第17話 キャラの濃い人たち

「君たち。今日は集まってくれてありがとう。今日、君たちに集まってもらったのには他でもない。そう『学園クラス対抗戦』の発表するためだ。

『学園クラス対抗戦』は君たち5つの派に分かれて競ってもらう学園初の大会だ。


内容は簡単。


5派でトーナメントをしてもらう。


ヴィーレ派はシード枠になっていて、決勝戦からの出場だ。


第一試合はコルト派とメディエル派。


それじゃあ、君たちはもう解散してくれて結構。それじゃあまたね。」


学園長はそう言って壇上から降り、自室に帰って行った。


大講堂にいる全員、もちろん俺も頭の上に『?』を浮かべている。


学園長が『学園クラス対抗戦』の説明をすると言ったから集められたにも関わらず、なぜこんな適当な説明だけなのか、という疑問と時間を返せという怒りが、生徒の脳を行ったり来たりしているのが見て分かる。


あるところでは、『これで終わりなわけないよな?』と言う声がし、またあるところでは、『学園長ももふざけてんのか?』と怒りの声がしている。


そして隣にいるニールも、


「な、なんだか凄く適当な先生ですね。」とあきれている。


入学の時から思ってたんだけど、意外とあの学園長は濃い人なのかもしれない。


そんなわけで、学園長の話が終わった俺たちはそれぞれ次の授業をする部屋へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして時は過ぎ、放課後。


「あのさあ......まだヴァルだけだったら分かるんだけど、いや分からないけど、どうして君がいるのかな、ニール?」


「ヴァ、ヴァルちゃんが良かったら、私も良いかなって」


そう言ってニールは俺の左腕に抱き着いている。


「ニール?なんで君がいるの?これ以上邪魔しないでって言ったよね?」


そして、右腕にはいつも通りヴァルが抱き着いている。


おかしい。ヴァルがなのもおかしいんだけど、それよりもニールまでもがヴァルに汚染され始めている。


ニールは俺たちと会った当初、「こ、これがスキンシップというやつなんですね......」と、俺たちを見て目を輝かせていた。


彼女自身、あまり人とのコミュニケーションが得意では無いため、あの過度なヴァルと俺のスキンシップを見て、良くない知識の付け方をしたのだろう。


すまない、ニール。俺は、いや、俺たちは、純粋なニールの心を穢してしまったよ。


でも、よく考えたら俺は悪くないよね。ヴァルが勝手にやってることだし。俺、反抗すると殺されるかもしれないし。ニール、責めるならヴァルを責めてくれ。


ハンスはヴァルエイドの馬車に乗りながらそんなことを考えていたが、その間もニールとヴァルの攻防は続いていた。


しかし、ヴァルエイドの一言で馬車内は一時的に静かになった。


「というか、そんなことよりも、『学園クラス対抗戦』。あれ、聞くところによると、ペアで出場するみたいだよ?」


「じゃ、じゃあ、クラス同じだし、私とハンス君で組もうよ。」


「何馬鹿なこと言ってんの?クラス違うからって別にペアになれない訳じゃないでしょ!勝手にペア組もうとしないでくれない?」


「だ、だって、ヴァルちゃんは2クラスだけど、私とハンス君は1クラスで、それに、私たちが1クラスに居るってことは、ヴァルちゃんよりも”才能”あるってことだし、ヴァルちゃんじゃ、ハンス君とは釣り合わないと思......」


「あ?『釣り合わない』だ?誰に向かって口きいてんの?少しは立場わきまえなよ。ハンスと僕は一心同体なの。だから、クラスが違くても、才能の差があったとしても、僕たちにかなうペアは居ないの。ね?ハンス。」


「......ああ、そうだよ。そうだとも。その通りです......」


俺はニールに助けを求めるように目を向けてそう言ったが、ニールは顔をぷくっと頬を膨らませた後、プイっとそっぽを向いてしまった。俺は天使に見放されたらしい。


「じゃ、じゃあ、私とヴァルちゃん。どっちがハンス君と組むのか、勝負しようよ。」


「いいよ。結果は分かり切ってるからね。で?何で勝負するの?僕は何でもいいよ?どうせ君よりも僕の方が優れているのだから。」


「じゃ、じゃあ、私が明日までに、勝負の内容考えて来るから。明日になって、『勝負なんか知らない』なんて言わないでね。」


「もちろん言わないとも。せいぜい自分に有利な勝負を考えて来るんだね。」


両者とも俺を挟んでバチバチと目を合わせている。


いやまあ、俺はどっちでもいいんだけどね、でもさあ、本当にペアでやることになってるかどうかも分からないのに、こんな勝負をするのは無駄じゃないかな。


「あの......」


「ハンスは黙ってて。」「ハンス君は黙ってて。」


「はい......」


声をそろえて『黙れ』だなんて...ひどい。


まあ、いつも通り明日にはまた仲良くしててくれればそれでいいや。


もうこいつらに首を突っ込むのはやめよう。俺が疲れるだけだ。


その後、ハンスは馬車の中でニールとヴァルエイドの言い合いに耳を塞ぎながら家まで帰った。

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