第42話 謝罪とお知らせと胸騒ぎの放課後

「プランA! 拾った財布をガメるような奴は花ちゃんの彼氏に相応しくない大作戦!」

「「わ~!」」


 巨大な拳を巨大な胸の間でグッと握りリンダが声を潜める。


 左右では美兎と小南がパチパチと控え目な拍手している。


 時刻は放課後、翌日の事である。


 場所は直樹の帰り道の途中にある閑静な住宅街だ。


 ちなみに姫麗はギャル軍団の仲間に協力を仰いでカラオケに連れて行っている。


 最初は彼氏と遊びたいと渋っていたが、最近付き合い悪すぎじゃん! たまにはうちらとも遊んでよ! とゴネたら上手くいったそうだ。


「道の真ん中にオレの財布を置いておく。中身はへそくりの三万! こいつを盗んだらアウトだ!」

「三万円!? 大金だよ!?」

「そんなに入ってたら絶対盗られちゃうじゃない!」

「そしたら証拠動画撮ってからボコって取り返すだけだ。オレ達はスッキリ、花ちゃんは幻滅してチンポ野郎と破局。ハッピーエンドって寸法よ!」

「なるほど!」

「流石リンダ! やるじゃない!」

「そうだろうそうだろう! おバカキャラの汚名挽回だ!」


 三人でトーテムポールみたいに並んで通りの角から向こう側を覗く。


 直樹はどことなく寂しそうな顔でとぼとぼ歩いている。


「来たな! 財布をセット! 隠れるぞ!」

「え?」

「隠れるってどこによ!?」

「……やっべ。考えてなかったわ」

「リンちゃん!?」

「バカバカバカ!? このままじゃバレバレじゃない!?」

「こうなったら適当な家の敷地に隠れちまえ!」

「えぇ!?」

「そんなの不法侵入よ! いけない事だわ!」

「緊急事態だ! しょうがねぇだろ!」


 リンダが近くの家の塀の裏に身を潜める。


「り、リンちゃん待ってぇ~!」

「置いてかないでよ!?」


 どたどたと美兎が追いかけ、半泣きの小南が後に続く。


「……友達とカラオケって本当か? 俺と一緒に居たくないだけだったりして……。いや、姫麗はそんな奴じゃないだろ。最近ずっと俺とつるんでばっかだったし、いい加減友達と遊びたくなってもおかしくない頃合いだ……。けど、不安だ……。いや、別に俺達は付き合ってるわけじゃないし、あいつが誰と遊ぼうが自由なんだけど……。ちくしょう! 一人になったら姫麗の事ばっかり考えちまう。こんなの完全に好きじゃねぇかよ……」


 直樹は一人でブツブツ言いながら頭を抱えたりげっそりしたりしている。


 正直キモイ。


 あんな奴のどこがいいのか謎だ。


 リンダ的にも全く好みじゃない。


 そもそもリンダは男なんかこれっぽちも興味ないのだが。


「来たぞ来たぞ……さぁ、財布を拾え!」

「ん? なんだ?」


 直樹が足元の財布を拾い上げる。


「うぉ!? 三万も入ってるぞ!」


 中身を確認すると、直樹はキョロキョロと辺りを見回した。


「あの野郎、目撃者がいないか気にしてやがる」

「落とし主を探してるだけかも……」

「いいえ! あの顔は泥棒の顏よ! あたしには分かるんだから!」


 周囲確認が終わると直樹はがさごそと財布を物色し始めた。


「……なるほどな。金だけ抜いて財布はポイか」

「これはちょっと擁護できないかな……」

「人の財布勝手に見た時点でギルティよ!」


「ん? これは……」


 直樹は呟くと、おもむろにどこかに電話した。


「あの野郎どういうつもりだ?」

「さぁ……」

「泥棒の考える事なんか分かりたくもないわ!」


 程なくして直樹は電話を終えると、ホッとした顔で財布をポケットに忍ばせた。


「おし、有罪!」

「リンちゃん待って! もしかしたらこの後交番に届けるのかもしれないよ?」

「一理あるわね……」

「チッ。一応後をつけてみるか」


 歩き出す直樹を尾行しようとした矢先。


 リンダの携帯が鳴った。


「どわぁ!?」

「リンちゃん!?」

「びっくりしたぁ!?」


 三人でお互いの口を塞ぎ合い、慌ててリンダが電話に出る。


「もしもし? こんな時に誰だよ!」

『あ~しだけど……。取り込み中?』

「花ちゃん!?」


 困惑する声は姫麗のものだ。


 カラオケルームの外からかけているのだろう。


 背後からは薄っすらと友達の盛り上がる声が聞こえている。


「なんで姫麗が掛けてくるのよ!」

「私に聞かれてもわかんないよっ!」


「べ、別に忙しくねぇけど!? どどど、どうかしたのか!?」


 めちゃくちゃに慌てまくってリンダが答える。


『どうかしたのはリンダの方っしょ。財布落としてない?』


 リンダの心臓がバクンと跳ねた。


「な、なんで知ってんだよ!?」

『よかったぁ~!』


 急に姫麗の声がウキウキになる。


『アッシーがさ、電話くれたんだ! 道端で財布拾ったって! 中見たらみんなで撮ったプリ貼ってあるから、あ~しの友達のじゃないかって! カラオケ屋のカード見たらリンダの名前書いてあるからそれでわかったってわ~け! 財布は明日アッシーから預かっとくから、感謝しなよ!』

「ぁ……ぅん。ソウダネ」


 予想外の事態になり、リンダはがっくりと肩を落とす。


『なに? 財布見つかったのに元気ないじゃん。どうかした?』

「ううん。なんでもない。ヤッター、チョウウレシー」


 出てくる言葉は棒読みだ。


『そうは思えないけど……。てかリンダ暇? 今みんなでカラオケ来てるんだけど来ない? 久々に一緒に遊ぼうよ』

「あ~……。誘いは嬉しいんだけど、今日はちょっと用事があってぇ……」

『用事? リンダ帰宅部でバイトも塾もないじゃん』

「そ、そうなんだけどさぁ~……」


 リンダは必死になって視線で二人に助けを求める。


「わ、わたし達と遊んでるって事にしよっ」

「み、美兎達と遊んでんだよ! 小南も一緒!」

『マジィ? なら三人で来ればいいじゃん! 席まだ空いてるからさ! てか超会いたいし! 最近遊べなくてマジごめんね!』


「はぅっ!」

「ぁぅっ!」

「ひぃっ!」


 姫麗に嘘をついた罪悪感で三人は胸を押さえた。


 ごめん花ちゃん!


 これも全部お前の為なんだ!


「そうしたいのは山々なんだけど、今電車で隣町に向かってる所なんだわ! 美兎がどうしても挑戦したい食べ放題メニューがあるんだって!」

「――ッ! リンちゃんムガッ!?」


 ギョッとした美兎がブンブンと顎肉を振るわせて叫ぶ。


 美兎の口をリンダは無理やり手で塞いだ。


「すまん美兎! 許せ!」

「むうううううう!」


 涙目で怒りながら美兎はリンダの掌をむぐむぐ頬張る。


『……そっかぁ。今電車の中かぁ。それじゃあ電話切らなきゃだよね』

「そ、そうなんだよ! わりぃな花ちゃん! そういうわけだからまた今度!」

「うん。今度ねー……」


 通話が切れると、リンダはホッと胸を撫でおろした。


「あぶねぇ~! 危うくバレるとこだったぜ!」

「酷いよリンちゃん! わたしのせいにして!」

「すまん美兎! 他に言い訳思いつかなかった! 今度バーキン奢るから許してくれ!」

「……大きい奴頼んでもいい?」

「当たり前だろ! 一番デカいの頼め!」

「……ホットパイは?」

「全部セットだ!」

「じゃあ許す♪」

「よかったぁあああ! 仲直りしたんならハグしなさいよ!」


 半泣きの小南に促され、三人で熱いハグを交わした。


「……君達、人ん家の庭先でなにしとるんだ?」


 家主のおじさんに怪しまれ、三人は慌てて逃げ出した。


「「「ごめんなさ~いいい」」」



 †



「……嘘つき。電車の音なんかしてないじゃん」





 ――――――謝罪とお知らせ―――――


 まずはごめんなさい。


 打ち切りのお知らせじゃありません。


 別に謝る事でもないんだけど、ちょっと間開いちゃったから申し訳ないなって。


 毎日更新したい気持ちはあるんだけど、お家帰ってきたら疲れちゃって全然動けなくってェ……。


 毎回エタってるのも知ってるし今回は頑張りたいなーって気持ちはあるんだけど、微妙な話だったら更新しないで書き直したいし、みたいな感じでそろそろ毎日更新は難しいかも。


 お休みの日に頑張って沢山書くから応援してて。


 てか最近暑すぎない?


 あ~しの部屋クーラーないから超暑いんだけど。


 でもリビングで書いてたらお兄ちゃんと弟に見られて恥ずかしいじゃん?


 一応家ではイケてるギャルで通してるわけだし。


 みたいな感じ。


 


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