第92話 【番外編:夏の女神祭(護衛騎士ズ)】

―――夏の女神祭も夕方に差しかかる頃。


主人であるニコルの出店の手伝いと片付けが終わった護衛騎士3人組は、

ニコルの護衛の順番を巡って小競り合いになっていた。


何故そこまで発展してしまったかといえば、

10分前の出来事がきっかけである。


今日は女神祭ということもあってか、

ニコルが配慮をしてくれたのだろう。


護衛騎士たちは「ひとりずつ護衛を交代してくれればいいわ!みんなにもせっかくだから楽しんで欲しいの。」と言われてしまったのだ。


てっきりいつも通り全員で護衛すると思っていた騎士3人は、

急に「祭での1対1の護衛チャンスイベント」が発生したことにより、自我が暴走してしまったのだ。


正直ずっとニコルの護衛をしていたい3人は、

「自分が護衛をするから、他は祭でも見に行っていろ。」とお互いに邪険にし合い、

このような小競り合いが起きたのだった。



―――そんなこんなで、

現在はこんな状況である。


「ちっ…こうなったらもう、ジャンケンで決めるぞ。」


「ったく、しょうがないなぁ。恨みっこなしだぞ?」


「うん、私もそれでいいわよ。」



「「「最初はグー!ジャンケン、ポイ!!!」」」


………………。


「うわぁぁぁ~!30分だけかよぉぉ…」


「え、私もたったの1時間だけ…?」


「ふん、だいたい私が筆頭護衛騎士なのだから元々私ひとりで充分だと言っただろ。」


この戦いで勝利を収めたのはカイ、

その次にニナ、

負けたのはロンであった。


ロンは"たったの30分間の護衛"となってしまい、いまにも泣きそうである。


「せっかくニコル様と祭をまわれるチャンスだっていうのに…30分なんて少なすぎるだろう…!」


「まぁ、気持ちは分かるわよ。私だってたったの1時間なんだからさ。はぁ…」


ニナはロンの背中を叩き慰めながらも、

自身の護衛時間も少ないのでがっくりと肩を落とす。


その中でただひとり、その後の護衛をまるっと請け負えることになったカイだけは

クールなポーカーフェイスも用をなさないほど、勝ち誇った表情をしていた。


しかし、これしきのことで

負けた護衛騎士の主人愛が収まる訳もなく。


「でも……やっぱりずるいぞ!こんなのはひどすぎる!ニコル様といろんな出店をまわったり夜のライトアップも楽しみたい!」


「そんなこと言ったら私だって同じよ!おいしそうに串焼きを頬張っているところだって見たいし、かわいい雑貨を一緒に見たいわよ。」


「お前ら……騎士に二言は無いんじゃないのか?」



―――結局、

その後ジャンケンは3回勝負となり…


最終的にそれをもってしても全ての結果に満足がいかなかった騎士たちは、

「いつもどおり全員で護衛につきたい」とニコルに申し出ることにしたのであった。



3人にはぜひ、"使命は護衛"であることを

改めて思い出していただきたい。

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