第90話 おじいさんコンビの大活躍
―――あれから数時間。
「…いかにも!そうです。こちらはワトソン伯爵領で採れたレモンといちごとお芋を使っておりますぞ。おや、バニラと迷われていますか。ほっほっほっ…」
「…かしこまりました。こちらの夏のパーフェクトセットを3つでございますね。
はい。実際にこちらのお嬢様が開発され、使用もされております。」
癒しのおじいさんコンビ(庭師と老執事)を売り子にしてみた結果…
作戦は大成功していた。
『うちのおじいさんたちすごいよ!
爆売れだよ~!列がすごいよ~!』
あの後、売り子を交代して数分後。
わたしたちは後ろに下がり
おじいさんコンビにニコニコ立ってもらっていたのだが。
周りで様子見をしていたひとたちが、
ここぞとばかりに買いに来てくれたのだ。
しかもおじいさんコンビは
普段からわたしのプレゼンを聞かされているからか、商品説明やオススメまでこなしている。
『優秀すぎる…』
おかげさまで、
たくさん用意していた美容アイテムもアイスクリームも残りわずかとなり、
お昼すぎには完売しそうだ。
―――そして、
自発光チームに関しては。
「あ、あの…黒の騎士様は、どのアイスクリームのお味がオススメですか?全部買います!」
「銀の騎士様…!この美容クリームのフタにサインをください!」
「まさかこんなところでひきこもり令嬢シリーズ開発者のニコル様にお目にかかれるだなんて!感動ですわ!ファンですの!」
「マ、マリア様とニナ様と仰るのですか。ぼ、ぼぼぼ僕も石鹸を2つ下さい。記念に握手を…していただいても?」
おじいさんをワンクッションにすることで話しかけやすくなったのだろうか。
いつの間にか購入者限定のサイン&握手会イベントのようになっていた。
―――それにしても…
この夏の女神祭に出店して本当によかったと思う。
いつも以上に王都は賑わっているし、
あちこちから音楽隊による演奏も聞こえ、
楽しそうに踊っている人たちもいる。
食べ物、手作りの雑貨、本、アート、服、魔道具、薬草、食材、魔石、冒険グッズなど…
様々な屋台が立ち並び
夏の暑さも吹き飛びそうな程の活気だ!
子供たちはどこかで買ってもらったのだろう。
花冠をしたかわいい女の子や、
シャボン玉で遊ぶ男の子たちが走り回っている。
おや、噴水のところには…
いちごのアイスクリームをお母さんに食べさせてもらって「つめたい!おいちい!もっと!」と喜んでいる子もいた。
『いい国だな…本当に。』
わたしは改めてそう思った。
商品が売り切れたら、みんなにも自由な時間をあげよう。
とは言っても、騎士ズは交代でわたしのお守りなんだけどね!
それでも、
こんなに平和で素晴らしい日を、
みんなにもゆっくり楽しんで欲しくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます