第7話 影響

その頃、魔法学園では...


「学園長。現状の魔物の増殖をどうにかしない限り、我々の学園にまで被害が及ぶと思われます。早急な対応をお願い致します。」


女は深刻そうな顔で話した。


そして男は考え事をしながら返す。


「ああ...分かっているよ。昨日から、国への魔物駆除要請を提出しようとしているんだが、国側が受け付けてくれなくてね。国のお偉いさん方は自分の領地の防衛にしか興味がないらしい。全く...使えない奴らは皆消えてしまえば良いのにと、何度思ったことか。ねえ?メディ。」


机の上に置いてある本を指でなぞりながら女は話す。


「学園長。国が当てにならないのは昔からのことです。今は私たちが先頭に立って問題を解決するべきだと、私は思います。現に今行われている魔法学園の生徒による魔物の駆除は順調に進んでおりますし、このままいけば、国を頼らなくとも私たちだけでどうにかできると思います。」


「そうだねメディ。でもね、そんなにうまく事が運ぶことなんて滅多に無いんだ。君も知っているだろう?メディ。王の死、あれは間違いなく異常だよ。ここ数百年間で彼に何かの動きがあったという研究報告は無い。しかしねえ、急に王の生命反応が無くなったかと思ったら、亡骸すら見つからないなんて...一級の冒険者であるミスリルが手違いで殺した、なんてことも無いだろうし。そもそも、ミスリルが相手して勝てる相手かどうかも分からないだろう。どう考えても異常なんだ。あと、異常は異常を運んでくるからね、ここで異常が終わりなんてことはないと思うんだ。そうだろう?メディ。」


「その通りです、学園長。王の死による魔物の活発化が正にそれでしょう。これ以上、事態を悪化させるわけにはいきません。魔物の異常な行動の抑制、鎮圧、排除を目的とした専門機関の設立を進めてはいかかでしょうか。」


「いい案だね、メディ。専門機関設立に伴い、王の行方と今までの研究報告をまとめ、僕に報告してくれるかい?」


「分かりました。」


「ところで、王の研究をしていたグラス君は今何をしてるんだい?」


「その...寝こんでいると生徒から聞きました。何せ研究対象が居なくなった今、彼は仕事がなく、これから先も仕事が無いのではないのかと心配になっているそうです。彼にはショックが大きかったみたいですね。」


「そうか...まあすぐに立ち直ってくれるとありがたいんだけど。彼には専門機関のリーダーとして任命しようと思っていてねえ...」


「その点に関しては私が何とかしておきます。学園長は教師陣と生徒をまとめることだけに集中していてください。これ以上学園の混乱が長引くと、私の仕事が増えるんです。それだけはどうにか勘弁を...」


「前からメディには迷惑をかけているし、その点は僕が何とかしよう。安心してくれたまえ。」


「学園長はいつも口ばっかりじゃないですか...」


「ん?何か言ったかい?」


「いえ、何も..」


あきれた表情で女はため息をついた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「学園の入学が延期!?」


突然手紙が届いたんだと母が言った。


「そうなのよ。魔物がどうとかこうとかで学園が大変なことになってるみたいなの」


「そっかー...」


また暇になるのかと俺はため息をつく。


ただ暇を持て余した俺にはやるべきことがある。


「それじゃあ俺は遊んでくるーー!」


「気を付けて行ってらっしゃーい!」


そう、遊びと称した修行だ。


見つけたスライムを狩っては分解、狩っては分解。


そうそう、化粧水以外にも何かになるのかと思って分解しまくった結果、魔力回復薬として使えることが分かった。


使い方は簡単。塗ってもよし、飲んでもよし。でも、あんまり飲むのはお勧めしない。なんていうか、この世のまずい食べ物を全部混ぜてドロドロにしました、みたいな味がするからだ。回復量は飲んだ方が多い気がするけど、所詮気がする程度だ。まずい食べ物を食べるか、塗るだけかなら、圧倒的に塗る方がいいと思う。


そしてこれを持ち歩いていれば、この間みたいに戦闘中に魔力切れで倒れるなんてことも無くなる。


そして、いちばん肝心なこと。


修行の成果なんだけど、結構多い。


魔法は初級魔法しか使えなかったのが、ちょっとした上級魔法なら一、二発撃てることができるようになった。これもすべて、修行の賜物だろう。


しかし、スライムしか狩らない俺からすれば、上級魔法なんてなんの役にも立たない。


「ファイア~ファイア~ファイア~」


走りながらそこら中にいるスライムを燃やしていく。


「愉快だなあ。愉快愉快!ハハハ!」


あと、俺の生活は限界だった。


暇すぎてやることが無くなった俺は、ほとんど壊れかけていたのだ。


「今日はこれくらいかなー...」


辺り一面を狩りつくしてしまうと、スライムは怖がって出てこなくなってしまうため、狩ったスライムを持てるだけ持って帰った。


そんな生活が三か月くらいたったある日、修行が終わり家に帰ると母に言われた。


「ハンス!メディエルさん家から手紙が来てるわよ!」


まじ?

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