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「和菓子の赤坂なんて聞いたこともないわ。老舗でもないし、だいたい和菓子って庶民でも食べれる安物じゃない。そんなものを持ってくるとかバカみたい」


二階堂さんは、バカにしたように笑った。


「もしかして……わざと落としたんですか」


私は声を震わせながら尋ねた。


「当たり前でしょう?嫌いなのよ、和菓子とか。それにDランクのあなたがでしゃばらないでくれない?」


「……めて、ください」

「はぁ?」


「拾ってください!」


私は強い口調で二階堂さんに言い寄った。


「何?気持ち悪いんだけど」


「これはお母さんとお父さんが早起きして作った和菓子。みんなと仲良くなれるようにって思いを込めて作ってくれたものなの!落としたりしないで!」


私は声を荒げてそう言った。


「バカじゃない?小さな和菓子屋なんていつかつぶれるわ」


「拾ってください!」


私がずいっと彼女の前に出ると、二階堂さんが後ずさりをする。


するとその瞬間──。


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