第8星 地球帰還

☆1

 落ちていくアースにしがみつくニャンレオ。

 ドッシャーン。ジャラリンキン。

 そこは時計の海だった。


 目覚まし時計。掛け時計。置き時計。腕時計。パタパタ時計。砂時計。懐中時計。鳩時計。日時計。光時計。天文時計。


 大小さまざま色とりどりの時計たち。

 この世にあるすべての時計をかき集めたような時計川とけいがわである。

 こんなにも時計があるにもかかわらず今が何時なのかもわからぬままに、アースは時の濁流に押し流されていた。


 アースは鳩時計に掴まると定刻になったのか扉から鳩が飛び出して鼻を打つ。

 今度は大きな目覚まし時計に掴まるが、ジリリリ! と目覚ましが鳴り響き、頭が割れそうになる。さらに驚くべきことに、その目覚まし時計は徐々に分解されていくと最終的には各部品に分かれて溺れるアースは小さな歯車とゼンマイを頬張ってしまった。


 金気臭い味だ。


 ペッとアースが吐き出すと、またあるところでは川の時流によってバラバラのパーツから奇跡的に懐中時計が組み上がっている。

 それは時を忘れてずっと見ていられるような光景だった。

 分解と再構築を延々繰り返している。


 アースがそう思った矢先、川の流れが急になり川幅がじわじわと広くなると、やがて大海に出た。

 東西南北、朝昼夕晩ぐちゃぐちゃの空が広がっている。

 すると海面から黄金の大きな背ビレがのぞくと、ずんずんずんとこちらに近付いて来るのを見えた。アースはクロールで必死に逃げようとするが、あっけなく追いつかれてしまった。


 ザッバーン!


 黄金の時喰い鮫タイム・イズ・マネーシャークが浮上する。

 その目の醒めるようなサメは時計をはめ込んだような瞳をしていた。大口を開けて襲いかかると金ピカの歯がのぞく。


 咄嗟にアースはニャンレオをき抱くと、黄金のサメになすすべなくアースは丸呑みにされて口腔内で無数の時計ともみくちゃにされた。


「僕はこんなところで終わるわけにはいかないんだ!」


 アースは叫んだ。

 そして近場にあったトンガッた時計の針を拾い、マネーシャークののどちんこに思いっきり突き刺した――その次の瞬間、サメは砂金の汗を掻きながら天に向かってオエーッとアースたちを吐き出した。


「うわああああああああああああああ!」


 アースは叫びながらマネーシャークの背に落下すると手に持っていた時計の針を今度は黄金の背ビレに貫通させる。当然マネーシャークはパニックに陥り、アースを振り落とすように時計の深海に潜っていく。

 アースは呼吸を止めて背ビレにしがみつく。


 息は持つだろうか。

 あっそうだ。

 ニュークヘルメットを作ればいいじゃないか。


 アースは自身とニャンレオにフルフェイスを展開してから、暗い海中でやっとこさ目を凝らすと、なにやらまばゆい明かりが見えてくる。

 そこには黄金と紅のコントラストの美しい竜宮城がそびえていた。

 そのままアースとニャンレオを乗せた黄金のサメは正面門へと突っ込んでいく。

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