第25話 浮気女怒りの自慰
「なんなのよあれは!?」
帰宅後、千春は自室のベッドでブチ切れながらオナり散らかしていた。
直樹とビッチに仕返しする為隆を利用している千春だが、その度にエッチをしなければいけない。
だが、知っての通り隆の隆はお粗末さんで前戯もしないし行為も雑だった。
自分本位のオナニーみたいなセックスである。
直樹の愛情たっぷり丁寧セックスが当たり前だと思っていた千春は身も心も満たされず、完全に欲求不満に陥っていた。
そこに今日のアレである。
優しすぎるが故にメンタルがお豆腐な直樹である。
隆を呼び出しイチャイチャしている所を見せつければ簡単に精神崩壊に追い込めると思っていた。可哀想だとは思うが、やられたらやり返さなければやられてしまう。
未来の危険を排除する為にも危ない芽はとっとと摘んでおくに限る。
三年ちょっとも付き合った相手だから、直樹もあれが千春流の宣戦布告だと分かったはずだ。
そっちがその気ならこっちも容赦しないぞと、そういうメッセージを込めた見せつけだったのである。
案の定直樹は折れてビッチとの仲も疎遠になった。
めでたしめでたし。
ついでに隆との関係を公にして高学歴のイケメン金持ち大学生と付き合ってるイケてるあたしを演出しようと思っていた矢先だ。
お節介なチクリ屋共から直樹が超絶イケメンになってビッチと乳繰り合っているという情報が入った。
例によってガバマンファッキンクソビッチの差し金だろう。
前回と違って今の千春は隆の存在をオープンにしている。
ここは慌てず騒がず無視するのが得策なのは分かっていた。
……だが出来なかった。
だってあの優しくて楽しくてエッチが丁寧な事だけが取り柄のもっさりクソオタ野郎がイケメンになるなんて信じられない。それも、クラス中の女子達が大騒ぎする程の変貌だ。
三年ちょっと付き合った間柄でもある。
そんなの超気になるし、直樹が性懲りもなくビッチと乳繰り合ってると聞かされたら弁当をひっくり返すくらい腹が立っていてもたってもいられなかった。
あんた、あたしが怒ったらどれだけ陰湿か知ってる癖にまだ懲りない訳!?
呆れるような気持ちで「……ちょっとお花を摘みに」みたいな顔をして食堂に向かった。
何食わぬ顔で慌てず騒がず落ち着いて徒歩で。
そのつもりだったのに気づいたら猛ダッシュしていた。
そんな事したら周りに未練たらたらだと思われてしまう。
でも走ってしまった。
そして見た。
「……嘘でしょ!?」
我が目を疑った。
両目をほじくり出して洗浄液に三日ほど漬けたい気分だ。
付き合っている頃は人間的にかっこいいと思った事なら何度もあった。
でも、見た目がかっこいいと思った事は一度もない。
マジで一度も。
だって実際冴えない見た目をしているし。
髪の毛は千円カットな上に千春がいい加減に切りなさいよ! とキレるまで切りに行かない。眉毛だって整えた事なんか一度もない。
服のセンスも最悪で中学生かよ! みたいなコーディネートだ。たまに服を買ってもユニクロのオタク臭いコラボTばかりである。
はっきり言って私服で一緒に歩くのが恥ずかしかった。
何度文句を言っても聞きやしない。
「別にいいだろ? 俺にはこんなに可愛い彼女がいるんだ。モテる必要なんかないし、モテたいとも思わないね」
……まぁ、そういう台詞は嫌ではなかったけれど。
だとしても、一緒に並ぶこちらの気持ちにもなって欲しい!
女子の間では彼氏の見た目は大事な評価基準なのだ。
いくら千春が頑張ってイイ女を演じても彼氏がこれでは評価半減である。
そんな筋金入りのダサ男が別人みたいなイケメンに変わっていた。
というか、別人だろ!? と思った。
思いたかった。
三年ちょっと付き合った千春だから、あれが直樹である事は否応なく分かってしまうのだが。
頭の下半分を大胆に刈り上げ、上半分を長めに残したふんわりウルフカットである。
かなりのお洒落上級者ヘアである。
あんな髪型直樹には絶対に似合わない。
……そのはずなのに。
実際はビックリするくらい似合っていた。
まるで大人気のKPOPアイドルである。
ぬぼ~っとした表情も悪だくみを働かせる狼みたいにニヒルな感じで、女を殴ってそうな雰囲気がメッチャツボだった。
あれこそ女の憧れ、千春の理想とする彼氏像だった。
マジで超カッコよくてお腹がキュンキュンしてしまった。
それがまた許せない。
なんで今更そんな変身しちゃうの!?
ズルいズルい許せない!
なにより許せないのはそれをやったのがビッチだという事だ。
もっさりした直樹は嫌いだけど、他人の手で変えられるのはもっと嫌だ。
他人の手でイケメンになるくらいなら一生もっさりしてて欲しい。
勝手に人の部屋に押し入って模様替えされたみたいな不快さがあった。
ムカつく。
まーじーでムカつく。
なのにお腹はウズウズして、この通りブチ切れながらオナり散らかしているというわけだった。
あぁ、一度でいい。
あっちの直樹に抱かれたい。
いや、一度じゃなくて何度でも。
エッチに関してはやっぱり直樹が最高だった。
いやいや、今の直樹ならきっともっと凄いだろう。
直樹のエッチは優しくて丁寧だが、それだけでは刺激に欠ける。
時には乱暴にされたり身勝手に振り回されたいのが乙女心というものなのだ。
勿論隆みたいな身勝手なだけのオナニーセックスは論外だが。
今の直樹に髪の毛を掴まれて、「このクソビッチが」と蔑みの目で見られながら後ろから突かれたらどれ程気持ち良いだろう。
直樹は最後まで気づいてくれなかったが、実はちょっとMっ気のある千春なのだった。
やんわりとシグナルを出した事はある。
でも直樹は全然気づいてくれない。
乱暴にしてなんて恥ずかしくて言えないから、ムラムラしてこっちが肉食系になってしまった。
まぁ、上に跨ってガンガン腰を振り、必死に射精を堪えている直樹を眺めるのもそれはそれで良かったが。
「うぅ……全然満足できない。こうなったら、エッチ用の恋人作っちゃおうかしら……」
女の性欲は男とは違う。
発射という区切りがないから、精神的なモノが満たされないと満足できないのだ。
いくら指で自分の器を掻き回しても無機質な快感があるだけ。
なまじ直樹の愛情たっぷりセックスを知っている千春だから余計に切なくなるだけなのだった。
「……ぉ、おほ、おほぅ……。とにかく、なんとかしないと。このまま二人を好き勝手させておいたら良い事なんか一つもないもん」
千春のデマから始まった一大スキャンダルは、直樹がビッチとくっついた事で千春VSヤリチンビッチカップルの恋愛バトルの様相を呈していた。
周囲は常に三人の動向に注意して、どっちがよりイケているかを好き勝手に比べている。そしてその評価はそれぞれのスクールカーストと直結するのだ。
……そうなる事は分かっていたのだが。
なってしまった以上、勝たなければいけない。
さもなくば、千春は再び惨めな負け犬に逆戻りだ。
「……それだけは……絶対に嫌!」
だってもう、千春の事を守ってくれるお人好しの騎士君はいないのだから。
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