第89話 夏の女神祭当日
―――そしてあっという間に時は過ぎ。
ついに夏の女神祭当日がきた!
のだが…
『ぜんっぜん、商品が売れない……』
わたしは屋台の前で愕然としていた。
朝から広場にはたくさんの人が行き交っているというのに。
屋台の前には人だかりも出来ているのに。
何故か未だに商品を買いに来る人はいない。
『何故!!』
落ち込みすぎて棒立ちになっていると、
通りすがりの子供がこちらを指さして
母親のワンピースをクイクイしていた。
「わー!ママ見てー!あそこのお姉ちゃんも、となりのひとも、きらきら光ってるよ~!」
「ほんとだ!母ちゃん!もしかしてほんものの女神様かなぁ?」
「コラ!指をささないのっ。でもほんとだねぇ!きらきら綺麗な方たちだねぇ。」
―――ん?光ってる?
そう疑問に思ったのもつかの間。
ついでに、若いおなご達の声も聞こえてくる。
「きゃ!あそこの騎士様たち、レベル違いに素敵じゃない?声掛けに行ってみる?」
「さすがに無謀よ!近づけないって!それにあの人たちの視界に入る勇気ないわよ~。」
―――んん?
騎士様たち?レベル違い?
……あ!あ~!
なるほど…そういうことですか。
忘れてましたよ!
目の前にたくさん人はいるしチラチラと商品も見ているのに、なんで誰も近づいてこないのかと不思議だったけど…
これワトソン伯爵勢の容姿が邪魔してたのか!
買いたくても近寄れなかったんだね。
眩しすぎて営業妨害になる容姿…
おそろしすぎる。
『いやー…それにしてもどうしようかな。
美容アイテムの売り子はわたしとマリアでやって、アイスクリームは騎士ズにお願いしてたのに…』
人員配置をこんな理由でミスるとは思いもしなかったわたしは頭を抱えた。
『あとは…袋詰め係で控えてくれてるのは、庭師と老執事のおじいさんコンビさんか…』
ふとそれを思い出して、2人を見つめる。
じーーーーーーーっ…。
おや。おやおや?
もしかして、もしかしなくとも。
めちゃくちゃ近づきやすいんじゃないか?
(失礼)
どう考えてもマイナスイオンたっぷりな
かわいい癒しのおじいさんコンビだし、
物腰も柔らかでお話するのも上手だし…
わたしたちは客寄せと商品説明と袋詰め係として半歩後ろに控えるとして、
メインの売り子はこの2人にやってもらったほうがいいのかも。
わたしはイチかバチか、
このひらめきを実行することにした。
『いざ!癒しのじいさん作戦開始!』
すぐさま2人の元へ行き、
配置替えについて指示を出す。
2人はさすがベテランであった。
要領もよくすぐに了承し、
呼び込みを開始してくれた。
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