第112話 ロイヤルな親友

教室に戻ると、

殿下がアイコンタクトを取ってきた。


『ちょっとこっちに来い。』


そう言っている目である。

そしてなんだかモジモジと目を泳がせている。


あーたぶんこれは……


「おい、その、今年もあれだ。

聖なる日が近づいているから。

おまえの商品をカレン嬢に渡したい。

カレン嬢が好きそうなものを見繕って欲しい。」


あ、やっぱりね!


「はいはい、毎度ありがとうございます。」


「はいはいっておまえな。周りに人がいる時はちゃんとしろよ…不敬罪だと言われても知らないぞ!そしたらこうして一生話も出来なくなるんだぞ!」


最近では仲良くなりすぎて、

王子だかなんだか知らないが、顔に似合わずぶっきらぼうなアルバート殿下とは素を出せる仲になっていた。


「わかりましたよ!とりあえず、カレン様の好みならお任せ下さい!あっ…今年のメッセージカードはちゃんと気の利いたこと書くんですよー?ひと言"楽しい時間を過ごせ"じゃ先に進まないんですからねー?」


「うっ……おい、なぜそれを知っている。

わかっている、少しは進歩しているんだ。

今年はちゃんとする。」


女子トークというのは、

筒抜けなのですよ、純粋無垢王子。


―――それにしても…


そっかぁ〜。

カレン様と殿下、ミラ様とお兄様。

この数年で恋のキューピットをしたのは2組。


『わたしもいつか好きな人ができたりするのかなぁ?』


いまのところまったくそんな気配がないが

(こんなにかわいいのになんでだろう?)

少し憧れるようになってきた。


『わたしの周りに顔面偏差値高すぎる男子がいすぎて、訳が分からなくなって来ている可能性があるな…』


まぁ、いまはとにかく

美容アイテムや健康グッズの開発、

レシピ作りや学園生活で充実してるし!

夢はスローライフなのだから忘れよう!


そうなると…

わたしも家族と屋敷のみんなと、

お友達へのプレゼントを準備せねば。


『あ、オリバー様にもなんかお菓子を贈ろうっと…』


まだまだ恋の予兆はないわたしであった。

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