!!』
男が叫ぶ。恐らくは女が絶命したんだろう。つーか、ふふっ、こいつ。
「「ぶははははっ!!!」」
俺と司菜々喜が爆笑する。木田源は大笑いこそしてないが、にやにやと笑みを浮かべていた。
「ま、マジうけるんだけど〜!なんでこんなに泣いてんの!?意味不明なんですけど〜!アハハハ」
地面をぺしぺしと叩いて、「ひぃー、くるしー」と腹を抱える司菜々喜。そして俺もあまりの滑稽な姿に呼吸困難に陥りかけていた。
「鳴き声うるさっ!!あははっ、ふっ、やべ息できねえ!!たかだか女いっぴきが死んだくらいで!!なんだよコイツ、このオッサン!!モテねえからせっかくゲットした女が死んで悲しいんか!!?......はぁっ、はあ」
「大峰。死体の回収はするのか?」
「ふぅー......はあ、あぶねー息できんくて死ぬとこだった。いんや死体は置いとく。夜の5層は危険だからな......あと何より面倒だ。んなサービスはしねえ」
「なるほど」
「んじゃ、帰ろっか〜」
「だな。帰りなんか食ってくか」
「私、お好み焼きがいい〜リーダーさまあ」
「せっかく北海道来といてお好み焼きなのか......」
「夕食の話は良いが、扉に結界を張っておく事を忘れるなよ、大峰」
「あいあい、わーってるよ」
じゃーな、案内屋。
――ズズン
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