第1話 お隣さん

 それは囚われてから三年目の出来事だった、どうやら新しい囚人が入ってきたようだ。

 別にこれが初めてって訳じゃない、今までにも何度か出入りはあったが特に気に留めなかった。

 それは俺の居る位置からは見ることが出来なく、ここまで搬送されることもなかったからだ。

 しかし今回は様子が違っていた、足音が徐々に近づいて来るのが分かる。

 他のところが満員になったからなのか、それともやらかした犯罪で区別しているのかはわからないが。

 これでようやくお隣さんが出来る!

 今までなぜか俺の周りだけ誰も居ないことが気がかりでした、飯を運んでくる監視員に聞いても無視されるから諦めるしかなかった。

 しかし、お隣さんがこれば外のことを色々聞けるチャーンス!

 なんせ生まれ変わってから一度も外を見ていない籠の鳥なんで(笑)

 隣人と仲良く出来るのかな・・・おっかないおっさんだったらどうしよ・・・。

 でも、ここで勇気を出さなきゃ始まらない!

 「そう、その為にも予行練習だ」(ボケ役)

 再び俺の脳内にボケ役のもう一人の俺が出てきた。

 「いきなり出てくるね」(ツッコミ役)

 「だって、これは一大事なんだからな!」(ボケ役)

 「一大事って・・・」(ツッコミ役)

 「一大事でしょ!これで失敗すればこれから先ずーと気まずい状態が続くんだぞ」(ボケ役)

 「ずーとって大げさだ」(ツッコミ役)

 「でも、可能性は無くもないでしょ?」(ボケ役)

 「まー、そうだな」(ツッコミ役)

 「じゃー、始めるぞ!まず外見はね、スキンヘッドに顔に傷の2メートルを超える大男が・・・」(ボケ役)

 「ちょちょちょ、待って!何その設定はちょっとハードル高過ぎない?」(ツッコミ役)

 「これぐらいの方が心の準備ができるでしょ?」(ボケ役)

 「まー、そうかもしれないが・・・」(ツッコミ役)

 「さー、続きを」(ボケ役)

 「よ、よー新入り お前は何してここへきたんだい?」(ツッコミ役)

 「俺かい、俺はな歩いているとこに肩をぶつけやがった奴を捻り潰してから睨みつけていた野次馬を片っ端から潰してたらこうなったのさ」(ボケ役)

「・・・そ、そうなのか・・・」(ツッコミ役)

「んで、兄ちゃんは何をしてきだんだい?」(ボケ役)

 「えっ、俺か!・・・実は覚えてなくて・・・」(ツッコミ役)

 「はい、アウトー」(ボケ役)

 「え!なんでだ」(ツッコミ役)

 「相手の過去を聞いといて自分は語らないなんてダメに決まっているだろ!」(ボケ役)

 「いや、だって〜」(ツッコミ役)

 「だっても政宗も無い!」(ボケ役)

 「いや・・・政宗は関係ないだろ」(ツッコミ役)

 「いいか、相手の過去を聞いていいのは聞かれる覚悟のあるやつだけさ!(キリッ)」(ボケ役)

 「言いたい事は分かるが、どうしろっと言うんだ!実際に何をやらかしてここにいるのか分からないのに・・・」(ツッコミ役)

 「それはあれだ、でっち上げればいい」(ボケ役)

 「嘘をつけってこと?」(ツッコミ役)

 「大丈夫、もう罪人だんだから嘘をついても平気さ!」(ボケ役)

 「いや、俺はまだ何もやっていない」(ツッコミ役)

 「ああ、そんな事やってたらもう囚人が来てしまったではないか!」(ボケ役)

 「えっ、もう・・・まだ心の準備が・・・」(ツッコミ役)

 「んじゃ、あとは頑張って」(ボケ役)

 そう言ってボケ役の俺は姿を消した。

 仕方がない、ぶつけ本番でやるしかない!

 あの設定のお兄さんが出ないことを祈りながら、いざご対面。

 

 入ってきた囚人を見て息を呑んだ、目が食い付になった。

 その真っ赤な髪に赤い瞳、その内側に僅かに見える金色の筋、頭には赤い角と赤い鱗で覆われた尻尾がついた小柄な女の子。

 初めて自分が異世界へ飛ばされたことを実感できた瞬間だった。

 目の前に現れた囚人は異種族でドラゴン!そして可愛い!

 服装は囚人らしいと言えばらしいが・・・あんな可愛い子にその服装はむしろエロイ。

 「目が食い付になったもんね〜」(ボケ役)

 「ちっ、違う!決してやましい目で見ていた訳じゃない!」(ツッコミ役)

 いや、少しは邪な心はあったかもしれない・・・ボロい布に頭と尻尾を通す穴を開け羽織っただけの服装だぞ!

 腰にはベルトのように縄で縛っていても横から見れば普通に見えそうになるだろ!ほら色々と。

 幸いにバンツは履いてた。

 「そこは見逃さなかったんだね(笑)」(ボケ役)

 「う、うるさい!」(ツッコミ役)

 そして彼女は俺の正面の檻に入れられた、監視員が立ち去るのを見送った彼女は次に俺を見つめる。

 とりあえず手を振って挨拶を試みたが、何も起きず彼女は背中を向けて地面で寝そべった。

 どうやらファーストコンタクトは失敗に終わった・・・なぜだろう?

 「どうせ鼻の下を伸ばしていたからじゃないの?」(ボケ役)

 「いや、まさか・・・そんなはずは」(ツッコミ役)

 「気持ちは分かるよこのロリコン」(ボケ役)

 「ちょっと待ていつから俺がロリコンになったんだ!」(ツッコミ役)

 「えっ?今からだけど?」(ボケ役)

 「聞き捨てにはならんな、確かにあの子の印象に食い付になったがそれでロリコンの認定は認めないぞ!」(ツッコミ役)

 「いや〜こう言う小さな積み重ねで少女を愛でるようになるんだよ」(ボケ役)

 「まだ何も積み重ねていない気がするが?」(ツッコミ役)

 「でも、蕾は芽吹いたはずだ」(ボケ役)

 ※「称号ロリコンを獲得」

 「ほら、天の声さんもお認めになったぞ(笑)」(ボケ役)

 「お前ら二人して俺をいじって楽しいか!」(ツッコミ役)

 「何言っているの?楽しいに決まっているんじゃないか(真顔)」(ボケ役)

 ※「フフ・・・二人漫才のスキルレベルが9になりました・・・」

 「えっ?今、笑ったよね!天の声さん笑ったよね!」(ツッコミ役)

 ・・・・・・・・・・

 それにしても、あの子は何をして捕まったのかな・・・。

 イメージではお腹が空いてパンなどを盗んだところかな・・・

 この世界の事を何も知らないから俺の知る犯罪を当てはめる事しかできないが、果たしてそれでいいのか・・・ 

 まー、考えても始まらないので気持ちを取り直してお隣さんへのアプローチを頑張るだけだ。

 「ロリコンの称号にかけて」(ボケ役)

 ・・・・ 






 

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