第91話 【番外編:夏の女神祭の噂(旅人A)】

―――ガヤガヤ…


私は世界中を旅する商人。

冒険者もしながら、世界中の珍しいものを手に入れては販売をし、なかなかに儲かっている。


それもあってか、最近では商売と言うよりも、世界各国の目新しいものを探すことがメインになってきていた。


今は数週間ほど、この大陸で2番目に大きい、セントラル王国に滞在している。


今日の"夏の女神祭"では、

多くの商人も集まるため、この国にしかない、珍しいものも多数出店されると聞いていたが…


『こ、これは一体なんなんだ…!』


たまたま人だかりを見つけ、

そこで売られている"アイスクリーム"という冷たい菓子を買ってみたのだが。


……うまい!うますぎる!

日差しの暑い今日のような日には

まさにぴったりではないか。


噴水の周りにも、同じくアイスクリームに舌鼓をうっている人々がいる。


『だれかどうやってつくっているんだ…』


食べたことの無い新しい菓子に興奮していると、通りすがりにいろいろな噂が聞こえてきた。


「このアイスクリームも最高だわ!やっぱりひきこもり令嬢様は天才よ!」


「噂には聞いていたけど、まさかあんなにお綺麗だなんて!同じ人間とは思えない輝きだったわね…美容アイテム、売り切れで残念…」


「これ、ワトソン伯爵家のニコル様がお考えになっているんだろう?商人ギルドにたくさんレシピが売られているけど、あれもニコル様が開発されたそうだ。」


「さっきお聞きしたら、このアイスクリームも近々レシピを販売すると仰っていたわ!」


ワトソン伯爵令嬢…ニコル様…

まさかあの一際光り輝いていた麗しいご令嬢の事だろうか?


『お貴族様のご令嬢がまさか、な。』


しかし商人ギルドにレシピが売られているだと!?

これを独占すれば大金が手に入るというのに。良心的すぎる。


しかもこのアイスクリーム以外にもレシピがあるというのは本当なのだろうか。

それに美容アイテムとは一体?



―――その後、

好奇心という名の商人魂が揺さぶられた私は

すぐに王都の商人ギルドに向かい…

すべてのレシピを買った。

(ついでに美容アイテムもいくつか買った)


『こんなに素晴らしいものに出会えるとは』


これだから冒険者も商人もやめられない。

久しぶりに胸が高なった私は

この国がすっかり気に入ってしまい…


滞在期間を伸ばすことになったのだった。

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