第76話 新年早々、大騒動 2
「「ライラ様。妹(お嬢様)のためにも、はやく確認をさせてください。」」
しばらく押し引きの格闘を繰り広げていると
痺れを切らしたお兄様とカイが間を割ってくれた。
すると…
2人の眩しさに目をくらませたライラ様が
油断したのか手をすべらせた。
―――ガシャン!バラバラバラ…
商品が転げ落ちたのと同時に、
ライラ様の袖から
一緒になにかのビンも落ちてきて割れた。
「キャー!!虫だわ!大量の黒い虫~!」
「キャッ…本当だわ!イヤ~!」
「あれ…でも、これ…なんだか質感が…」
落ちた商品の横に転がった
見慣れないもうひとつのビン。
そのビンの周りには、大量の黒い虫が散らばっているように見える。
しかしたしかに、
町娘のひとりが言うように
なんだか質感がプルプルしている気がする。
『えー、でもわたしゴキ○リ系の見た目の虫だけはダメなんだよなぁ~!
確認したいけど…うー!きもちわるい!』
そう怯んでいると、隣にいたカイが
サッとその場に屈み、虫らしきものをつまみ上げた。
「…む。これは…
虫では…無いですね。作り物かと。」
「「「「え…?」」」」
するとお兄様もそれを手に取り、
じっくりと観察し始める。
「うん、たしかに。これは偽物だね。
驚かす用のおもちゃの虫だよ。」
「「「「にせもの…?」」」」
わたしを含め町娘たちも、
カイとお兄様の言葉を聞いてギョッとした。
―――ということは…
「な!なによ!!!こ、こんなゴム製のゴキ○リなんて知らないわよ!」
みんなの咎めるような視線を浴びて
真っ青な顔をしているライラ様は、
焦りすぎたのかとうとう自ら口をすべらせた。
「あら、ゴム製でしたのね、コレ。
そうでしたか、ライラ様はご存知ない…と。
では、誰かの悪質なイタズラでしょうか?」
わたしが満面の笑みで近づくと
ライラ様は「ひっ…」と後退りをする。
「まさか侯爵令嬢のライラ様がこのようなイタズラをされるわけ無いですものね!
それにしてもライラ様がそのイタズラに遭遇されてしまうだなんて、本当に申し訳ないことをいたしましたわ!」
「ライラ様、ご安心ください。
妹へのつまらない、醜い、常識のない、人間なのかも疑うような虫以下の嫉妬により、どなたかが仕出かしてしまったのでしょう。」
「その者は見つけ次第、我々の方でひねり潰す所存です。」
わたしとお兄様とカイは、さらにキラキラしく微笑むと、ライラ様を角に追い詰めた。
ライラ様はパニックになったのだろう。
「目がつぶれてしまうわ~!」と叫びながら
逃げるようにして店の外に出ていった。
―――その後…
このひと騒動によりご迷惑をかけたお客様には美容パックをお詫びにプレゼントし、
事態を最小限に収め、事なきを経た。
ただし、「金髪縦ロールのド派手令嬢が商品にイチャモンをつけ、店内で喚き散らかしていた」という、
ライラ様にとって恥ずかしい噂は町中に広まってしまうのであった。
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