第4話 理解者からの助言

 4日後、エンジェルはやっと家から出ることを許された。

 3日間も学校に行くことが許されず、部屋にずっと閉じ込められている状態だった。

 その間、エンジェルはずっとウルの事を想っていた。

 お父さんはどうしてあんな事をしたのかな…。

 学校に行っても窓の外を眺めて考え事をしてしまう。

「ちょっと、ホントに大丈夫なの!?さっきから険悪なオーラしか流れてこないんだけど、ホントに風邪だったの?」

 蜜柑を想起させるような淡いオレンジ色の髪をなびかせながら、メアリーはエンジェルの顔を覗き込む。

 彼女とは幼い頃からの付き合いで、エンジェルの良き理解者でもある。

「…メアリー、私どうすればいいのかわからなくて…。」

 エンジェルの少し潤んだ瞳を見たメアリーは、ぽんっと背中を叩いて、

「まずは落ち着いて、そしたら、ゆっくりでいいから聞かせて」

と言った。

 エンジェルはメアリーに全てを話した。

 森で動物の耳と尻尾を持つ不思議な青年に出会ったこと…。

 彼と過ごす時間は楽しくて、とても幸福な時間だったこと…。

 彼のことを父に話したら、豹変して3日間も家から出してもらえなかったこと…。

 途中、エンジェルの瞳から大粒の涙が流れたが、それでも構わずに続けた。

 メアリーは時々頷きながら、エンジェルの話しを肯定も否定もせず、静かに聞いてくれた。

「…そっかぁ、、」

 エンジェルの話しを一通り聞き終わったメアリーは、大きく息を吸い込みながら何か考えるようにして言った。

 そして、立ち上がったメアリーは大きな伸びをしながら「なるほどねぇ」とエンジェルの方を振り向いた。

「ねぇ、エンジェル。エンジェルはどうしたいの?」

「…!」

 エンジェルはメアリーの質問にハッとさせられた。

 私は…、自分でどうしたいんだろう…。

 私は……

「私は、ウルに会いたい。そして、ウルとお父さんの間に何があったのか知りたい!」

 エンジェルの青金石せいきんせきの瞳が、夕日を浴びて優しく光る。

 それを見たメアリーはニカッと笑った。

「やりたいことが決まってるなら、実践しなきゃ損だよ!」

 そして、気合を入れるようにエンジェルの背中をバシッと叩いた。

 つられて、エンジェルも久しぶりに笑った。

「うん!私、もう一度、頑張ってみる!」

  エンジェルにとってメアリーはかけがえのない存在だ。

 だから、相談できて本当に良かったと思った。

 そして、2人は森の前で手を振って別れた。

 また明日、会う約束をして。


 帰り道、いつもの草陰に差し掛かった時、エンジェルの胸はキュッと締め付けられた。

 本当なら今すぐにでも、この高草を越えてウルに会いに行きたかった。

 でも、今はまだ行けない…。

 もう一度、お父さんと話さないと…。

 大丈夫、お父さんもきっとわかってくれるはず…。

 エンジェルはカディーガンを胸のあたりでギュッと握り締めると、振り返らずに家への道のりを急いだ。

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