第67話 父と娘のダンス

王家や公爵家の方々のダンスは、

優雅でウットリする程素晴らしかった。


『さていよいよわたしたちの番だ…!』


侯爵家の方が先導して輪に入り踊り始める。

あれは、侯爵家のご令嬢かな?


ボリューミーな金髪縦ロールをブンブンなびかせ、全身真っ赤っかコーデでとても目立っていた。


そしてなぜかとても…

噛みつかれそうな勢いで睨まれている気がする!どうして!


少々その圧に圧倒されたものの…

すぐに天にも昇る気持ちに変わった。


「ニコ、ダンスを…」


あまりにも美しすぎるお父様が、

目の前で胸に手を当てて軽く頭を下げ、

ダンスの挨拶のポーズをとったのだ。


『だれか…!写真を撮って、お願い!』


わたしは興奮する気持ちを抑えながらも

それに応え、膝を折って軽く腰を落とすと、お父様の手を取った。


そこからはもう、天国である。


―――•*¨*•.¸¸♬︎•*¨*•.¸¸♬︎•*¨*•.¸¸♬︎•*


お父様のリードは完璧だった。

おかげでわたしがミスしそうになっても、

上手にカバーしてもらえて、

傍から見れば何も問題ないだろう。


『なにこれ!たのしすぎる…!』


周囲など目に入らず、

ひたすら大好きなお父様とのダンスに夢中になった。



―――その後…


ダンスを終えひと息ついていたら、

自慢のご子息を連れたいくつかのご家族に囲まれていた。


『お!挨拶タイムか?

ついに未来のおともだち候補が?』


そう思ったのもつかの間、

「む、娘はまだ体調が万全ではございませんので!これで!!」


お父様が間髪入れずにそう告げ、

なぜか足早に帰ることになり…


せっかくのデビュタントは最後まで楽しめずに終わった。

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