第17話 父親の気持ち

私は、ワトソン伯爵家の当主である

エリク・ワトソンだ。

世界で1番美しく聡明な妻と、世界で1番美しく愛らしい息子と娘がいる。


しかし、娘のニコルは生まれてからずっと

病に伏せっていた。

原因も分からぬまま、定期的に医師からの治療を受け続けて来たが

一向に回復することはなく、虚弱だった。


妖精…いや、天使のような娘だが、

時折物悲しい表情を見せることもあり、

病のせいもあって外にも連れていってやれず。

それが親心にも辛かった。


約2週間前は、目を覚まさないと侍従からの報告があり、それはそれは肝を冷やした。

もし、失うことになっていたら

わたしはいま絶望を感じていただろう。


目覚めてくれて本当に良かった。


あれから娘は、人が変わったかのように生気に満ち溢れている。


いや、体が弱いのは変わらないのだが、

なんだか瞳に宿る生気が違うような気がするのだ。


それに前よりも、周囲に溶け込んでおり、

気さくな性格になったと思う。

楽しそうに会話をし、自分の考えや気持ちも伝えてくれるようになった。

そして時折、大人のように賢い事も言う。


まぁ、何が言いたいかと言うと、

「うちの娘が、さらにかわいすぎる…」

ということだ。


出来ないことが多い分、

叶えてやれるものがあるならば

すべて叶えてやりたい。


そう思っていた矢先、

娘からお呼びがかかった。

しかも、屋敷中の者を呼んで欲しいと。

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