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 草那藝之大刀がマルパンのパンパンの腹部をかすめた。

 といっても、大刀の切っ先である。

 致命傷を与えるには十分すぎるほどに十分だった。

 真っ赤な血液とともに内臓が漏れ出した。血の球があたりに散らばり漂う。どうやって収まっていたのかもわからないほどに長い腸がヘソの緒のように飛び出すと、その血の海をかき分けてニャンレオは泳ぎ寄った。

 白黒の毛並みが赤く染まったマルパンを抱え起こした。


「……どうして」


 ニャンレオがそう問うと、マルパンは虫の息で答えた。


「もう社長……黒星が誰かを傷つけるのを見たくないパン」


 すると光の速さぶん遅れて黒星卿もそれに気づく。

 草那藝之大刀の柄を支える手が爪を立てるようにすこしりきんだ。


「馬鹿者」


 ぼそりと黒星卿は感情の読めない様子で一言つぶやいた。


 一方のマルパンは目を虚ろにさせながら鋭い爪の手を伸ばす。その先の無重力空間にはとある白黒写真が浮かんでいたが届かない。そのため代わりにニャンレオがその写真を掴んでから、マルパンの手に握らせた。

 三億年前に撮影したその白黒写真はマルパンの赤い血でにじんでいた。

 それを穏やかな表情で眺めながらマルパンの瞳から徐々に光が失われていき、そのまま息を引き取った。


「しっかりしろ! マルパン!」


 ニャンレオは慟哭どうこくしながら悲嘆に暮れた。

 また見送ることしかできないのか。

 いろんな星やスターモンが自分の代わりに死んでいく。

 どうしてこんな自分を生かすのか。

 さまざまな思いを託して背負わせて、あとは好きに生きろなんて無責任ではないか。


 誰かを犠牲にしてまでオレは生きたくない。


 ニャンレオはもう生きているのがつくづく嫌になった。

 するとそこでマルパンの裂けたおなかに黒い渦があることにニャンレオは気づいた。


「にゃんだこれは?」


 ブラックホール級の胃袋と語っていたマルパンだったが、まさかの本当にブラックホールの胃袋を備えていた。マルパンのブラックホール胃袋は突如静止したかと思いきや、直後ぐるぐると逆回転をはじめ白く光った。


 その次の瞬間、今まで蓄積されたダークマターとともに雑多なものが放出された。笹パン、爪切り、黒い湯、酒瓶、短冊、マジックペン、古びた蓄音機、空飛ぶ車、土管、サッカーボール、バット、グローブ、漫画本、アイロン、正露丸、エアコンのリモコン、単四電池、やかん、土器、ランドセル、リコーダー、筆箱、ヘルメット、二丁宇宙銃モノクロスター、砂糖火薬爆弾搭載の戦闘機M87、虹の羽衣――そして138億ベクレルの放射能を周囲にぶちまけてあたりを汚染した。


 ニャンレオは塵芥ちりあくたの波に飲み込まれると、息ができずに呼吸困難に陥った。ダークマターと放射性物質を大量に摂取してしまったようだ。体をむしばまれ、輪廻転生蝶の翅が黒く染まっていく。黒焦げの体毛が全身から抜け落ちて灰色の肌が露出した。

 ニャンレオの瞳までもが青黒く浸食された。それから近場にあった太陽先生の忘れ形見である虹の羽衣をサッと纏う。

 スターモンだった頃とは随分と見た目の変わってしまったニャンレオはとっちらかったマルパンの遺品の上を飛び石のように渡ってから、草那藝之大刀の切っ先の峰にスタッと着地した。



 一方の黒星卿は約六光時間(草那藝之大刀の刃渡り)も離れた場所の重力の変化を敏感に感じ取った。


「未だ感じたことのないほど重力ヘヴィだ」


 黒星卿はまっすぐと連なる大刀の一本道を眺める。切っ先に沈み込むような重力を発見した。

 その星レベルの重力を持つ物体は真っ二つに割れた新・太陽系惑星の間を悠然と歩く。

 一歩一歩踏み出すごとにそいつは驚くべきことに惑星間を跨いでいた。つまり途轍もない速度で近づいていた。


 いや、これは速さではない?


 黒星卿が眉をひそめた。

 その次の瞬間には、そいつの重力そのものがかき消えた。

 黒星卿は目を丸めて瞳を閉じた。

 刹那――目蓋を開けると、そいつは黒星卿の目の前に二次元的に現れた。


「ほほう。三次元からひとつ次元を落とすことによって光の速さを突破したか」


 黒星卿は冷静に分析すると、ペラペラの絵のような廃人に問う。


「おまえが人間か?」


 しかしニンゲンは答えない。

 その代わりにグゥ~と間の抜けたおなかの音が鳴った。

 そんなペラペラの平面ニンゲンに向かって苛ついた黒星卿は蹴りを放ち、クシャッと歪めた。たこのように打ち上がるニンゲンに黒星卿は草那藝之大刀を翻してから、返す刀で斬りかかった。だがしかしペラペラのニンゲンはひゅるひゅると身を翻してじゅうよくかわす。

 するとそののちにニンゲンはボコンと右手を三次元に回帰すると、大刀の刃を軽々と受け止めた。


「何だと?」


 驚きを隠せない黒星卿を尻目にニンゲンの体は腕、胸、首、顔、腰、太股ふともも、足と順次三次元に適応する。

 それから言葉になっていない低い咆哮ほうこうを発した。


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 その次の瞬間、草那藝之大刀にビキビキとひびが入った。挙げ句の果てにはバキッとへし折られてしまった。白銀の巨大なカミソリが大量のデブリとなって四方八方に飛び散った。

 それからニンゲンは握り拳を作ってから構える。そして何もない宇宙空間に向かって拳を突き出した。しかしその突き出したはずのニンゲンの拳は消えていた。手首から先が比喩ではなく無いのだ。

 黒星卿は不審に思うと、無数に散らばった大刀の破片にはニンゲンの無数の拳が映っていた。しかし黒星卿がそのことに気づいた――次の瞬間には星の数ほどの見えない拳が黒星卿に撃ち迫っていた。

 四次元から繰り出されるパンチは大きさも速度も数の概念も見当のつかない拳だった。避けようがない。そしてそれは黒星卿の背後に広がる巨人の羽織るような黒い着物を突き破るほどの威力と破壊力だった。


「ガハッ!」


 黒星卿はキラキラと星血を吐く。

 甲冑に打痕が浮き上がり鎧はボロボロに剥がれた。

 すると黒星卿の目の前にニンゲンは立つと、その瞳には意志は感じられない。ニンゲンは両手で黒星卿の首を絞める。口をあんぐりと開けてから上下合計32本のお歯黒をのぞかせた。その口許くちもとに放射性物質由来のエネルギーを溜めたのち、キュイーンズドーン! と禍々まがまがしい破壊光線を黒星卿の顔面めがけて吐きかけた。


「――ッ!」


 黒星卿は咄嗟に右腕で防ぐも鬼のような鎧兜よろいかぶとは完全に融解した。それだけに留まらず、ニンゲンは黒星卿の右腕を噛みちぎり、鋭い爪で強引に甲冑と襦袢じゅばんをズタズタに剥ぐ。黒星卿の雪のように白い肌と首に提げたチェーンにつながれる指輪が露わにされた。

 その他にもシュノキゲンはパラパラとページを羽ばたかせながら飛んでいく。時空の鍵も同様に黒星卿の下から解放される。そこでなんとニンゲンは宇宙を漂う時空の鍵をパクッと丸呑みにしてしまったではないか。


 同時にニンゲンの下半身の肉鍵が燃えるように熱くなった。

 それから黒星卿の透き通るような首筋にニンゲンの黒い犬歯が突き立てられる。同時に肉鍵が黒星卿の淫靡な鍵穴を突いて、固く閉じた扉をこじ開けようとする。

 マルパンのおなかから飛び出た古びた蓄音機のレコードに奇跡的に針が乗った。金メッキのスピーカーからドビュッシーの『月の光』が流れ始めた。

 そんなクラシックに荒い息づかいが混じり、獣のようによだれを垂らしながら黒星卿の喉元に噛みついたまま、ニンゲンは股の間が熱くこみ上げた。いきり立った大蛇がぬるぬると黒星卿の色白の太ももを這って藪の中の巣穴に忍び寄る。


「私卿を穢すつもりか。この鬼畜め」


 屈辱感を噛みしめるように黒星卿は言った。噛みちぎられていない残った左手でチェーンに繋がれた指輪をお守りのように握りしめる。

 ニンゲンの大蛇はひくひくとうねる巣穴の入り口から薄い蜘蛛の巣を突き破った。奥深くまで侵入する。中は締め上げるように狭くなり、さらに大蛇の頭は大きくなった。海綿体はジュワッと血液で満たされ、熱膨張して黒星卿のねっとりとした底なし沼を満たしていった。

 黒星卿は宇宙を掻き毟るように抵抗する。近くにあったツクモノオロチのレースカーテンのような脱皮した抜け殻を握りしめて、自らの唇を噛む。ニンゲンの蛇頭が何度も何度も何度も、黒星卿の巣穴の奥に潜む卵に牙を剥いた。


 ニンゲンは未だかつてないほどの興奮をおぼえると、腹の底からマグマが突き上げるような感触があることだけは確かだった。

 何かが迫ってくるような。

 はたまたこちらから迎えに行くような。

 宇宙と脳味噌の境界がなくなるような全能感と快楽。

 しかし、ニンゲンはここで不思議な感覚にとらわれた。

 まるでウロボロスの輪のように。

 こちらが食べているのか、はたまたこちらが食べられているのか、ニンゲンはわからなかったのだ。

 このままではこの穴の中の魔物に、自らの存在がまるごと飲み込まれていくのではないのかという恐怖があった。

 とそこで周囲に飛散した草那藝之大刀の破片をニンゲンは見やる。

 その中には自分の醜悪な姿が映っていた。

 その奥には無数の星たちが瞬いており、真っ二つに割れた青い惑星の姿もあった。


 こちらが星をのぞくとき、星もまたこちらをのぞいているのだ。


 するとどこからか赤い木の実が漂ってくる。

 それはリンゴだった。

 リンゴはニンゲンの頭に当たった。

 瞬間、目が醒めたようにニンゲンは急に恥ずかしくなった。

 そして果てる寸前で腰の動きが止まると、ニンゲンは己の意識を取り戻した。ニンゲン性を捨てた人間は黒星卿の喉元から口を離してから自身の左腕をむ。血を流しながら痛みによって野生の本能を押さえ込んだ。

 それから何度も自分に呼びかける。


 戻ってこい、オレ!

 戻ってこい。戻ってこい。戻ってこい!


 キミは誰だ? 

 アナタは誰だ? 

 オマエは誰だ?

 オレは誰だ? 

 オレは。オレは。オレは。



「オレは……ニャンレオだ」



 暗い場所から帰ってきたニャンレオは血を垂らしながらなんとか自我を保つ。

 そして改めて自身を見つめて驚愕した。

 あろうことか憎き黒星卿とまぐわっていたのだ。


「オレはなにを……」

「本能と理性との葛藤か。なんと哀れな種族よ」


 黒星卿は言葉とは裏腹に微塵も同情することなく言った。


「家畜の分際で星と真にまぐわろうなどと百億年早いわ」


 そしてダークエッグがビキビキとひび割れる。

 それは黒星卿のものだった。


「恥を知れ」


 黒星卿がそう言い放った瞬間、ダークエッグが我慢できないようにハッチアウトして黒星卿の股の間の巣穴から一本のたくましい黒刀が生えた。黒鬼丸くろおにまるである。凹から鋼鉄の処女アイアンメイデンのように黒刀が飛び出す。黒刀はニャンレオの局部の尿道からまっすぐ突き刺さり、そのまま尾てい骨にかけて貫通した。


「アッガ――!」


 血液が集中していたぶん出血は多量であり、ニャンレオは悶え苦しんだ。

 先ほどとは真逆の仕置きを受けたが、ある種本当の意味で繋がれたのかもしれない。

 それは鎖であり、恐怖であり、教育であり、血であり、引力であるのだろう。

 今度はニャンレオが刺される番だった。


 黒星卿は正常位の体勢からうねり、ニャンレオの肩口にするりと足を入れて蹴り飛ばし、離れた。黒星卿の股間から生えた黒鬼丸も引っ付いてくる。それとは逆にニャンレオの腸、陰嚢、精巣、尿道、陰茎の先から黒鬼丸の細長い刀身がズズゥーッと引き抜かれた。その黒い刀身には血液と混じって白濁液がべったりと付着していた。

 貫通する瞬間に射精したのか、はたまた精管が切断された瞬間に漏れ出たのか、あるいはまったくのセイムか。しかし精液となって完成しているということは精子は精巣上体を通過し精嚢や前立腺から分泌液を受け取っているはずなので、おそらくは尿道の途中で旅立ったのだろう。

 いずれにせよ白濁液の残滓ざんしが血と混じりあい、紅白のマーブル模様のおめでたい球体が無重力空間を漂っていた。

 何億という精子を内包した即席の遺伝子の星が暗い闇の宇宙を行く当てもないように寄る辺なく彷徨う。挙げ句の果てに絶対零度からプラス三度の宇宙空間で瞬間冷凍されることになった。

 去勢されて突き飛ばされたニャンレオは息もできないほどにパニックに陥った。

 当然だ。

 自分が今どこにいるのか、どういう存在になり果てたのか、どこに向かうべきなのかわからなくなったのだ。

 そして何よりも恥ずかしい。


 こんなオレをどうか見ないで欲しい。

 ニャンレオは激しい自意識の目醒めから近くにあったシュノキゲンの139ページを開いて、陰部を覆い隠した。


「貴様のようなおぞましい存在を宇宙に放つわけにはいかん」


 ニャンレオはさしもの黒星卿をもってそう言わしめたのだった。

 すると黒星卿は自身の股の内から血に濡れた黒刀をズボッと引き出した。黒刀の切っ先をニャンレオに向けてから足袋の甲で柄を蹴って発射した。

 一直線に突き進む黒鬼丸はシュノキゲンを貫いた。ピン留めするように再びニャンレオの股間に突き刺さった。


「――ッ!」


 そのあまりの激痛にニャンレオは白目を剥いて意識を失った。


「はあ……はあ……」


 黒星卿は左手で首を押さえるがあふれ出る星血が止まらない。

 ニャンレオに噛みちぎられた右腕からの出血もひどかった。

 古今東西百戦錬磨ここんとうざいひゃくせんれんま古強者ふるつわものである黒星卿も、ついに敗北を知るときが来たのだ。


「ブブッ、ブブブブブ」


 するとそんな状況にかかわらず、なぜだか黒星卿は笑いがこみ上げて止まらなかった。



「これで……やっと、星になれる」



 黒星卿はチェーンの通された指輪を見つめたのち、チェーンを外した。解き放たれた指輪は回転しながら無重力的に浮かぶ。その指輪を黒星卿は左手の薬指にスッとはめた。

 そんな黒星卿の重力にツクモノオロチの頭蓋骨は引き寄せられる。黒星卿の血が付着すると光を放ってステージⅠのヴェノコに戻った。学生帽を被るヴェノコをあやすように胸に抱きかかえ、黒星卿はそのまま息絶えた。


 その次の瞬間、黒星卿の胸にぽっかりと空いた黒穴から重力崩壊が始まった。黒穴はみるみるうちに広がって、やがて黒星卿の全身を包み込んだ。

 地獄のような重力が発生する。

 周囲の一次元から三次元までのあらゆるものが掛け値なしに質量も関係なく、吸い込まれていく。夜夜叉をはじめ、笹、マルパン、古びた蓄音機、血と汗と涙、真っ二つに割れた新・太陽系惑星の水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、黒太陽、イヴ星――そして天の川銀河ミルキーウェイの千億という星までもが巨大な渦星となって、闇の穴に落ちていった。

 すべてが等しく落ちていった。

 初恋のように落ちないものなどいなかった。

 宇宙に恋をしない星などいなかった。




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 星の数ほどの星に混じって、ニャンレオも例外ではなく落ちていく。

 落ちるところまで落ちていく。

 その際にとあるひとつの奇跡が起こっていた。

 この茫漠ぼうばくたる宇宙の片隅で。

 水素原子にさえも滅多に出会わない環境下で。

 イヴ星とニャンレオという名の遺伝子の塵が出会っていた。

 文字どおり宇宙から見ればその二つは大差なく塵だった。

 ニャンレオの腰のシュノキゲンがパラパラとめくれて、その中にしおりされていた白い短冊はゆらゆらと揺れながら本のページを離れる。

 それから白い短冊は無脊椎動物のように青い宇宙を泳いでいった。

 それに続くようにニャンレオの肉体はイヴ星の母なる大地に沈み込んで抱擁される。

 子宮に還るように抱かれゆくのだった。

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