第10話 ここは異世界

まず、この状況について理解したいが

正直、理解し難い事が起きている。


なぜなら、

知らない豪華な部屋の

知らない大きなベッドに横たわり

まったく知らない人達に囲まれて

(しかも美形集団)

まったく知らない体になっていたからだ。


『これは夢だと信じたいけど、本能が言っている。現実だとね…!』


そう、五感全てがあまりに現実的だし、

何よりこの体の持ち主であろう

"ニコルお嬢様"の記憶が、

パラパラと脳内に蘇ってきているのだ。


さっきまでは何も分からなかったのに。


いまでは

目の前のイケメンが"エリクお父様"、

その横の超絶美人が"メイアお母様"、

そのまた横の美少年が"キースお兄様"、

ということがハッキリと分かる。

専属メイドの"マリア"のことも、分かる。


―――なるほど。


そしていま、

また新たにわかったことがひとつ。


『この子はもう……』


どうやら、

この体の元持ち主ちゃんの魂はなく。


"向こうのわたし"も力尽き、

何かしらのアレがアレしてこの体に転生したみたいだ。


それからもうひとつ。

ここには魔法がある。


お医者さんがわたしを診たあと、

「念の為、治癒魔法をかけました」と言っていたのだ。


ほう……

異世界に転生とはなかなか。


『気丈に振舞っていたけど限界です。』


現実を受け止めきれなかったわたしは、

また、意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る