会津公護衛任務-3
※
「斎藤さん、駄目ですよー! わたしは新選組から抜けませんからねっ? わたしが見張っていないと、すぐに切腹しろーって騒ぎ出して揉めるんですから!」
「……そのお前を巡って、隊士たちが決闘だ切腹だと揉めているようだが?」
「そんなのはまだ笑える話じゃないですかー、わたし以外は! もっと酷いことになるんですっ!」
斎藤さんは、松平容保さまとともに会津に残って「会津新選組」を率いて戦い、奇跡的に死なないまま明治維新を生き延びたけれど、近藤さんや土方さんや山南さんはみんな死んじゃうんですよ。
うう、こんなこといきなり斎藤さんに言えないしね。
かえって「なぜ自分だけが? 会津に残って、蝦夷地へ向かった土方さんと別れたせいか? みんなが死ぬのなら、自分も新選組の旗のもとで死ぬ。土方さんと蝦夷地へ行く」と言いだしそう。
「とにかく、わたしは剣士として戦いますから! 女だから駄目だとか言わないでくださいよ?」
「……総司は強い。だが、土方さんがお前には危ない修羅場を潜らせたくないと思っている」
「もしかして今回の任務で失敗したら、わたし、町娘に降格ですかあ? すべて、土方さんの計画通りなんですねーっ? あの人ってば、まったくもう~!」
「……若い女が斬られる光景は、自分ももう見たくない」
斎藤さん?
なにか暗い過去を思いだしたのだろうか。不意に、陰鬱な表情になった。
「……自分は試衛館の近藤さんに拾われるまでは、人斬り稼業で食いつなぐ餓鬼だった。飯を食う感覚で人を斬った。だがある日、泥酔した武家が女子供を手に掛ける現場に居合わせ、衝撃を受けて衝動的にその武家を斬り、江戸から逃げた。それからは京で、天誅の仕事に手を染めて再び殺し屋に成り下がっていた……」
ええっ? 斎藤さんが、自分の過去を語っている!?
こんなこと、「侍死」ではいちどもなかったのに?
どうして今、わたしにそんな話を……?
目の前で斬られた女の人の姿を思いだしたのかもしれない。
もしかしたら、同性には口数が少ないけれど、親しい女性にはよくお話ししてくれる人なのかも。
「……そんな自分と京で再会して、落剥した自分をなおも武士として扱ってくれた人が、近藤さんと土方さんだった。だから自分は、新選組のためなら死ねる。総司、お前を守るために死ねと言われれば死ぬ」
「い、いけません。わたしのために死なないでくださいよ斎藤さん。居合いが斎藤さんの得意技なんですから、自分から敵中に飛び込んで無茶しないでください!」
「……敵中に飛び込むのは、総司の領分だったな」
「はいっ! 相手を突いたら、すっとバックステップで下がりますから! お任せください!」
あ、しまった。英語が……バレてないよね?
「……総司らしいな。だがなぜ幼い娘が、天然理心流の跡継ぎに?」
「いえいえ。男の子でしたよ? 京で病気にかかって、いきなり女になったんです。あはははは……感染はしないはず……ですよ?」
「そんな病があるのか? 原田の冗談ではなかったのか? そんなものを俺に移すなよ?」
あんまり表情は変わってないけれど、斎藤さんってば、なぜか笑いを堪えているかのような? ふえええ、なんだろう? 斎藤さんの思考パターンって謎だから、わかんないよー!
あっ、まずい。会津藩士の皆さんも「へっ? 女体化の病?」と動揺しはじめた。
感染したら、おらたちも? と会津藩士の皆さんが慌てて、隊列が崩れたところに。
だあん、といきなり銃撃音が鳴り響いた。
うわあっ、と会津藩の隊列が完全に崩れる。
「ふ、ふ、ふ。あの沖田総司が実は女だったとは、これは意外すぎる展開となりましたね。新選組を滅ぼすまで戦い続ける志士・黒頭巾、ここに参上仕りました。浪士諸君、会津藩公を斬ってしまいなさい。さすれば、大失態を侵した新選組は解体です! わが悲願、ここに成れり!」
ぎゃーっ?
河川敷でわたしと土方さんを闇討ちしてきた、あの黒頭巾の男だー!?
こんなキャラ、やっぱり「侍死」にはいないって! そうだ。この会津藩公護衛イベントじたい、「侍死」には存在しなかったんだ! 隠しイベントなんかじゃないんだ!
しかも、手下の数が増えているーっ? 今回は、十人どころじゃない!
わたしってば、「侍死」そのままのルートじゃない、完全に未知のルートに迷い込んでいる?
どうしよう、どうしよう? 新選組を付け狙う謎のオリジナルボスキャラがいて、ぜんぜん知らない事件が次々と起こるなんて。対処できないよ?
いったいこの黒頭巾の男って、誰なの?
どうして、新選組を目の敵に?
芹沢鴨……はもう死んでるし、そもそもこんなお上品な言葉遣いじゃなかったし。新選組から逃げた芹沢派の面々も以下同文。ぜんぜん違うよー、誰なんだろう?
「殿! 刺客でごぜえます!」
「われらは殿の周囲を固めて裏道へ回る! 斎藤、殿を頼む! 時を稼いでくれ!」
「沖田、おめえはこっち来い。娘っ子が斬り合うことはあるめえ」
「おめえにそんなことをさせたら、われら会津藩士の名折れになるべ」
え、えええええっ?
会津藩の皆さんは、一緒に戦ってくれないんですかー?
で、でも、仕方ないか。松平容保さまは馬上だ。もしも射撃されれば、鉄砲の的。一刻も早くこの場を離れないと。
そう。こういう死地で剣を抜いて無双することこそ、新選組の仕事なんだ。
まさに「鉄砲玉」の悲哀。雇われ者の浪士組だものね。
「……承知。不逞浪士は三十人ほど。自分が片付ける」
斎藤さんは活き活きとしている。この人は、死地になればなるほど、静かに熱くなる人なんだよね。死ぬことをまったく恐れていない。むしろ早く死にたがっているかのようだ。
「相手が多すぎます、斎藤さん一人で戦うなんて無茶ですよ! 沖田総司も行きますー!」
「……これほどお膳立てしたのに、どうあっても新選組をやめないつもりか。総司」
「もちろんです! わたしと斎藤さんがいなくちゃ、新選組じゃないですよ!? だいじょうぶです、わたしの剣術は錆び付いていませんからっ!」
「……三戦立ちはどうなった」
「それはもういいんですっ! うあー、でも、ほんとに相手が多すぎるうううう? 二人対三十人じゃ戦いになりそうもありませええん、斎藤さーん!?」
「……だから言っただろうに。本来、こちらも最低四人は要る。早く逃げろ」
「ににに逃げたら新選組を首なんでしょ? 局中法度違反ですもんね! でも、土方さんの思惑通りにはいきませんよ! わたしだって、新選組のために命を賭けて戦うと誓っているんですっ!」
斎藤さんが、呆れたようにわたしをじっと見つめてきた。
「……そこまでしてなにを守りたい、総司」
「土方さん。近藤さん。山南さん。左之助さん……試衛館以来の仲間の皆さんの未来です! そのために、わたしは女になっても剣を振るい続けると決めたんです! そのために、沖田総司の剣があるんです!」
「……そうか。試衛館の仲間の未来、か……だがほんとうに、彼らはお前の仲間なのか?」
「ど、どういう意味ですか? そうですよ! 誠の旗に集いし、愛しき友たちですよーっ! 皆さんがそう思っていなくても、わたしはそう思っていますから! わたし、知ってるんですから。無口な斎藤さんが実は誰よりも、新選組に熱い想いを抱いているってことを! あなたは、ここで死んでいい人じゃないんです!」
斎藤さんの横顔が、なぜだろう、笑いを堪えているように見えた。この人の情緒は謎だ~!
「承知した。ならば、新選組隊士として戦え。そのお前を、自分が守ろう。人斬りとして生きてきた自分には、己の未来など見えていないが……」
ああそうだ、「お前」の未来ならば見ることができる、と斎藤さんが小さく呟き。
殺到してきた不逞浪士たちの集団の中へと、電光石火の素早さで飛び込んでいた。
はやっ? なに、この動き? まるで野生の獣だ、人間じゃないみたい!?
一歩出遅れたわたしも、「無明三段!」と技名を叫びながら、斎藤さんの後に続いた。
でも、これって……多勢に無勢……屋内ならともかく、路上でこの戦力差は絶望的すぎる。
まさか斎藤さんと一緒に討ち死にしちゃうんだろうか。ぜんぜん知らないルートだよ、これ!
ここで斬られて死んだら、身体をお借りしている沖田総司くんにも申し訳ないよー! 斎藤さんまで巻き込んじゃったし!
でも、今さら泣き言を言っても意味はない。
わたしは、土方さんたちに生き延びてほしい。
あの新選組を目の敵にしている黒頭巾を捕らえて、正体を暴く。そうしないと、きっと新選組の運命は変えられない。そのために、この三十人と戦い抜く……!
絶望的な戦いがはじまった。
わたしも斎藤さんも、自分の剣の間合いに入った浪士は一刀で倒す。わたしは三段突きで、斎藤さんは独自の抜刀術で。
一対一では絶対に斬れない、数の力で倒すしかないと悟った浪士たちに、いっせいに四方を包囲された。黒頭巾の男はやはり策士らしい。前回の襲撃の時よりもはるかに統率力が高まっている。
駄目だ。まだぜんぜん相手の数を減らせていない。終わりかもしれない……!
「……ここまでだな。自分が突破口を作る。小路を駆け抜けろ、総司」
「だ、駄目です。斎藤さんを死なせません! 言いましたよね、試衛館以来の仲間の皆さんの未来を見たいって!」
「ふふ。お前はほんとうに頑固者だな。確かに、沖田総司だよ」
あーっ。斎藤さんがはっきりと微笑んだ。はじめて見た!
でもこれって、「死ぬ覚悟を終えた」ってことだよね?
おかしいよ、こんなの。本来は死なないはずの斎藤さんを死なせちゃったら、もとの「侍死」の歴史よりも悲惨なのでは? わたしが来たせいで、新選組はもしかしてかえって悲劇的な運命を辿ることに?
タイムリープものによくあるよね、歴史に介入して逆に酷いことになっちゃうって……!?
駄目だ駄目だ。あの最強無双を誇る斎藤さんが死ぬなんて、今まで想像したこともなかった。ああ。剣術素人でへっぽこな娘のわたしがこの修羅場にいるせいだ……!
ごめんなさい。ごめんなさい。
だが――。
「魁先生、見参! 会津藩の将兵を全員逃がして新選組の護衛役が殿を務めるという今回の作戦、あまりに無謀です。同志として加勢に来ました、斎藤。総司!」
「拙者も来た。土壇場で土方くんが『気が変わった、二人じゃ足りねえ。総司と斎藤を救いに行け』と言いだしてな」
「土方さんは人が悪いや! 斎藤が総司を逃がした時点で、総司を新選組から外すつもりだったってよー! おいらがあちこちで総司の秘密をぺらぺら喋ってるのを放置していたのも、会津藩にまで押しかけて言いふらせと命じてきたのも、総司円満除隊の流れを作るためだったってよ! どっこい、総司が戦場から逃げるわけがねえといきなり思い直して、泡を食っておいらたちを先行させたんだぜー!」
「土方さんは今、別の待ち伏せ地点候補に向かっています。援軍は永倉隊・土方隊・井上隊の三手に割りましたが、すぐにこちらに合流しますよ、総司」
藤堂平助さん。永倉新八さん。原田左之助さん。
試衛館三馬鹿組が、それぞれの隊士を引き連れて一斉に救援に来てくれた。
土方さん自身も、まもなく到着するらしい。
やっぱりわたしを町娘に戻すつもりだったんですねー土方さん! 斎藤さんに最初から段取りを指示していたんですねー! 勇猛なはずの会津藩の皆さんが新選組に殿を押しつけて退散したのも、新選組からの申し出通りだったってことですね? 最初は口止めしようとしていた左之助さんを途中から放置していたのも、策のうち?
それで、会津藩にまでわたしが女だという噂が広まって……酷い!
腹黒策士! 鬼! 悪魔! 副長!
「……助かる。たとえ女になっても、沖田総司が敵から逃げるはずがなかった。自分の予想通りだった。土方さんは、総司のことになると私情で目が曇る」
やっぱり斎藤さんも、素知らぬ顔をして土方さんの計画を遂行してたんですね。
っていうか一人対三十人で戦って、生き延びられるわけがないじゃないですか。命を捨てちゃ駄目ですよ、もう。
だいたい、一度死んで新選組のために転生したわたしが退却するわけないでしょ!
「ほう。いずれ加勢が来るとは予想していましたが、存外に早い。やはり土方歳三は手強い――浪士諸君、わが真の敵は会津藩にあらず、新選組にあり! ただし、そこの童顔のお稚児さんだけは斬るには忍びなし、手心を加えてあげなさい」
黒頭巾の男は、敢えて今日の襲撃情報を掴ませて新選組を攪乱していたつもりだったらしい。複数地点を待ち伏せの候補地にしてしまえば、隊士を分散できる。武田さんが一晩でやってくれるはずがなかったんだよねー好都合とばかりに情報を掴まされたんだよー。
それでも、土方さんはそれぞれの「待ち伏せ地点」候補に隊を割って総動員作戦を敢行した。
その分、隊士数は目減りするけれど、一騎当千の新選組ならば少数でも合流するまで戦えると踏んだのだろう。
それほど、手塩に掛けて鍛えてきた新選組に自信があるみたい。
「ありがとうございます、皆さん! でも土方さんは酷いですよー! どうしてわたしがこのお役目に選ばれたのか、鈍い自分にもやっとわかりました! 後で抗議しますからっ!」
「土方さんも『馬鹿なことをした。俺としたことが、あいつを理解してなかった』と頭をかきむしって後悔していたから、許してやんなよ総司ちゃん~。おいおい黒頭巾野郎、今日こそおいらの槍で貫いてやっからよ! 逃げんなー、こなくそがあ!」
「どうして、わたくしだけに手心を? この刺客ども、長州の浪士を名乗っているけれど、もしや薩摩の手の者では? わたくしをお稚児さんにしたいと執心している連中は、みな揃いも揃って薩摩人なのです!」
「解せぬな平助。薩摩藩は、会津と手を組んでいるのではなかったのか? 偽長州志士と新選組を噛み合わせて、両者を弱らせようと企んでいるとでも?」
「そんな難しい事情は知りませんよ。相手が誰でも関係ありません、総司と斎藤を救いますよ新八!」
どうやら黒頭巾男は、会津藩ではなくあくまでも新選組に恨みがあるらしい。
いったい誰なんだろう。「侍死」には登場しなかった人物。しかも一方的に新選組を付け狙う宿敵で、ならず者の浪士たちを手名付けて縦横に操ってみせる策士。
そもそも、どうしてそんなイレギュラーな人物がこの世界に登場したんだろう?
(もしかして、わたしが沖田総司になったのと同時期に現れたのかな? 初登場は、わたしが沖田総司に「転生」したというか「混じった」その直後だったし)
でも、三十人を相手にした斬り合いの現場でそれ以上そのことについて考えている余裕はなかった。
斎藤さんも、二人、三人、四人と攻めかかってくる刺客を相手にしては一撃必殺カウンターの抜刀術では間に合わなくなり、いよいよ剣を抜きっぱなしにしてがむしゃらに振り回している。いつものクールな斎藤さんとは、戦いぶりがぜんぜん違う。凄まじく熱い。
「……総司には、一歩も近寄らせない」
「わたしも戦いますってばー斎藤さん! 二人でわたしを罠に填めようだなんて! 後で土方さんと一緒に正座させてお説教しますからね、お覚悟を!」
「……大恩ある土方さんには、逆らえなかった……それに、自分も土方さんと同意見だった……悪かった、総司」
「謝罪は生き延びてからでいいですよー! 永倉さんたちも、怪我しないでくださーい!」
「いだだだだだ。さっそく額を斬られました! 血が、血が……」
ひゃああああああ!? 藤堂さんがさっそく負傷してるうううう? 黒頭巾が「お稚児さんには手心を」と申しつけたのにー? 真剣を抜いての実戦中にそんなことを言われても無理ってこと?
「傷は浅いぞ、落ち着け。平助はむやみに突進しすぎる! 必ず三人一組で戦えと言っているだろうに。平助を守るぞ、左の字」
「おいらに任せとけー、がらっぱち-! おいらの槍の間合いの中に入りな、平助! いやあ、大立回りって血湧き肉躍って楽しいなあ。あー、いつの日にかおいら、大陸に渡って馬賊になりてえー!」
わたしが新選組に来てから、これほどの乱戦ははじめてだ。
なにかを考えている余裕などない。
ただ、身体が勝手に反応して、敵の剣を防いでくれる。
でも沖田総司の剣は、やっぱり攻撃特化型。攻撃こそ最大の防御とばかりに、間合いに飛び込んで来た相手に高速の突きを叩き込んで倒してしまう。
一撃で死ぬ急所だけはぎりぎりで外しているけれど、これはわたし自身の意識が剣技にリミットをかけているからだ。
もちろん、そんな「相手の戦闘力だけを完全に奪うが致命傷は与えない、絶妙な手加減攻撃」を、ほんものの修羅場で実戦使用できる剣士などまず存在しない。
ただ一人の例外が、新選組一番組隊長・沖田総司。
(強い。病に冒されていない沖田総司の剣は、ほんとうに強い……! そうか。そうだったんだ。こんなにも、強かったんだ……)
もしも沖田総司が労咳に冒されなければ、新選組の歴史はぜんぜん違ったものになったのかもしれない。
「侍死」では、長州を完全に敵に回す結果になった例の「池田屋事件」イベントで、沖田総司は進行しつつあった労咳が原因で突然喀血して、開戦早々に倒れてしまった。
その結果、僅かな人数で池田屋に討ち入った近藤さんは当初「浪士はできるだけ殺さずに捕縛するように」と決めていたのに、「やむを得ない! 歳の別働隊が合流するまでの間、抵抗する者は討ち取れ!」と強硬策を選ぶ他ははなくなった。
そうする以外に、沖田総司を死なせずに池田屋で戦い続けることはできなかっただろう。
沖田総司が倒れた時点で、池田屋に残された新選組の主力は、近藤さん、永倉さん、藤堂さんの三人のみ。あとはほとんど戦力にならない新人が数名ばかり。
「殺さず」を貫いていたら、別働隊を率いて向かっていた土方さんが池田屋に到着する前に全滅していただろう。
(でもその結果、長州藩は新選組と会津藩を仇敵と見なすことになり、新選組はいずれ官軍になった長州に北の果てまで追われる破滅ルートに……)
えっ、待って。
と、言うことは?
いずれ発生することは避けられないだろう池田屋事件の際に、わたしが喀血して倒れなければ、池田屋で大量の長州志士を殺さずに穏便に事件を解決できるかも?
長州に恨みは買うだろうけれど、正史や「侍死」のような不倶戴天の敵とまでは見なされずに、ぎりぎりだけれども好敵手関係のラインで踏みとどまれるのでは?
ほとんど絶望的とも思えた、新選組が生き残るルートが開けるのでは?
「斎藤さん! 永倉さん! なるべく刺客を殺さずに倒してください! 薩摩藩士だったら大変です! 今日こそ黒頭巾をなんとしても捕らえて、正体を暴かないと!」
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