第106話 お兄様の誕生日(妹の心配)
―――さてさて。
今年もやってきましたお兄様の誕生日が!
わたしの誕生日パーティーを皮切りに、
今日のお兄様の誕生日パーティーでも
ゲストをお招きすることになっている。
わたしももちろん妹として皆さんをお迎えしたり、ご挨拶をしたり、お祝いをするわけだが……
だが、しかしだ。
今日はわたしにとって非常に大事な日である。
なぜなら、
お兄様の隠れ婚約者候補も何人か来るからなのだ!
『くぅぅぅ〜!覚悟はしていたけど、とうとうこの時がやってきてしまったか。』
まだ隠れ婚約者候補なので決まった訳では無いが、お兄様と歳も近く家柄も申し分ないと思われるご令嬢方がやってくることになっている…
(ぜひうちの娘を!の手紙も殺到中。)
パーティーでそれとなく全員とお話しながら
「うん、やりとりしてみてもいいかも」というご令嬢をピックアップするのだ。
大のブラコンであるこのわたしは落ち着いていられなかった。
『おかげさまで4時に目覚めたよ……』
まぁ、どちらにせよパーティー料理を作るから早起きできてよかったのだけど。
―――ちなみに、
当の本人であるお兄様は
お父様のお手伝いや生徒会も忙しく、
まだ婚約者どうのこうのを考える余裕がなさそうだ。
それでも動いていかなければならないのだから、次期当主というのは大変なものだ…
『推しが離れていく…………』
近頃のお兄様といえば、16歳を迎えるだけあって背もスラリと伸び、益々お父様に似てイケメンに磨きがかかっている。
どこからどう見ても同年代の中で飛び抜けて美丈夫だと思うからこそ、
顔だけでなくお兄様の真面目で優しい中身に魅力を感じてくれるひとが婚約者候補になってほしいのだ。
『加えて言えば、あの頑張り屋さんすぎるお兄様を支えてくれるような芯があるひとで、美人で天使のようで健気で思いやりがあって、健康に気を使ってくれてたまには甘いものを……』
―――どうしよう、止まらない。
決して小姑になりたい訳では無いんですけどね?これは妹心というやつで…
理想のお嫁さんを想像しながら生クリームをカシャカシャかきまぜていたら、
いつの間にか立派なホイップクリームが出来上がっていた。
心無しかいつもに増して
料理全体に気合いが入っている気がする。
『とにかくいまは、お兄様の大好物を大量生産することに集中集中!』
わたしは一旦余計な事を考えるのをやめ、
心配をかき消すように
ひらすら料理を作りまくった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます