第8話 闘技場チャンピオン登場
キィン!キィン!キィン!…とセクスとレスタの鎬を削る音が闘技場に
こだまする。その様子に観客席の人々は熱狂し、歓声が上げる。
「いやはや、まさかこのような所で貴殿の様な手練れに出会えるとは…いやぁ~
楽しいですなぁ」
「全然楽しくないわ!! とっととくたばれ!!」
だが、セクスの剣をレスタは悉く躱して弾く。その間にもレスタから急所を狙った
一撃を何度も入れて来る。セクスも何とか紙一重で躱し続けるが、段々余裕がくなってきた。
「セクスさん…なんかヤバそうですよ…だ、大丈夫ですよね?」
「メメイという女の人との「お楽しみ」に歯止めが利かなったようですね。セクス様
の力がまた落ちています。このままでは…でも…」
(ぐぐぐ、正攻法では勝てん。何か方法を考えなければ…)
セクスは武器棚の所まで走ると、武器を手当たり次第にレスタに向かって投げまくった。
「おや、やけを起こされたか? そんな事では拙者には勝てませぬぞ」
「うるせー!! 黙って食らいやがれ!! ぜぇ、ぜぇ…」
セクスは棚の武器を全て投げ付けたが、避けられてレスタには傷一つ付けられなかった。
「手が尽きた申したか。では今度はこちらか行きますぞ!!」
「まだまだぁ!!」
レスタが切りかかろうと迫ってきたところを、セクスは足で地面を蹴り、砂を巻き上げた。
「うっ! な、なんと卑怯な!!」
「戦いに卑怯もクソもねぇーわ!!」
レスタが顔の砂を払っている間にセクスは移動して剣を構える。
「さぁ、こっちだ。かかって来い!!」
「今の目つぶしの間に切りかかってくるかと思いましたが…まだ何か考えが?
…いや、何があろうとも拙者は正面から切り合うのみ! いざ!!」
レスタの攻撃を真正面から受ける。キリキリと剣と刀が鍔迫り合う。
「うおおおお!!」
セクスは全身の体重をかけてレスタを後ろへ押しだそうとする。レスタも耐えるが、体格差もあって徐々に下がっていく。
「むっ!!」
レスタが何かを踏んでバランスを崩した。足元を見ると、そこには剣が一本転がっていた。
「こ、これはさっき貴殿が放った武器!! まさかこれを狙って!?」
「馬鹿正直に相手しか見てないヤツでよかったぜ…っと!!」
最後のもう一押しとばかりにセクスはレスタに覆い被さる様に力を入れた。
「うわっ!!」
二人はもつれる様に地面に倒れ込んだ。
「フンン、勝負あったな」
セクスは剣を納め、倒れたレスタの上に乗って片手を膝で抑え、もう片手は手で押さえた。
「さぁ…どうしてくれようか」
「きゃあっ!!」
空いた手でレスタの胸のあたりに手を置いた時、可愛らしい素っ頓狂な声が聞こえた。
「き、きゃあ?」
「……」
レスタが真っ赤な顔をしてセクスを睨む。
(コイツ…よく見るとイケメンというより…美人じゃね? しかも肌とか男の割に
キメが細かい様な…ま、まさか!?)
セクスは力任せに胸元をはだけさせた。
「な、なななななな何をする!!」
レスタの胸には布がきつく巻かれていた。だがどう見てもそこには膨らみがあった。
「お…お前…女だったのか!?」
「くぅ…いつまで上に乗っている!! いい加減上からどけ!!」
レスタの膝蹴りがセクスの背中に当たり、セクスはつんのめって前へゴロゴロと転がった。レスタは素早く立ち上がり、衣服の乱れを整えると、刀を構え直した。
「く、くくく…お前…女だったのか…な~んだ、そうだったのか…」
「仕切り直しだ!! いざ尋常に!!」
「かかってきやがれ!!」(手をワキワキ)
セクスは嬉々としてレスタに突っ込んでいった。
「リタちゃん。セクスさん…アレ、何か元気になってません?」
「ええ…どうやらお相手の性別に気付けた様です。もう大丈夫ですよ」
舞台ではセクスの猛攻が続いていた。
「くぅっ!! 先ほどとは力も速さも段違い。一体何が!?」
「うひひ! その胸の苦しそうな布を引き裂いてやろう、レスタちゃん!!」
「ちゃん付けで呼ぶな!! 拙者はおなごである事をとうに捨てたのだ!!」
「お前が何と言うと現時点で女であることは揺るがない。なので俺はひん剥く
のだ!!」
「この破廉恥漢めえぇぇええ!!」
レスタは怒りに任せて振り下ろしを放つ。
「もらったああああ!!」
セクスはそれを剣で掬い上げるように打ち上げた。
ガキィィィィン!!
刀が空高くヒュンヒュンと飛び、地面に刺さる。レスタは痺れた両手を
見ながら膝から崩れ落ちた。
「………拙者の…負けだ」
「よっしゃあああ!! ぐふふ…では勝者の特権を…」
ジャ~~~~~~ン!!
セクスが両手をワキワキさせながらレスタに近づこうとすると、銅鑼の音が鳴り響いた。
《試合終了!! 勝者!! セクス闘士~~~~!!》
わあああああああ!!っと一際大きい大歓声が闘技場を揺らした。
「コ、コラッ!! 勝手に終わるな!! 俺はまだ何もしてねぇ!!」
「……グヒュヒュ。まぁまぁの試合だった。まずは優勝おめでとう、セクス君」
闘技場の巨大魔法モニターに、ガ―メッツが映し出された。
「あ? 何だあのデブハゲなオヤジは?」
「あの御仁はガ―メッツ・アブラミド氏、この闘技場の支配人だ」
「さて、優勝したセクス君にはチャンピオンへの挑戦権があるのだが…」
「あー、別にいらん。さっさと優勝賞金よこせ」
セクスの言葉にガ―メッツはニヤリと口角を釣り上げる。
「グヒュ。なるほど、そうか。…おい」
ガーメッツがパチンと指を鳴らすと、部下に捕えられたメメイが映し出された。
「ならば、この儂の奴隷に別の見世物をしてもらわねばならんなぁ…」
「う…うう…」
モニターに映し出されたメメイには暴行を受けた後が見られた。
「……チッ、分ったよ。やってやるよ」
「よろしい。…それからレスタ。お前、儂に性別を偽ったな。これは
契約違反だ。違約金、金貨3000枚を払うか、儂の奴隷になるか選べ」
「…どちらも断る。用心棒の仕事に男も女も関係あるまい」
「あれ、絶対お前を手に入れたいだけだぞ。とんだスケベ親父だな」
「…貴殿もな」とレスタは思ったが口には出さなかった。
「グヒュ、よかろう。力づくというのも嫌いじゃない。ならばセクスとレスタVS
チャンピオンのスペシャルマッチだ! 勝てばお前たちの報酬は倍払ってやる。
負けた場合は二人共、儂の奴隷だ!!」
「勝手に決めんなっ!! てかどんだけ奴隷にしたいんだよ! あのおっさん奴隷
好きすぎだろ!!」
魔法モニターの画面が消え、ゴォォォン…と闘士の入場門が開く。中から出て来たのは、額から2本の乳白色の角を生やし、顔は拘束具の様なマスク。首には真空管の様な物がぐるりと付いた首輪を付けた筋肉ムキムキで真っ赤な肌をした大男が現れた。チャンピオンの登場に観客から大歓声が上がる。
「で、でけぇ…俺の3倍以上はあるぞ」
「あ、あれは「オニーク族」!!」
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