第66話 お城の大広間

―――会場である城の大広間に到着すると、

あまりの大きさと豪華さに圧倒された。


「うわぁ~…!」


それはそれは開放感のある高い吹き抜けに、

見たこともない大きなシャンデリア、

いくつものテーブルにはたくさんのご馳走が並び、シャンパンやジュースを運ぶお手伝いさんたちが行き交っている。


その高貴な雰囲気に、思わず背筋も伸びる。

『優雅に優雅に…』

マナーレッスンで受けた"淑女の佇まい方"を思い出してシャンとする。


会場には、同じく今年デビュタントを迎える他のご子息ご令嬢たちも、ご家族のエスコート付きでたくさん控えていた。


『同じ歳の子はたくさんいるみたい…』


ここで、ご挨拶をして顔見知りになったり

未来のおともだちもできちゃったりするんだろうか…


そんなムフフな展開を想像しながら、

手前の入口近くで、ワトソン伯爵勢のみんなとしばし待機をする。


ふと辺りを見渡すと、

わたし達を見つめる人だかりが出来ていた。

10mくらい距離が空いている気がする…

避けられているのだろうか?なぜ………


もしかして、お父様やお母様、お兄様のことは知っていても、わたしがあまりに表に顔を出さないから「だれこの子」状態なのかもしれない。



―――そんなこんなで…


いよいよパーティーが開始した。

若々しいイケ渋な陛下のご挨拶が終わり、

デビュタント組代表として第3王子様がスピーチをしていた。


『王子様も同じ歳なんかい…』


これはこれは学園が大騒ぎになりそうである。王子を巡るご令嬢同志の熾烈な争いや、王子と身分差の恋をするご令嬢もいるかもしれない。


おもしろそうだ…

その時はぜひ、高みの見物をさせてもらおう。


とりあえず、この世界の高貴な方たちは

みんな揃いも揃って見目麗しいことがわかった。それでもお父様が世界一だけどね!



―――•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪


陛下がグラスをチリンチリンと鳴らしたあと、楽団による演奏が始まった。


『ワルツだ…!』


ココロも踊る生演奏。

サッと大きな丸い円ができあがる。


最初は王家のみなさんのダンスから始まり、

次いで公爵家…

その後は、上級・中級・下級の団体ごとに

入れ替わっていく流れだ。


わたしはもう、緊張とお父様と踊れる嬉しさで頭が真っ白になっていた。


せいぜい大ミスをしないことを祈る。

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